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オフシーズンに取り組むべき筋肥大期のトレーニングの秘訣

こんにちは、ストレングスコーチのヒロです。私は、ピリオダイゼーションの父とも呼ばれるテューダー・ボンパ氏の理論をベースに、トレーニングプランニングの重要性や効果的な実践方法についてお伝えしていきます。この内容は、YouTubeでも動画形式で詳しく解説していますので、ぜひそちらもご覧ください!


ボンパ氏は、トレーニング計画の基礎であるピリオダイゼーション理論を提唱し、スポーツの世界でパフォーマンスを最大化するための科学的なアプローチを確立した人物です。私は2020年に、Periodization Strength and Conditioning Expertのサーティフィケートを取得し、その後も最新の知識を取り入れながらアップデートを続けています。この経験を活かし、トレーニングの計画や実践に役立つ情報をわかりやすくお届けしています。

今回のテーマは「筋肥大」についてです。
野球選手にとって筋肥大トレーニングは、単に筋肉を大きくするだけではなく、競技に必要な強さやスピードを引き出すための重要なプロセスです。このブログでは、筋肥大期のトレーニングを成功させるための具体的なロードマップを提供し、負荷設定や期間、「RIR(Reps In Reserve)」の使い方について詳しく解説していきます。

アスリートにおける筋肥大の意義

「筋肥大」と聞くとボディビルディングを連想するかもしれませんが、アスリートにおける筋肥大の目的はパフォーマンスの向上です。そのため、アイソレーション種目(サイドレイズやペックフライ、レッグエクステンションなど)は最小限に抑え、競技に直結する多関節運動を中心に行うべきです。野球では特に、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどを通じて体全体を強化することが重要です。

筋肥大期は通常6〜8週間行われ、この期間中に負荷を徐々に増加させ、筋肉に継続的な刺激を与えることで成長を最大化します。特にシーズンオフや準備期においては、このトレーニングが重要な役割を果たします。

筋肥大期を終えた後は、最大筋力期に移行します。このフェーズでは、種目やレップ数、セット数が変化し、筋肉量を効率的に活用してさらに強い力を発揮することを目指します。筋肥大期での目標が絶対的筋力の向上であったのに対し、最大筋力期では特に相対的筋力の向上が重視されます。

相対的筋力を高めることで、体重に対する筋力比を改善し、競技中に必要な力強い動作をよりスムーズに行うことができるようになります。これにより、競技パフォーマンスの向上が期待できます。つまり、筋肥大期で作り上げた基盤をさらに発展させるのが最大筋力期の目的です。

体重が有利に働くスポーツでは筋肥大が重要視されますが、野球やバレーボール、バスケットボール、サッカーなど、重すぎる体重が不利になる可能性があるスポーツでは、相対的筋力の向上に集中する方が効果的です。このアプローチにより、筋力のバランスと競技特性に応じたトレーニングが可能になります。

筋肥大トレーニングのガイドライン

筋肥大期のトレーニングパラメーター

休憩時間は、エクササイズ内容に応じて調整するのが理想です。高負荷のスクワットやデッドリフトでは3〜5分、ランジなどの中負荷エクササイズでは2〜3分程度が適しています。

エクササイズのスピード(実行速度)について

エクササイズの実行速度

エキセントリック(筋肉が伸ばされる動作)は、約3秒程度かけてゆっくり行うことで、筋肉にテンションを高める効果があります。一方、コンセントリック(筋肉が収縮する動作)は爆発的に行い、速筋繊維を効果的に刺激します。このように速度を意識することで、筋肥大や筋力向上に特化したトレーニングが可能になります。

テンポ表記の方法

エクササイズの各動作フェーズを、以下の順番で数値として表記します:
1. エキセントリック(筋肉が伸ばされる動作の時間)
2. 移行(切り替えの時間、ボトムポジションの静止時間)
3. コンセントリック(筋肉が収縮する動作の時間)

具体例

1. 「3.0.1」
• エキセントリック(筋肉が伸ばされる動作): 3秒
• 移行(ボトムでの静止): 0秒
• コンセントリック(筋肉が収縮する動作): 1秒
2. 「3.1.1」
• エキセントリック: 3秒
• 移行: 1秒
• コンセントリック: 1秒

活用のポイント

エキセントリックをゆっくり行うことで筋肉の緊張時間を増やし、筋肥大に効果的な刺激を与える。
コンセントリックを爆発的に行うことで速筋繊維を刺激し、筋力とパワー向上を狙う。

このテンポの管理により、トレーニング効果を最大化し、目的に合わせたプログラムが実現できます。

ローディングパターン

いろいろなローディングパターン

今回は、最も一般的に用いられる「3+1」のローディングパターンを用いて説明します。

ローディングパターンとは?

