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【難解】アニメ映画「君を愛したひとりの僕へ」ほやほやレビュー

こんばんは。ヨタロです。

久しぶりに映画館に足を運んでみました。

特にこれを見よう、と決め打ちはせずに、映画館へ。

全く事前情報がない状態でしたが、たまたま新着の映画が目に留まりました。

「君を愛したひとりの僕へ」

どうやらツータイトル同時上映のうちの片割れの作品のようでした。どちらを先に見るかによって、物語の解釈が変わる、とか何とか。ちなみにもう一つの方のタイトルは「僕が愛したすべての君へ」。おお、紛らわしい(笑)

まあよく分からないから、先に目に入った方で上映開始が早い方を選択。


そして上映開始。


……
………

上映終了。


......え?


【ネタバレなし】見終わった直後の素直な感想


よ、よく分からずに終わってしまった(焦

唖然のする僕の後方では、大号泣の女性。僕と同じく良く分からなかったのか、そそくさと帰っていく男性。

え、いや。。泣かせに来ているのは何となくわかったけれど。
正直何も腑に落ちていない......っ!
あの女性は、今のを見てすべて理解できたというのか…っ!ま、まさか…ね。

内心、僕は大パニックでした。

いや、大筋はなんとなーくわかったんです。ですが、細々とした随所随所の設定がよく分からないまま。

よく分からない要素がそこかしこにあったおかげで、分からないの負債が雪玉のように膨らみ、エンドロールが流れる頃には、僕の頭の上に巨大な「?」がポカーンと浮かんでしまう始末。

まあでもとりあえず落ち着いて、冷静に観たものを整理していくことにします。

【超ネタバレ‼】物語の流れ(覚えている範囲で。誤解も多々あると思われる)

※説明の都合上、作中では用いられていない表現をしているところが多々あります。ご容赦ください


※以下は覚えている範囲+小説版をざっと半分ほど読んだ範囲で、物語の流れをまとめたものです。
多分に誤った解釈を含んでいる可能性がありますので、その点もご承知おきください。
また、便宜上、物語を10のエピソードに分けてそれぞれにタイトルを付けていますが、作中で使われているタイトルではありません。僕が勝手に付け直したものですので、悪しからず。

0.二人の出会い

メインキャラクターは、日高 暦(ひだか こよみ。以下「暦」)、佐藤栞(さとう しおり。以下「栞」)。

2人は血こそ繋がっていませんが、境遇を同じくする小学生(おそらく小学3年生?)。

2人とも幼くして両親の離婚を経験し、暦は父親に、栞は母親に引き取られる形で、父子家庭、母子家庭でそれぞれ育てられました。

そして、暦の父(以下、暦パパ)は「虚質科学研究所」の研究員。栞の母(栞ママ)は同研究所の局長でした。

この「虚質科学研究所」については後述します。

2人は研究に明け暮れる親を待つ間、研究所の一角にある部屋(託児所、キッズルームのようなところ)で本を読んだり、おもちゃで遊んだりしていました。

ある日暦は、離婚した母方の実家で飼われていた犬のユノが死んでしまったことを暦パパから聞かされます。

(おそらく)初めて近しいものの死を経験した暦は取り乱し、大泣きしてしまいます。

そこで暦は初めて栞と出会います。泣き続ける暦を心配する栞。事情を悟った栞は、こう暦に告げます。

死んでしまったユノに会いに行こう、と。

彼らの親が研究している内容は「並行世界パラレルワールド」に関する研究でした。

どうやらこの物語の世界設定として、パラレルワールドが存在していることは既に判明していて、いかにしてパラレルワールドに移動するか、また移動をコントロールできるか、を科学によって解明しようとしているようです。
ちなみに、パラレルワールドは無数に存在している「」であると定義されています。「泡」は個人個人の選択の数だけ存在するわけです。(暦パパは、朝ごはんに「お米と食べた世界」と「パンを食べた世界」、というようなたとえ話をしています。)
泡同士はその距離が近ければ近いほど、似た世界であり、離れれば離れるほど、まるで事情の異なる世界となっています。
その際にキーワードとして何回も登場するのが「虚質」。
様々な説明がなされますが、要は肉体(実体、実質、と換言できる?)とは別の、世界線を移動することができる、人間の構成部分、というところでしょうか。
パラレルワールドに移動することができるのは人間の「虚質」部分で、肉体はそのまま元の世界に残される、ということですね。


話を戻します。暦と栞がいる研究所の一室には、このパラレルワールドを行き来できる装置があり(この装置はあくまでプロトタイプで実用には至っていないようです。)、栞はその場所をどういう訳か知っていました。

