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フルマラソンに挑戦する市民ランナーのためのトレーニングガイドライン

現在、フルマラソンに初挑戦する市民ランナーのためのトレーニング(練習)プログラムを有料提供中(下記参照)ですが、この冬にフルマラソンに初挑戦する多くの市民ランナーのトレーニング(練習)のヒントになればと考え、本トレーニングプログラムの概要と本トレーニングプログラムに基づくトレーニングガイドラインを以下にご紹介致します。

●トレーニング期間(準備期間)に関して

フルマラソンに挑戦する上でどの程度のトレーニング期間(準備期間)が必要であるか?ということに関しては、個々の身体的特性や体力レベル等によって異なるといえますの一概にはいえませんが、トレーニング刺激に対する身体の適応を踏まえて考えると体力レベルが良好でトレーニングに費やす時間がある程度確保出来る場合でもレース前の調整を含め約3ヶ月(12週間)の期間が必要であると考えます。

但し、トレーニング期間が短くなることでトレーニング刺激が過剰となり怪我やオーハートーニグのリスクが増える可能性も否めず、経験則を踏まえていえば最低でも4ヶ月(16週間)のトレーニング期間(準備期間)を設けることをお勧めしています。

以上を踏まえ本トレーニングプログラムは特に初心者ランナーを対象に余裕のある準備期間を想定した6ヶ月(24週間)のトレーニングプログラムになっています。

●本トレーニングプログラムの概要

本トレーニングプログラムはFosterが開発・提案しているトレーニング管理手法を用いてトレーニング(練習)内容を設定・管理していますが、Fosterは単調なトレーニング(例:毎日同じようなペースで同じ距離または同じ運動時間のランニング)を続けるとオーバートレーニング(症候群)を引き起こす可能性があることを示唆しトレーニング時間とトレーニング強度を乗じた指標を「トレーニング負荷」として捉え、そのトレーニング負荷の「単調さ」を評価するために平均値を標準偏差で除した値である「Monotony(単調性)」という指標を用いて生体負担度をモニタリングする手法を開発・提案しています。

市民ランナーの多くは、仕事の合間や家事の合間といった限られた僅かな時間を活用して練習していると考えられ、自ずと「毎日同じようなペースで同じ距離または同じ運動時間のランニング」という単調なトレーニング(練習)をしてしまう可能性が高く、トレーニング効果(練習効果)が上がらないばかりかオーバートレーニング(症候群)を引き起こす可能性が高いと考えられることから、本トレーニングプログラムは上述したFosterが開発・提案しているトレーニング管理手法に基づきトレーニング(練習)内容を設定しているのです。

Fosterが開発・提案しているトレーニング管理手法に関しては以下の記事も参照下さい。

また、本トレーニングプログラムは漸進性過負荷の原則に基づき3週間かけてトレーニング負荷(トレーニング時間 x トレーニング強度)を増やし、その後に1週間のダウンウィークを設ける、すなわち、4週目はトレーニング時間(トレーニング量)とトレーニング強度を減らしトレーニング負荷を減らすように計画していますが、それは、Tabataらの報告(1989)によって高強度のトレーニング刺激に対するコルチゾル(ストレスホルモン)の血中濃度(血清濃度)は4週間でピークを示すことが明らかにされていることを踏まえ、血清コルチゾル濃度がピークに至る前に(すなわち3週間で)トレーニング時間(トレーニング量)とトレーニング強度を落とすことで過剰なストレスを避けオーバートレーニング(症候群)を予防することが出来る考えられるからです。

更に、ランニングは接地衝撃によって身体に大きな負担がかかる運動であり、ただ闇雲にトレーニング時間(トレーニング量)を増やすと怪我(ランニング障害)やオーバートレーニング(症候群)のリスクが大きくなると考えられることから、トレーニング時間(トレーニング量)は一気に増やすのではなく徐々に増やすように配慮しています。

トレーニング時間(トレーニング量)の増やし方に関しては以下の記事も参照下さい。

更に、本トレーニングプログラムでは多くの市民ランナーのライフスタイルを想定し基本的に平日は比較的短時間のトレーニング(練習)、土日に比較的長時間のトレーニング(練習)を行うように計画しています。

(本トレーニングプログラムでは4週間毎のトレーニング時間とトレーニング負荷ならびに生体負担度をイメージ出来るようグラフで示しています。)

以上を踏まえ、以下に本トレーニングプログラムの概要を示します。

●24-21週間前(1-4週目)のトレーニングのポイント
✅身体を動かすことに慣れる。
✅ランニングがきつくなったらウォーキングでもOK!

