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体幹を極める!姿勢制御から学ぶトレーニング理論

今回の勉強会資料を読んでくれてありがとうございます!この資料は、姿勢制御と体幹トレーニングについて自分なりにまとめたもので、私のジムで頑張ってくれているトレーナーのみなさんの勉強用として、そしてこの資料を手に取ってくれたあなた達にも役立てば嬉しいです。

姿勢を保つための仕組みや体幹トレーニングの理論を理解することで、毎日の指導がより効果的になってくると思います。少しでもみなさんの指導のヒントになって、新しい発見につながったら嬉しいです。一緒に成長して、もっと良いサポートを提供していきましょう!


まず、体の姿勢を保つためには、いくつかの異なる仕組みが働いています。この章では、それぞれの仕組みがどのように姿勢を制御しているのかを詳しく説明します。

随意的制御

「随意的制御」とは、私たちが意識的に姿勢を保つときに使う制御のことです。たとえば、「背筋を伸ばそう」と思ったときに脳からの指令で姿勢を正すことです。この指令は前頭葉から出され、他の器官(大脳基底核、視床、小脳など)と協力して体を動かし、姿勢を整えます。

不随意的制御

「不随意的制御」とは、私たちが意識しなくても自然に体のバランスが取れる仕組みです。たとえば、立っているときに体が倒れないように筋肉が自動的に働くことがこの仕組みに当たります。この不随意的制御は、「橋網様体」と「延髄網様体」という脳の部位によって行われます。
橋網様体(きょうもうようたい):体を伸ばすための筋肉(伸展筋群)を自動的に働かせて、姿勢を安定させます。
延髄網様体(えんずいもうようたい):過度に緊張している筋肉を抑える役割があります。これにより、筋肉が硬くなりすぎないように調整されています。

予測的姿勢制御(APAs)

「予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustments, APAs)」は、体がこれから行う動作に備えて無意識に姿勢を準備し、安定させる仕組みです。この制御は、特定の動作が行われる前に体が自動的にバランスを取るためのものです。APAsは、体の安定性を保ちながら、スムーズに動作を始めることを可能にします。
APAsが働くことにより、例えば重い物を持ち上げるときに体が傾いたり倒れたりしないように、足や体幹があらかじめ安定する準備をします。この仕組みは、動作を行う前に脳が筋肉に適切な指令を出して体を安定させるため、動作中のバランスの崩れを防ぎ、効率的なエネルギーの使用を可能にします。

歩行制御(CPG)

「歩行制御(Central Pattern Generator, CPG)」とは、私たちが歩く際に必要な複雑な動きを無意識に自動的に調整する仕組みです。この働きは「中枢パターン生成器(Central Pattern Generator, CPG)」と呼ばれる神経回路によって行われます。CPGは脊髄に存在し、歩行のためのリズミカルな動き(交互に脚を動かす動作など)を生成することができます。この仕組みのおかげで、私たちは特に意識しなくても歩くことができるのです。
CPGは、基本的な運動パターンを制御するための自律的な神経回路で、歩行だけでなく、走る、泳ぐ、飛ぶなどの反復的な動作にも関与しています。この回路が働くことで、歩くという複雑な動作がスムーズに、しかも自動的に行えるのです。

安静時の姿勢筋緊張(HRMT:Human Resting Muscle Tone)について

HRMTとは?

「安静時の姿勢筋緊張(HRMT)」とは、私たちが安静にしているときに無意識に発生する骨格筋の筋トーンのことです。これは、私たちが何もしていない状態でも体を支えたり、姿勢を保つために必要なわずかな筋肉の緊張です。この筋トーンが適切に機能することで、姿勢を崩さずに立ったり座ったりすることが可能になります。

筋トーンの重要性:筋トーンは高すぎても低すぎても良くありません。高すぎる筋トーンは体の柔軟性を失わせ、無駄なエネルギーを消費することになり、筋肉や関節への負担が増加します。逆に低すぎる筋トーンは、体を支える能力が不足し、姿勢が崩れやすくなります。
:筋トーンが高すぎる場合、「スウェイバック」と呼ばれる腰を反らした姿勢になることがあります。この状態では、腰椎への負担が大きくなり、腰痛の原因となることがあります。