ローディングパターンとは、トレーニング負荷をどのように増減させるかを計画する方法を指します。この計画では、選手の適応や回復を考慮しながら、トレーニングの強度やボリュームを段階的に上げたり、一定のタイミングで負荷を軽くして回復を促すタイミングを組み込みます。

「3+1」ローディングパターンの特徴

3週間: 負荷を徐々に増加させ、筋肉や神経系に適切な刺激を与える期間。
1週間: ディロード(回復週)として、負荷を軽減し、疲労を回復させる期間。

このパターンを繰り返すことで、疲労の蓄積を管理しつつ、トレーニングの効果を最大化することが可能です。

「3+1」パターンは、選手のパフォーマンスを持続的に向上させるための基本的かつ効果的な方法であり、さまざまな競技や目的に応じて応用可能です。

ディロードの重要性

ディロード期間では、負荷を10〜20%、セット数を30〜50%減らしてトレーニングの強度とボリュームを調整します。完全に休むのではなく軽い刺激を与えることで、回復を促しつつ次のフェーズに備えます。

ローディングパターン 3+1

トレーニングの具体例

筋肥大期トレーニング例(8週間)

3週間: トレーニング負荷を徐々に増やす
4週目: ディロード(回復週)を設ける
ミクロサイクルごとに負荷を5%増加させ、RIR(Reps In Reserve)は徐々に減らしていきます。

RIR(Reps In Reserve):余力レップスケール

RIR(Reps In Reserve)
余力レップスケール

RIR(Reps In Reserve)の活用方法とその理由

RIR(Reps In Reserve)は、1セットの中で何レップ余力を残すかを示します。例えば、10RMの負荷で8レップ行った場合、RIRは「2」となります。この指標を使うことで、トレーニングの強度を適切に管理しながら筋肥大とパフォーマンス向上を目指すことが可能です。

RIRを調整する理由

筋肥大を促すためには、各セットで適度な負荷をかけて筋肉にしっかりと刺激を与える必要がありますが、疲労が蓄積しすぎるとオーバートレーニングやケガのリスクが高まります。そのため、週ごとにRIRを少しずつ減らし、トレーニング強度を段階的に高めることが推奨されます。この方法により、効率的に筋肉の成長を促しつつ、疲労の管理が可能になります。

筋肥大における最適なRIR設定

RIR 1〜3: 筋肥大に最適。
RIR 0: 追い込みすぎによる疲労蓄積が懸念されるため、大筋群や重い負荷のエクササイズでは避けるべきです。特にスクワットやデッドリフトなどでは、RIR 1〜2を目安にするのが安全で効果的です。
ディロード前: RIRを1に設定して行うことで、筋肥大効果をさらに高めることが期待できます。

実践例:RIRを段階的に減らす

1週目のトレーニングでは、各セットでRIRを調整し、最終セットで目標のRIR「2〜3」に到達するように計画します。

例: 1週目(65%RMで3〜4セット行う場合)

1. 1セット目: 12レップ、RIR 4(余力を残して軽めに)
2. 2セット目: 12レップ、RIR 3(少し追い込み始める)
3. 3セット目: 11レップ、RIR 2(目標のRIRに近づく)
4. 4セット目(オプション): 10レップ、RIR 2

このようにセットごとにRIRを減らしていくことで、トレーニング効果を最大化しつつ、無駄な疲労を避けることができます。

2週目以降の進め方

2週目、3週目以降も同様の考え方で進め、負荷を徐々に増加させながらRIRを調整します。これにより、筋肉に継続的な刺激を与えつつ、疲労の管理を行い、効果的な筋肥大を実現します。

この方法を用いることで、計画的かつ効率的にトレーニングを進めることができ、競技パフォーマンス向上にもつながります。

筋肥大期トレーニングメニュー例

トレーニングメニュー例を紹介していきます。週4回を想定していますので、上半身を週に2回、下半身を週に2回、交互に行うようにしています。

筋肥大期トレーニングメニュー例

すべてのメニューにおいて、効果の高いコンパウンド種目を1種目目に持ってきます。上半身のトレーニングでは、プッシュ動作とプル動作のどちらを先に持ってきても構いません。日によって変える方が、バランスよく取り組むことができるでしょう。

補助種目に関しては、アクセサリー種目とも呼ばれており、種目を固定せずに1週間ごとに入れ替えることで、さまざまな刺激を筋肉に与え、筋肥大を促進する効果が期待できます。たとえば、ランジ系のエクササイズでは、1週目にブルガリアンスプリットスクワットやスプリットランジを行い、次週にはバックワードランジ、フォワードランジ、ウォーキングランジ、フロントフットエレベートランジ、リアフットエレベートランジなどを取り入れることが可能です。

このように異なる動作パターンに取り組むことで、筋肉や関節に多様な動きを覚えさせ、全体的な動作の多様性を身につけることができます。これにより、バランスの取れた筋力と柔軟な動作を備えた強い体を作ることが可能です。

まとめ

野球選手にとって、筋肥大トレーニングは競技パフォーマンスを高める基盤作りです。今回ご紹介した方法を参考に、効率的な体づくりを目指してください。質問があればぜひコメント欄でお知らせください。

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