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エコロジカルアプローチと伝統的筋力トレーニング

トレーニング界に革命が起きたと言われているエコロジカルアプローチ。
植田文也さんのおかげで、徐々に認知度が上がってきたのではないでしょうか。
私もその理論を拝読し、どのようにトレーニングに応用すべきかを考えながら取り組んでいます。
主にスポーツへの練習の取り組み方として紹介されていますが、私はストレングスコーチとして野球・バレーボールに携わっているため、ストレングスの面から考えてみたいと思います。

エコロジカルアプローチとは運動学習における理論であり、その手段として制約主導型アプローチが含まれます。
課題・環境・生体を制約しながら、そのスポーツに必要な動作を習得していきます。
この運動学習理論は非線形運動学習理論と言われ、人間の運動学習が単純にトレーニング時間に比例して向上するものではなく、停滞や下降、向上をランダムに繰り返し進むと説明されています。
もう一つの理論であるディファレンシャルラーニングも非線形運動学習理論の一つであり、ここでキーとなってくるのがフラン・ボッシュ氏が唱えたコンテクスチュアルトレーニングです。

トレーニングを選手に指導する際に問題視されるのは、行っているトレーニングが実際のスポーツにどの程度転移できているのかということです。
スクワットやデッドリフト、オリンピックリフトといった伝統的筋力トレーニングは、開発はしやすいが代表性は低いとされています。
つまり、現在持っていない能力の開発には優れていますが、試合で発揮できる動作を最適化することには向いていません。

ここで重要となってくるのが、上記で説明した非線形運動学習理論です。
私は、Noteを通じてピリオダイゼーションの概念を発信し、期(フェーズ)ごとに筋力の開発や転移のためのトレーニングを説明しています。
ここで勘違いしてはならないのは、伝統的筋力トレーニングが転移性が低いからといって全て排除すべきではありません。
時期によって使い分けや割合を変えることが大事です。

例えば、解剖学的適応期においては積極的にアクアバッグを使用するのも良いでしょう。
以下のようにプログレッションしていくことが考えられます:

•スクワット → ツイストスクワット → チョッピングスクワット
•スプリットランジ → ツイストスプリットランジ → バックワードランジ → バックワードツイストランジ → チョッピングバックワードツイストランジ
•フォワードランジ → フォワードツイストランジ → チョッピングフォワードランジ

アクアバッグは予測不能な外乱により筋肉の共収縮や反射機能の向上を狙うことができます。
プログレッションとは書きましたが、完璧にトレーニングができるようになれば次に進むというわけではなく、6割程度できるようになれば新たな変動性を用いてトレーニングを行うと良いです。
重量のプログレッションも可能ですし、新たな動作を用いることで変動性を加えることもできます。
これにより、漸進性過負荷の原則を心配する必要はありません。

同じトレーニングを複数セット行う必要はなく、前述のようにそのトレーニング動作が完璧に行える必要はありません。
コーディネーション能力の向上を目的としているため、6割程度遂行できれば、より変動性が高いトレーニングに移行して新たな刺激を与えることが重要です。

上記のプログレッションは様々なスポーツにおいて活用できるでしょう。
アクアバッグを使用することで予測不能な外乱やツイスト動作により筋肉の共収縮を促し、またツイスト動作を加えることで股関節の内転内旋を作り出すことができます。
伝統的なフィジカルエクササイズに対して、特定のスポーツの性質を加えることで転移を促進します。

例えば、ピッチャーの場合、スプリットランジを最終的にチョッピングフォワードランジにすることで、より投球動作に近い形でトレーニングを行うことができます。
サッカーやバスケットボールの場合、アクアバッグを用いてラテラルランジからラテラルツイストランジ、ラテラルホップ&スティック、ラテラルジャンプへとプログレッションしていくのも良いでしょう。

例えば、ピッチャーの下半身トレーニングを考えると、以下のようになります。
一般的準備期の筋肥大期もしくは最大筋力期(サブマキシマムロード(MxS-I))では通常のスクワットやデッドリフトといったバイラテラル種目がベースになりますが、アクセサリー種目としてランジ系やシングルレッグRDL、スプリットスタンスRDLなどのユニラテラル種目を取り入れます。
そして、専門的準備期に入ると、徐々に上記で説明したような外乱を加える種目に変更していったり、クリーンやメディシンボールスローといったパワートレーニングの比率を増やして試合に備えます。

外乱を加える種目に変更すると言いましたが、一般的準備期の筋肥大期もしくは最大筋力期にこのようなトレーニングを全て排除する必要はありません。
例えば、ピッチングのフォロースルーフェーズで踏み込み足に体重が乗り切らない選手に対して、アクアバッグを用いたチョッピングフォワードランジを行い、股関節の引き込み動作や筋肉に刺激を与えてからもう一度ピッチングを行うこともあります。
このように、全体の動作を行い、部分的な動作に移行し、再び全体の動作を行うことで実際のパフォーマンスにつなげるWhole-Part-Whole(ホール・パート・ホール)メソッドと呼ばれる方法です。


まとめ

エコロジカルアプローチは、選手の動作の多様性とパフォーマンスを向上させることができます。
一方で、スクワットやデッドリフトなどの伝統的な筋力トレーニングは、基礎的な筋力を開発するために重要です。

つまり、両者をバランスよく取り入れることが重要です。
エコロジカルアプローチでスポーツ特有の動作を強化しながら、伝統的な筋力トレーニングで基礎的な筋力を養うことで、選手の総合的なパフォーマンスを向上させることができます。
このように、どちらか一方に偏ることなく、両方のアプローチを組み合わせることが効果的なトレーニングの鍵です。

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