バイオテンセグリティシステム

「HRMTと軟部組織(人体や皮膚)の張力によって体を支える仕組み」は、「バイオテンセグリティシステム」と呼ばれます。バイオテンセグリティとは、生物の体が互いに支え合う構造で成り立っているという概念で、筋肉や軟部組織がバランスよく張力を保つことで、体全体を支えています。
軟部組織の役割:軟部組織(筋膜、靭帯、皮膚など)は、筋肉とともに張力を発揮し、体の構造を支える重要な役割を果たします。このシステムにより、体の安定性が保たれ、無駄なエネルギーを使わずに姿勢を維持することができます。

HRMTを最小限に保つことの重要性

筋肉の安静時の緊張は「必要最小限」であることが望ましいです。筋緊張が必要以上に高いと、エネルギーの無駄遣いや筋肉の疲労を引き起こし、長期間にわたると慢性的な痛みや不快感の原因になります。そのため、安静時には筋緊張を最小限に抑え、効率よく体を支えることが重要です。

HRMTの増加の原因

筋緊張が増加する原因にはいくつかの要因があります。これらの要因を理解することで、緊張を緩和し、適切な状態を保つための対策を立てることができます。
物理的ストレスの増加(疲労など):筋肉に過度の負荷がかかると、筋トーンが高まります。疲労が蓄積することで筋緊張が持続し、体が硬くなってしまいます。
中枢神経による制御機能の低下:脳や脊髄などの中枢神経が適切に筋肉を制御できないと、筋緊張が増加しやすくなります。
エネルギー消費の増加(燃費の悪化):怪我や病気、ストレスにより体のエネルギー消費が増えると、筋肉の効率が低下し、筋トーンが高くなることがあります。
抗重力活動のための筋活動増加:姿勢を維持するための抗重力筋(例えば脊柱起立筋)が過度に働くと、筋トーンが高まります。
筋機能の低下と筋発火パターンの変化:筋肉の働きが弱くなると、他の筋肉が補おうとして緊張が増加します。また、筋発火(筋収縮を引き起こす神経の信号)のパターンが変わることで、筋トーンが不適切に増えることがあります。
軟部組織の張力の低下:軟部組織(皮膚や靭帯など)の張力が低下すると、それを補うために筋肉が過剰に緊張することがあります。例えば、怪我によって軟部組織が損傷すると、その周囲の筋肉が硬直して体を支えようとします。
精神的ストレス:ストレスが交感神経を刺激し、筋肉の緊張を高めることがあります。

筋緊張のリラックスとその要因

筋緊張が高い場合、緊張を取り除きリラックスさせることが重要です。しかし、筋緊張の原因は様々で、それぞれに応じた対処が必要です。

感覚統合:体性感覚・視覚・前庭覚を統合して適切に反応することで、PMRFが活性化され、IMLが抑制され、交感神経の活動が抑えられ副交感神経が優位になります。
ストレスの影響:精神的なストレスが原因であれば、リラクゼーションやメンタルケアが有効です。リラックスすることで副交感神経が優位になり、筋緊張が緩和されます。
軟部組織の状態:軟部組織の張力が低下している場合は、適切なリハビリやマッサージなどで軟部組織の状態を改善し、筋肉への過度な負担を軽減することが求められます。

自律神経と筋緊張

自律神経系は筋緊張に大きな影響を与えます。特に、交感神経と副交感神経のバランスが筋肉の状態を左右します。

交感神経(SNS):体を活動的な状態にするための神経です。運動をするときや緊張したときに活性化し、筋肉を緊張させます。たとえば、危険を感じたときに体が緊張するのは交感神経の働きによるものです。
副交感神経(PNS):リラックスした状態にするための神経です。体を休ませるときやリラックスしているときに活性化し、筋肉の緊張を緩和します。