栞は、暦をこの装置に入れ、ユノが死なない世界線に飛ばそう、と計画したわけです。

しぶしぶその提案に乗る暦。研究所の職員にバレないよう、こっそり装置のある一室に忍び込み、暦は装置の中に入ります。

そして、栞は装置を稼働させるためにコンピューターを弄り(どうやらデタラメにキーボードを触っているだけ笑)、暦は「ユノに会いたい」と強く念じます。

次の瞬間、暦はパラレルワールドへ移行。河川敷に飛ばされました。そこで暦はなんと、死んだはずのユノと再会します。(※うろ覚えではありますが、このシーンで栞の後ろ姿らしき姿がうつっていたような)

喜びも束の間、ユノを連れて母方の実家に戻ると、なんと暦の母親(以下暦ママ)が喪服姿で登場。

まさか...と思ったら、その予感が的中。おじいちゃんが亡くなってしまいました。

うわぁ。シュタインズ・ゲートの選択か...。(違う)

つまり元の世界ではユノが死に、おじいちゃんは存命。パラレルワールドではユノは生き残り、おじいちゃんは死んでしまっていたのです。

またしても悲しみにくれる暦。このときばかりはさすがに堪えたのか、お母さんに一緒に寝たいと甘えます。

次はいきなり翌朝のシーン。しかし、何か妙です。暦の傍で寝ているのは母親ではなく、おじいちゃんでした。つまり、暦は寝ている間に再びパラレルワールドに飛んでいたのです。

寝巻きで裸足のまま、庭に駆け出す暦。庭にはユノのお墓がありました。うわぁ...。

状況を悟ったのか、不意に冷静になる暦。


そして次のシーンで暦は研究所で栞と再会します。栞は言います。「戻ってこれたんだ!」
つまり、暦が寝ている間に移動した世界は、元々の世界線だったんですね。

栞は暦に対して、無謀な実験につき合わせてしまったことを謝ります。栞は、もともと自分が「栞ママが離婚しない世界線」に行きたかったこと。しかし、一人で装置を動かせないから手伝いが必要だったこと。暦がパラレルワールドに移動できたとしても帰ってくる方法までは考えていなかったこと。まあ、小3ですからそんなもんですよね(笑)

結局帰ってはこれたので、何とも思っていない暦。そして今度は暦が提案します。「栞ママが離婚しない世界線に行こう」と。いやあ、子どもの無鉄砲ぶりは怖いですね(笑)

そして、再び装置のある一室に入った二人、栞が装置に入り、まさにパラレルワールドに飛ぼうというその瞬間。

栞ママに見つかります。

こっぴどく叱られる二人(といっても話の大半はパラレルワールドに関する研究の蘊蓄だったようで(笑))。ちなみにここで暦は、栞ママが研究所の局長であることを知ります。しょんぼりとキッズルームに帰ってきた二人。

それまでずっと「おまえ」呼びをしていた暦は、栞から名前を教えてもらいます。

このときをきっかけに、日高暦と佐藤栞の交流は始まったのでした。

1.世界からの逃亡、そして別れ

以降どこへ行くにもずっと一緒の二人。仲はどんどん深まり、同じ中学に進学。
二人の関係は、親友から、次第に恋人と呼べるものへと発展していきます。お互いに意識はしているけど、まだお互いの気持ちは確かめ合えていない時期ですね。くぅぅぅっ!アオハルかよっ!(うるさい)

夏休みを迎える初夏の日。暦と下校する栞は突然思いついたように言います。

「人助けがしたい」

そして二人は、町中に繰り出し、困っている人がいないか探しますが、結局誰も困っている人はいませんでした。

少し残念がる栞。困っている人がいないことは良いことじゃないかと励ます暦。
なぜ急に栞がこんなことを言い出したかというと、
栞パパと久しぶりに会って「見返りを求めずに他人を助けられる人になれ」と言われたからだそう。純粋で愛おしいですね…

ただ、栞の「見返りを求めない」の解釈はちょっとズレていて、

「見ず知らずの他人を助けて、『名乗るほどの者ではありません』と言って立ち去ること」

なのだそう。暦には「たまに栞はすごくアホだ」とあきれられてしまいます(笑)

また、暦は栞を励ます意味で、「なら俺を助けてくれ」と言います。

それに対し、栞は自分が見た夢の話をします。いわく、年をとっても栞は暦と一緒にして、暦は先にボケてしまうのだそう。そんな暦に対して、栞は「名乗るほどの者ではありません」と声をかける。そんな夢だったと。

このシーンは一見ほほえましい日常エピソードのようですが、物語の根底にかかわる大事なエピソードだったりします。


場面は変わり、夏休み真っ最中。暦は突然、暦パパから研究所に来るよう言われます。

研究室には、栞と栞ママ、そして暦パパの4人。最初、暦パパと栞ママは研究テーマについて熱く議論していましたが、暦に水を差され、本題に突入。

言い淀む暦パパの横で、栞ママのあっさりと言い放った言葉は、衝撃的なものでした。

なんと、暦パパと、栞ママが再婚するというのです!

