🌸【白い雲通信:コラム「新しい戦前、新しい安全神話」】4/1発売 茅ヶ崎方式季刊LCT「リスニングの春、その先へ!」
【写真】季刊LCT 42号(April-June 2023)の表紙より
茅ヶ崎方式季刊LCT・編集委員の飯竹恒一です。今回は4月1日発売の季刊LCT 42号(April-June 2023)のご紹介です。「リスニングの春、その先へ!」という表紙のキャッチフレーズとともに、書店に並び始めました。
40年以上の歴史を持つ茅ヶ崎方式英語会は聴くことを重視していますが、そうして「リスニング」力を蓄えたうえで、「その先」の英文ライティングや口頭の英語発信にもつなげようという「茅ヶ崎方式新時代」をイメージした表紙になっています。
春の訪れとともに、この季刊誌を手に英語学習に本腰を入れていただきたいところですが、ウクライナ危機なども背景に、不穏な空気が国内外を覆っているのも事実です。
特に私が懸念しているのは、違う意見を声を大にして言うことに、及び腰になる空気がないか、という点です。しっかり意見をぶつけ合い、一致点を見出すのに手間をかけることが、まるで無駄なことだと片づけられてはいないか、という問題意識です。そう危惧する思いをストレートに表現したのが、今回の42号に掲載のコラム「五十路の坂、白い雲」です。
防衛政策にせよ、原発の是非にせよ、国のあり方を変える大きなテーマで賛否両論あるのは当然です。ならば、政府が積極的に説明して国会論戦を重ね、選挙で国民の審判を仰ぐべきだと思います。
なのに昨今の風潮として、政府が閣議決定で決めたことが、あたかも最終的な結論であるかのようにまかり通ってしまいます。特に防衛政策は先に米国と話をつけて、国民への説明は後回しである印象です。その後の国会論戦でも、政府の説明は迷走しています。世論調査の結果も、本当に情報が十分に有権者に伝わった末のものなのか、確信が持てません。民主主義の決定プロセスはきちんと尊重されるべきです。
元をたどれば、2015年に集団的自衛権(right to collective self-defense)の行使を容認するにあたり、そのための憲法解釈を閣議決定で決めた安倍政権の手法が踏襲されているように思います。あの時は大規模な反対デモが国会前で起きましたが、今は抗議行動はあっても、極めて小規模にとどまっています。報道機関が当局の圧力の下、主張を弱めていったことも今につながっていると感じます。
モノ言わぬ空気は、戦前の「大政翼賛会」を彷彿とさせる政治状況を生んでいるとも言われ、タレントのタモリさんが「新しい戦前」(new prewar period)だと指摘したのは、大きな反響を呼びました。
原発でも同じことが指摘されています。ウクライナ危機を契機に、エネルギー確保を理由に原発推進に舵が切られました。ここでは「新しい原子力の安全神話」(new nuclear safety myth)が流布しつつあると感じます。2011年の東日本大震災(East Japan Great Earthquake)に伴う東京電力福島第一原発事故の反省など、どこかに追いやられてしまった感があります。
コラムでは、こうした重要テーマでよく登場する英語の表現も散りばめながら、問題意識を深めていただけるよう工夫を凝らしています。中国の人口問題を取り上げたリニューアル連載「元記者と挑む生ニュース 読み解き、ライティングにつなげる」と合わせ、ご活用をお願いいたします。
(茅ヶ崎方式季刊LCT・編集委員 飯竹恒一)