PMRFとIML

「橋網様体(PMRF)」と「中間外側柱(IML)」は、筋肉の緊張を調整する重要な部分です。PMRFは体を支える筋肉を活性化させ、IMLは筋肉の緊張を調整します。これにより、体が必要なときに緊張し、必要でないときにはリラックスすることができます。

交感神経が優位な場合:交感神経が優位になると、筋肉(特に屈筋群や内旋筋)の緊張が増加します。これは、ストレスが高まっているときや、「闘争・逃走反応」「fight-or-flight reaction」の際に起こります。

「闘争・逃走反応(fight-or-flight reaction)」は、私たちがストレスや危険に直面したときに、身体が自動的に示す生理的な反応のことです。これは私たちが生き延びるために備わっている自然な防御メカニズムであり、主に交感神経系が関与しています。この反応は、脅威に直面した際に「戦う(fight)」か「逃げる(flight)」のどちらかの行動を取るために身体を準備するものです。

補足:闘争・逃走反応のメカニズム

この反応が引き起こされると、以下のような一連の生理的変化が体内で起こります:
交感神経系の活性化
心拍数と血圧の上昇
呼吸の速さが増加
筋肉の緊張
消化活動の抑制
瞳孔の拡大

闘争・逃走反応のメリット

闘争・逃走反応は、緊急事態に素早く対応するための重要な生存メカニズムです。例えば、突然の危険(動物に襲われそうになったり、急に車が迫ってきたり)に直面したときに、身体が迅速に行動を起こせるように準備します。

速い反応:この反応により、身体は危機に対してすばやく対応することができます。たとえば、逃げることで安全を確保する、あるいは攻撃して危険を取り除くことができます。
体力と注意力の向上:アドレナリンの分泌によって、体力が増強され、集中力が高まり、より迅速かつ効率的に対応できる状態になります。

闘争・逃走反応のデメリット

しかし、闘争・逃走反応が長時間続くと、体に悪影響を与えることがあります。これが現代社会における慢性的なストレスの原因となり、さまざまな健康問題を引き起こすことがあります。
慢性的な筋緊張
常に筋肉が緊張した状態が続くと、肩こりや腰痛、関節痛などの慢性的な痛みの原因になります。
消化不良
消化機能が抑制され続けると、食欲不振や消化不良、胃の不快感などが起こることがあります。
心血管系への影響
心拍数や血圧が高い状態が続くと、心血管系に負担がかかり、高血圧や心臓病のリスクが高まります。
精神的な影響
ストレスホルモンが長時間分泌され続けることで、不安感やイライラ、集中力の低下などの精神的な症状が現れることがあります。

副交感神経の重要性

闘争・逃走反応に対して、副交感神経はリラックスし、身体を休ませる働きを持っています。副交感神経が優位になると、心拍数が下がり、筋肉の緊張が解け、消化が促進されるなど、体がリラックスして回復する方向に働きます。

バランスの重要性

交感神経と副交感神経のバランスがとれていることが健康にとって重要です。闘争・逃走反応が必要な状況では交感神経が活性化されますが、その後、副交感神経が優位に立つことで、体は元の安定した状態に戻ります。このバランスが取れないと、慢性的なストレスによる健康被害が発生します。

副交感神経を高めることの効果:筋緊張が高い場合、副交感神経を高めることでリラックスさせることが可能です。副交感神経が優位になると、筋肉の緊張が緩和され、体が落ち着いた状態になります。

PMRFの活性化(IMLの抑制アプローチの一つ)

「PMRF(橋延髄網様体)」を活性化することで、副交感神経の働きを高め、筋緊張を緩和することができます。

PMRFの活性化とIMLの抑制について

PMRFとは?

PMRF(橋延髄網様体)は、脳幹の一部で、自律神経の調整に関わっています。PMRFを活性化することにより、交感神経系の興奮を抑え、副交感神経を優位にすることで体をリラックスさせることができます。

IMLとは?

