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8月に観た映画:『墓泥棒と失われた女神』『ラストマイル』『箱男』。

2024年8月、映画館で観た作品の振り返りです。

墓泥棒と失われた女神@シネスイッチ銀座

シネスイッチ銀座 SCREEN2

不思議な魅せ方が続く:★★★☆☆
全体の空気感が緩くて落ち着く:★★★★☆

咳喘息が治ったので落ち着いた映画も見られる体調になり、雑誌で知って楽しみにしていた本作品を、銀座で鑑賞。

80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。考古学愛好家のイギリス人・アーサー(ジョシュ・オコナー)は、紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜか発見できる特殊能力を持っている。墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。

そんなアーサーにはもうひとつ探しているものがある。それは行方知れずの恋人・ベニアミーナだ。ベニアミーナの母フローラ(イザベラ・ロッセリーニ)もアーサーが彼女を見つけてくれることを期待している。
しかし彼女の失踪には何やら事情があるようだ…。

ある日、稀少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく…。

公式サイトより

原題は『La chimera』、『幻想キメラ』の意味だそうです。イタリアの監督の映画です。

淡々としたペースでお話が進んでいきます。途中、ストーリーを説明するような歌を出演者が歌ったり、観念的なセリフが続いたり、コミカルで演劇的な表現があったり、魅せ方が不思議で飽きません。

イタリアの田舎町が舞台ですが、深く考えずに、ただえいぞうを追っていくだけでも充分に楽しめる映画です。人によって誰に感情移入するか、誰を嫌うかは違うと思いますが、全く入り込めずにこの映画から距離を取ることもあるかもしれません。

自分の場合は、知らぬ間に主人公のアーサー(イタリア語では「アートゥ(トゥの音が上がる)」と発音するようです)視点になり、ラストの幻想キメラには救われた心持ちになりました。


ラストマイル@TOHOシネマズ日比谷

TOHOシネマズ日比谷 スクリーン1

ドラマファン待望:★★★★☆
余白がちょうど良い:★★★★★

週末の仕事終わりに、日比谷で鑑賞。公開初日の夜ということもあり、ほぼ満席でした。

テレビドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界とのことで、キャスティングはかなり豪華。自分は『アンナチュラル』しか見たことがありません。(後ろの席の女性二人組は、開演前にずっと「この映画をどれだけ楽しみにしていたか」をずっと語っていました。開演前のワクワクも、映画の醍醐味ですね。)

11 月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”の前夜、
世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく――。巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に、未曾有の事態の収拾にあたる。

誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?
残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?

決して止めることのできない現代社会の生命線 ―
世界に張り巡らされたこの血管を止めずに、いかにして、連続爆破を止めることができるのか?

すべての謎が解き明かされるとき、この世界の隠された姿が浮かび上がる。

公式サイトより

満島ひかりさんはとても好きな俳優さんですが、久々に映画で観ました。ハスキーな声が震える独特な感じも好きですが、それ以上に、心の震えがまるごと全部伝わってくる稀有な俳優さんです。

ストーリーは、いろいろな謎が少しずつ明らかになっていくサスペンス調ではありますが、すべては説明しないので、余白の具合が心地よいです。明確な答えを出さないまま映画が終わり、後でなんとなく「あれは、こういうことだったのかも」とふと感じる時間が、本当に贅沢です。


箱男@TOHOシネマズシャンテ

TOHOシネマズシャンテ スクリーン1

好き嫌いはある:★★☆☆☆
箱男から目が離せない:★★★★★

製作発表からずっと楽しみにしていた、本作品。27年前に製作中止になった作品が改めて映画化されました。安部公房の原作は10代の頃に読みましたが、細かい内容はほとんど忘れていました。

ただ、原作のままでは時代に合わないであろう表現が肝であることは強く覚えていました。一抹の不安があったのでチケット予約前にネット検索し、インティマシー・コーディネーターが入っていることを確認してから鑑賞しました。レイティングはPG-12です。

最初から、箱男のビジュアルに目が離せません。単に段ボール箱をかぶった男なのですが、コミカルな表現が続き、前半の箱男の闘いのシーンは思わず笑ってしまいます。

後半は打って変わってスピード感が落ち着きます。後半に出て来る「葉子」という女性を演じるのは白本彩菜さんという俳優さんなのですが、カラダのラインが本当に美しいです。滑らかな弧を描くようなラインでびっくりします。

ラストは賛否あると思いますが、こうでもしなければ締められなかったのかな、という気がします。あの原作の世界観を現代の感覚に合わせて表現しようとしたことは、単純にすごいと自分は思います。

好き嫌いが分かれそうなので「誰にでも勧められる映画」ということではありませんが、これほどの覇気を感じる映画はそれほど多くないので、気になる方は是非。

         🎬🎬🎬