8月に観た映画:『墓泥棒と失われた女神』『ラストマイル』『箱男』。
2024年8月、映画館で観た作品の振り返りです。
墓泥棒と失われた女神@シネスイッチ銀座
不思議な魅せ方が続く:★★★☆☆
全体の空気感が緩くて落ち着く:★★★★☆
咳喘息が治ったので落ち着いた映画も見られる体調になり、雑誌で知って楽しみにしていた本作品を、銀座で鑑賞。
原題は『La chimera』、『幻想』の意味だそうです。イタリアの監督の映画です。
淡々としたペースでお話が進んでいきます。途中、ストーリーを説明するような歌を出演者が歌ったり、観念的なセリフが続いたり、コミカルで演劇的な表現があったり、魅せ方が不思議で飽きません。
イタリアの田舎町が舞台ですが、深く考えずに、ただ画を追っていくだけでも充分に楽しめる映画です。人によって誰に感情移入するか、誰を嫌うかは違うと思いますが、全く入り込めずにこの映画から距離を取ることもあるかもしれません。
自分の場合は、知らぬ間に主人公のアーサー(イタリア語では「アートゥ(トゥの音が上がる)」と発音するようです)視点になり、ラストの幻想には救われた心持ちになりました。
ラストマイル@TOHOシネマズ日比谷
ドラマファン待望:★★★★☆
余白がちょうど良い:★★★★★
週末の仕事終わりに、日比谷で鑑賞。公開初日の夜ということもあり、ほぼ満席でした。
テレビドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界とのことで、キャスティングはかなり豪華。自分は『アンナチュラル』しか見たことがありません。(後ろの席の女性二人組は、開演前にずっと「この映画をどれだけ楽しみにしていたか」をずっと語っていました。開演前のワクワクも、映画の醍醐味ですね。)
満島ひかりさんはとても好きな俳優さんですが、久々に映画で観ました。ハスキーな声が震える独特な感じも好きですが、それ以上に、心の震えがまるごと全部伝わってくる稀有な俳優さんです。
ストーリーは、いろいろな謎が少しずつ明らかになっていくサスペンス調ではありますが、すべては説明しないので、余白の具合が心地よいです。明確な答えを出さないまま映画が終わり、後でなんとなく「あれは、こういうことだったのかも」とふと感じる時間が、本当に贅沢です。
箱男@TOHOシネマズシャンテ
好き嫌いはある:★★☆☆☆
箱男から目が離せない:★★★★★
製作発表からずっと楽しみにしていた、本作品。27年前に製作中止になった作品が改めて映画化されました。安部公房の原作は10代の頃に読みましたが、細かい内容はほとんど忘れていました。
ただ、原作のままでは時代に合わないであろう表現が肝であることは強く覚えていました。一抹の不安があったのでチケット予約前にネット検索し、インティマシー・コーディネーターが入っていることを確認してから鑑賞しました。レイティングはPG-12です。
最初から、箱男のビジュアルに目が離せません。単に段ボール箱をかぶった男なのですが、コミカルな表現が続き、前半の箱男の闘いのシーンは思わず笑ってしまいます。
後半は打って変わってスピード感が落ち着きます。後半に出て来る「葉子」という女性を演じるのは白本彩菜さんという俳優さんなのですが、カラダのラインが本当に美しいです。滑らかな弧を描くようなラインでびっくりします。
ラストは賛否あると思いますが、こうでもしなければ締められなかったのかな、という気がします。あの原作の世界観を現代の感覚に合わせて表現しようとしたことは、単純にすごいと自分は思います。
好き嫌いが分かれそうなので「誰にでも勧められる映画」ということではありませんが、これほどの覇気を感じる映画はそれほど多くないので、気になる方は是非。
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