IML(中間外側柱)は、脊髄にある自律神経系の中枢で、交感神経の活動をコントロールしています。IMLが活性化されると、交感神経が優位になり、体が「闘争・逃走反応」に準備されます。

PMRFの活性化によるIMLの抑制

PMRFを活性化することで、IMLの活動を抑えることができます。これにより、交感神経の活動が減少し、副交感神経が優位になります。副交感神経が優位になると、体がリラックスし、心拍数が下がったり、筋肉の緊張が和らいだりします。

体性感覚・視覚・前庭覚の評価とアプローチ

PMRFを活性化するためには、体の感覚(体性感覚)、視覚(目の情報)、そして前庭覚(バランスや体の位置を感知する機能)を評価し、それぞれが適切に働いているか確認します。もしこれらの感覚のどれかが弱い場合、その部分に対してアプローチ(トレーニングや刺激)を行います。

同側の前頭葉の活性化

PMRFは、同側の前頭葉が活性化されることによって刺激されます。前頭葉は、体の運動や判断を司る脳の部分で、適度な運動や集中する活動が前頭葉を活性化します。これによりPMRFが活性化され、IMLの抑制を促します。

感覚統合とPMRFの活性化

感覚統合とは、体性感覚・視覚・前庭覚といった複数の感覚を組み合わせて適切に反応できるようにすることです。これにより、PMRFが活性化され、IMLが抑制されます。その結果、交感神経の活動が抑えられ、副交感神経が優位になります。

動作とUncontrolled Movement(UCM)について

動作に関する問題や改善方法について、以下に詳しく説明します。特に「Uncontrolled Movement(UCM)」の概念を中心に、動作の多様性、筋緊張と体幹の剛性についても触れていきます。

Uncontrolled Movement(UCM)とは?

「Uncontrolled Movement(UCM)」とは、筋肉や関節の動きが適切に制御されておらず、動作が不安定な状態を指します。この状態では、動きに偏りが生じたり、特定の筋肉が過度に使われたりして、痛みや怪我の原因になることがあります。

たとえば、腰痛を持つ人の場合、特定の筋肉がうまく使われていないことが原因で、動作のバランスが崩れ、結果的に痛みを引き起こすことがあります。このような状況では、どの部位が適切に働いていないのかを評価し、その部位の機能を改善することが重要です。

UCMの評価方法

UCMを評価する際には、まず「どの動きで痛みが出るか」や「どの動きが制御できないか」を確認します。以下のようなポイントが評価の対象となります:
どの動きで痛みが出るか
体を動かしたときにどこで痛みが出るかを確認し、その動作に問題がないかを調べます。
どの動きが制御できないか
動きがスムーズでない場合、たとえば「いきなり速く動いてしまう」「震えてしまう」といった症状が見られる場合、それがUCMの可能性があります。
過剰に発達・緊張している部位
ある部位が過度に緊張している場合、その周辺の筋肉や関節に負担がかかり、痛みの原因となることがあります。
筋力低下や感覚鈍麻・過剰が起こっている部位
特定の部位の筋力が低下していたり、感覚が鈍くなっている(または過敏になっている)場合、それもUCMの一因です。

動作ごとのUCMの評価

以下のように、体のさまざまな動作(屈曲、伸展、回旋、側屈など)を通じてUCMを評価します。

屈曲(体を前に曲げる動作)

評価方法:体を前に曲げてもらい、どこが曲がっていないか、またどこが過度に曲がっているかを確認します。
考えられる問題
•曲がっていない部分に痛みがある場合、動きの制御が不足していることが原因の可能性があります(UCMの関連が強い)。
•過度に曲がっている部分に痛みがある場合、その部位の過剰な可動性が原因であることが考えられます。

伸展(体を後ろに反らす動作)

評価方法:手を腰に当てて、体をゆっくり後ろに反らしてもらいます。どの部分が動いていて、どこが動いていないかを触診しながら確認します。
考えられる問題:動かない部分は筋力や柔軟性の不足が原因であり、これが痛みの原因になる可能性があります。