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【24週間前(Week1)】
・1週間の総ランニング時間:210分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-45分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース(楽なペースより少し速く)

【23週間前(Week2)】
・1週間の総ランニング時間:255分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-60分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

【22週間前(Week3)】
・1週間の総ランニング時間:285分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-60分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

【21週間前(Week4)】
・1週間の総ランニング時間:210分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-45分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

●20-17週間前(5-8週目)のトレーニングのポイント
✅ランニング動作に慣れる。
✅少しずつ長い時間ランニングが出来るようにする。

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【20週間前(Week5)】
・1週間の総ランニング時間:280分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-60分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

【19週間前(Week6)】
・1週間の総ランニング時間:330分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-70分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

【18週間前(Week7)】
・1週間の総ランニング時間:350分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-70分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

【17週間前(Week8)】
・1週間の総ランニング時間:280分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-60分
・ランニング強度:楽なペース-普通のペース

●16-13週間前(9-12週目)のトレーニングのポイント
✅ランニング時間を延ばす。
✅少しずつ速いペースで走れるようにする。

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【16週間前(Week9)】
・1週間の総ランニング時間:300分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-60分
・ランニング強度:楽なペース-ややきついペース

【15週間前(Week10)】
・1週間の総ランニング時間:350分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-80分
・ランニング強度:楽なペース-ややきついペース

【14週間前(Week11)】
・1週間の総ランニング時間:380分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-90分
・ランニング強度:楽なペース-ややきついペース

【13週間前(Week12)】
・1週間の総ランニング時間:300分
・1日(1回)あたりのランニング時間:40分-70分
・ランニング強度:楽なペース-ややきついペース

●12-9週間前(13-16週目)のトレーニングのポイント
✅ある程度速いペースで走れるようにする。
✅更にランニング時間を延ばす。

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【12週間前(Week13)】
・1週間の総ランニング時間:340分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-90分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【11週間前(Week14)】
・1週間の総ランニング時間:360分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-90分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【10週間前(Week15)】
・1週間の総ランニング時間:400分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-120分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【9週間前(Week16)】
・1週間の総ランニング時間:340分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-90分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

●8-5週間前(17-20週目)のトレーニングのポイント
✅レースペースで走る。
✅回復・休養を重視し休むべき時はしっかり休む。

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【8週間前(Week17)】
・1週間の総ランニング時間:405分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-120分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【7週間前(Week18)】
・1週間の総ランニング時間:420分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-120分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【6週間前(Week19)】
・1週間の総ランニング時間:505分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-150分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【5週間前(Week20)】
・1週間の総ランニング時間:390分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-90分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

●4週間前(21週目)からのトレーニングのポイント
✅レースペースで走る。
✅疲労回復に努める。

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【4週間前(Week21)】
・1週間の総ランニング時間:495分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-150分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【3週間前(Week22)】
・1週間の総ランニング時間:510分
・1日(1回)あたりのランニング時間:45分-150分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【2週間前(Week23)】
・1週間の総ランニング時間:315分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-60分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

【1週間前(Week24)】
・1週間の総ランニング時間:150分
・1日(1回)あたりのランニング時間:30分-45分
・ランニング強度:楽なペース-きついペース

●ウエイトトレーニングの重要性

ちなみに、本トレーニングプログラムではウエイトトレーニング(筋力トレーニング)に関する内容は含まれていませんが、多くの市民ランナーがフルマラソンに挑戦する上ではウエイトトレーニングによる筋力強化を重視すべきであると考えています。少なくともサブスリーまではウエイトトレーニングを優先させるべきであると考えます。