側屈(体を横に曲げる動作)

評価方法:体を横に曲げてもらい、どの部分が動いていないかを確認します。特に顕著な場合、体がまっすぐなまま一部だけが急に曲がることがあります。
考えられる問題:腰椎部分の側屈が不十分な場合、お尻をシフトさせることで側屈を促進するトレーニングを取り入れることが有効です。

回旋(体をひねる動作)

評価方法:体を左右にひねってもらい、どこが動いていてどこが動いていないか、痛みがあるかないか、全体の可動域を確認します。
考えられる問題:左右で回旋の動きに差がある場合、その差が痛みや不調の原因となることがあります。しかし、単に動かない側を動かせばよいというわけではなく、その原因を見極めることが重要です(例:背骨や骨盤の問題)。

UCMの改善アプローチ

UCMの改善には、以下の方法が効果的です。
1.動作方向に基づく評価
どの方向に動かすと症状が悪化するか、逆にどの動きで症状が和らぐかを見極め、それに基づいてアプローチを決定します。
2.筋動員パターンの修正
筋肉の使い方が偏っている場合、その偏りを正すことが必要です。例えば、特定の筋肉だけが過度に使われている場合、それ以外の筋肉を適切に使うことで、筋動員パターンを正常化します。
3.適切なエクササイズの選択
診断名に基づいて一般的なエクササイズを行うのではなく、実際にどの動きができていないかを見極め、その動作を改善するためのエクササイズを行います。
4.動作の評価とエクササイズの区別
動作の評価に使用する動きを、そのままエクササイズとして使うのではなく、指標として使う動きとエクササイズを分けることが重要です。そうしないと、その動きが単に「上手になっただけ」で、根本的な問題が解決されない可能性があります。

その他の考慮事項

競技特異的な動き:スポーツの動作に特有の動きや、複雑な3Dの動き(例:回旋しながらの屈曲)なども評価する必要があります。
日常生活での動き:日常生活でよく行う動作で痛みが出る場合、その動きを評価し、コントロールできるようにすることも大切です。

動作の多様性の重要性

動作の多様性とは、同じ動作を行う際に、異なる筋肉の使い方や異なるパターンを持たせることです。この多様性を持つことによって、体がさまざまな環境や状況に柔軟に対応できるようになります。

例えば、重い物を持ち上げるとき、筋肉の使い方に多様性があれば、一部の筋肉に負担が集中することを避け、体全体で力を分散することができます。これにより、筋肉や関節に過度な負担をかけることなく動作を行うことができ、痛みの軽減や怪我の予防に繋がります。

筋緊張と体幹の剛性(Stiffness)

剛性(Stiffness)とは、筋肉や関節がどれだけ固くなるか、あるいは安定しているかを表す指標で、体の安定性を保つために重要です。特に脊柱(背骨)の剛性は、体幹の安定性に大きく関与しており、外部からの力や衝撃に対して脊柱を守るために必要です。

筋の共調活動と剛性の関係

筋の共調活動(co-contraction)とは、複数の筋肉が同時に収縮することによって体の安定性を高める仕組みです。たとえば、体幹の筋肉が共調して働くことで、脊柱が安定し、外部からの力に対して抵抗できるようになります。これにより、脊柱が外乱(衝撃や負荷)に対してしっかりと守られます。

剛性と筋力発揮の関係

筋力が適度に発揮されることで体幹の安定性が高まりますが、筋力発揮が過剰である場合、逆に安定性を損なうこともあります。
適度な筋力発揮:適度な筋力で筋肉が収縮すると、体幹の安定性が高まり、脊柱を守るための剛性が得られます。
過剰な筋力発揮:筋肉が過度に力を発揮すると、筋肉が硬直しすぎて柔軟性が失われ、逆に体の動きが制限されます。このため、脊柱への負荷が集中し、外乱に対して柔軟に対応できなくなる可能性があります。

剛性の向上と負荷の関係(BrownとMcGillの研究)

BrownとMcGill(2010年)の研究によれば、脊柱の剛性は最大筋力の約30%程度の負荷を与えることで最も効果的に高まります。それ以上の負荷をかけても、剛性の向上はあまり見られません。

一定の負荷(約1RMの30%)まで:この程度の負荷であれば、筋肉は適度に活性化され、体幹の剛性が高まります。これにより、脊柱を守りながら体の安定性を向上させることができます。
それ以上の負荷:負荷が高くなると、剛性の向上が頭打ちになり、それ以上の剛性向上は期待できません。さらに、過剰な負荷は筋肉の硬直を引き起こし、脊柱を守るための柔軟性が失われてしまう可能性があります。

高負荷のスクワットと体幹の剛性

高負荷のスクワットを行うことが必ずしも体幹の剛性を高めるわけではありません。スクワットの負荷が高すぎると、筋肉が硬直し、体幹の柔軟な安定性が損なわれることがあります。そのため、脊柱をしっかりと守りながらトレーニングを行うためには、必要最低限の負荷で体幹の剛性を高めることが重要です。

スタビリティインデックスについて

スタビリティインデックスとは、脊柱が外部の力に対してどれだけ安定しているか、脊柱を守る能力を表す指標です。適度な負荷を与えて剛性を高めると、このスタビリティインデックスも向上し、脊柱が外乱から守られます。しかし、負荷が過剰になると、スタビリティインデックスはあまり向上せず、逆にリスクが増えることがあります。

低閾値動作と中閾値動作

日常生活やエクササイズの中で、筋力の使われ方には「低閾値動作」と「中閾値動作」があります。これらの違いを理解することで、どのようにして体の安定性と動作の効率を高めるかが見えてきます。
低閾値動作
筋力の10%以下の動作を指します。これらの動作は、日常生活で行うほとんどの軽い活動(立つ、座る、歩くなど)に該当します。体幹が適度に緊張し、最小限の力で動作が行えるようにすることが重要です。
中閾値動作
筋力の10%以上を使う動作です。これは、運動や特定のエクササイズを行うときに必要な筋力で、過度に力まない程度の適度な負荷がかかる動きです。体幹トレーニングやウェイトトレーニングなどの運動で行われる動作がこれに該当します。

高閾値の体幹トレーニングについて

高閾値の体幹トレーニングとは、体幹の安定性を高め、より高い負荷や素早い動きに対応できるようにするためのトレーニングです。このトレーニングでは、特に「反射スピード」「持続時間」「抗方向の動作(抗伸展・抗屈曲・抗回旋・抗側屈)」といった要素が重要です。

反射スピード

反射スピードとは、外部からの刺激に対してどれだけ速く体幹の剛性を高めて反応できるかを示します。体幹が素早く安定しないと、外力に対して十分に脊柱を守ることができなくなります。

なぜ反射スピードが重要なのか
体幹の剛性は、外部の力に即座に対応するために素早く高まる必要があります。たとえば、スポーツ中に急に方向転換をする場合や、不意に体に力が加わる場合には、徐々に剛性を高めていては間に合いません。反射的に素早く体幹の筋肉を使うことで、脊柱や内臓などの重要な部分を守ることができます。

高閾値から低閾値のトレーニングへの移行と見直し

低閾値のトレーニングが十分に習得できた後、高閾値のトレーニングに進むことは一般的なトレーニングの流れです。しかし、高閾値トレーニングで得た反射的な動作パターンや体の使い方が、そのまま低閾値のトレーニングに影響を与えてしまうことがあります。

例えば、高閾値のトレーニングでは高い負荷や強い反応を求めるため、筋肉の緊張や動きのスピードが強調されますが、低閾値のトレーニングではもっとリラックスした動作や、より滑らかなコントロールが重要です。そのため、たまに低閾値のトレーニングを行い、動作を見直すことは非常に重要です。


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