なぜなら、最大酸素摂取量を用いてフルマラソンの推定タイムを算出するFosterとDanielsの推定式【フルマラソンのタイム(分)=387.3-3.45×最大酸素摂取量(ml/kg/min)】を用いて、厚労省によって発表されている「運動所要量・運動指針の策定検討会による健康づくりのための運動基準2006」において、健康維持増進に必要とすべき持久力の目安として示されている「健康づくりのための最大酸素摂取量の基準値(ml/kg/min)」を基にフルマラソンのタイムを推定すると・・・

20代男性:約4時間9分
20代女性:約4時間33分
30代男性:約4時間16分
30代女性:約4時間36分
40代男性:約4時間19分
40代女性:約4時間40分
50代男性:4時間30分
50代女性:約4時間47分
60代男性:約4時間33分
60代女性:約4時間50分

ということになり、60代でも約4時間30分から5時間程度のタイムでフルマラソンを完走できるということになり、多くの市民ランナーにとってフルマラソンを完走するためには極めて高い持久力が必要であるという訳ではなく、フルマラソンを完走する上での制限になっているのはフルマラソンレース後半に経験する足が痛い、膝が痛い、腰が痛い、脚が動かない、といった筋力不足に伴う要因であるといえるからです。

フルマラソンに挑戦する上でウエイトトレーニングを重視すべき理由に関しては以下の記事も参照下さい。

尚、フルマラソン挑戦に向けてウエイトトレーニングに取り組む上では個々の身体特性の差異やウエイトトレーニングテクニック習得の観点から専門家(ウエイトトレーニング指導者)の指導を受けることをお勧めし、必要に応じて専門家のご紹介をしていますが、時間的都合や金銭的都合、地理的都合によって専門家の指導が受けられないのであるならば、少なくとも中殿筋の筋力強化は不可欠とし公共トレーニング施設等で「ヒップアブダクション」というマシーン(下記参照)を使って中殿筋の筋力強化を図ることをお勧めしています。

なぜなら、ランニング動作における「コンタクト相」つまり片脚で体重を支える局面で支持脚の中殿筋(のみならず股関節外転筋群)は、骨盤を安定させ体幹部を垂直に保つために働いているのですが、股関節外転筋群の筋力が不十分であると、支持脚の反対側の骨盤(殿部)が下方に落ち込む状態が生じ体幹部を垂直に保つことが出来なくなり不適切なランニングフォーム(ランニング動作)となり、無駄なエネルギーを消費しフルマラソンレース後半に影響を及ぼす可能性があると共に、接地(動作)の乱れから膝や足(足首)等へ過剰な接地衝撃ストレスが加わり膝や足首の痛みを引き起こす可能性があることから中殿筋の筋力強化が不可欠であるといえるからです。

中殿筋の筋力とランニングフォームに関しては以下の記事も参照下さい。

●まとめとして(トレーニングガイドライン)

✅トレーニング内容(練習内容)が単調にならないようにし、なるべく毎回トレーニング時間(走時間)とトレーニング強度(走ペース)を変えるように工夫する。

✅ライフスタイル等によって毎回のトレーニング時間(走時間)が一定になってしまう場合(例えば、毎日60分しかトレーニング時間が確保出来ない場合)は、少なくともトレーニング強度(走ペース)を毎回変えるようにしトレーニング内容(練習内容)が単調にならないようにする。

✅漸進性過負荷の原則に基づきトレーニング効果に合わせて(体力向上に合わせて)トレーニング時間(トレーニング量)を増やし、トレーニング強度(走ペース)を高めていくことが重要となるが、トレーニング時間(トレーニング量)は闇雲に増やすのではなく「ダニエルズ理論」や「10%ルール」を参考に徐々に増やすことが望ましい。

✅過剰なストレス(生体負担)に伴うオーバートレーニング(症候群)を予防するために、トレーニング刺激に対するストレス反応に基づき3週間毎に1週間のダウンウィークを設けトレーニング時間(トレーニング量)を減らしトレーニング強度を落とし身体の回復を促すようにする。

✅フルマラソンに挑戦するために多くの市民ランナー(少なくともサブスリーまで)は持久力より筋力の強化を優先させた方が有効である場合が多く、少なくとも中殿筋の筋力強化に努めるようにする。

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野口克彦
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