出たああああ!お決まりのやつ!

好意を持つ年頃の男女が、親の都合で兄弟になっちゃうやつですよ~。

なんて茶化すのはなしにして。

暦と栞は夕暮れの河川敷にたたずみます。

栞は一言、「このまま暦くんと結婚するんだと思ってた」と。

でも結婚できなくなっちゃった。切ない…。

そして暦はついに決意します。「逃げ出そう」と。

二人はいわゆる恋の逃避行のようなことをします。

一日。いや一週間。一年。十年。ずっと先まで二人で逃げ続けようと。

大人になったら家を買って、犬を一匹飼って、好きな家具をそろえて、二人で楽しく暮らすんだと。

でも夜がきて、雑木林の中でシートを広げて座りこむ中で、二人は悟ります。逃げるなんて、できっこないと。暦は一言「無理だな、これ」といいます。

二人が思い描く理想の将来像の前には、無数の障壁があることを思い知らされてしまったわけです。個人的にはこのシーンはお気に入りですね。

しかし、栞は思いつきます。この世界から逃げればいいんだと。

そう。二人が出会ったあの日のように。研究所のパラレルワールドに移動できる装置で、二人が結婚できる世界線に、二人で逃げればいいんだと。

ちょっとこのあたりでヤな予感がしてくる僕。まあ続けましょう。

二人は夜の研究所に忍び込み(本当にセキュリティがザルな研究所だこと)、装置に入ります。

二人は向かい合う形で、横になります。急なラブコメ展開にくすぐったくなってしまいますが、ここは我慢。


そして二人は、逃げ出します。二人が望む世界へ。


暦は自宅のソファで目を覚まします。隣のソファにはなんと、暦ママが。

暦はまだ意識が安定しないのか、「なんで母さんがいるの?」状態(笑)

台所には暦パパ。ようやく状況が飲めた暦は二人に言います。

「ふたりとも、離婚してないよね?」。いや聞き方(笑)


一方、栞は夜の横断歩道で目を覚まします。渡りきった歩道から、聞きなれた声が。そう。栞ママと、栞パパです。


さあ、いよいよ嫌な予感が確信に変わります。


パッと笑顔になる栞。「お母さん!お父さん!」駈け出そうとしたそのとき。栞を襲う、黒い影。

暦は装置の中で再び目を覚まします。隣には、寸刻前のまま栞が横になっています。

でも―。

栞に意識はありませんでした。

暦は、後日、暦パパと栞ママから残酷な真実を知らされます。

栞の意識が回復することはないこと。厳密には機械につながないと生命を維持できない状態。脳死状態にあること。

更に厳密にいえば、パラレルワールドで交通事故に遭った栞は、その時点で即死。栞は、事故の寸前、パラレルワールドからの帰還を試みたはずですが、間に合わなかったわけです。

虚質だけが帰る場所を失ってしまった。栞は交通事故のあった交差点から動けない体になってしまいました。

ちょっと話の前後は忘れてしまいましたが、暦はパラレルワールドからの帰還後、栞が交通事故で死亡した現場と同じ場所で、栞の霊体(?)を目撃します。栞は、いわば暦以外には見えない地縛霊のようになってしまったわけです。

零体の栞は「ごめんね。幽霊になっちゃった」と。いやあ、きつい展開です。

ただ、疑問なのは、なぜ栞(霊)が帰還後の世界で地縛霊になっているか、です。パラレルワールドで死んだのだから、パラレルワールドの交差点で地縛霊になっている、というのが自然です。自然ってなんだって感じですけど。

この疑問点は一応、後々に伏線となって回収されます。

ともかく、暦は自分の招いてしまった事態の重大さに、大いに取り乱します。

この時点で、暦の特殊な体質が明らかになっています。作中では「なんちゃら係数」とか言っていましたが(すみません忘れてしまいました)、要は、暦はパラレルワールドに飛びやすい潜在的な特性を持っている、という点です。だから、例の装置を用いなくても、あんなに頻繁にパラレルワールドに移動していたんですね。

暦は、暦パパと栞ママに懇願します。自分を実験体にしてもいいから、栞を自分たちがいる世界に呼び戻してくれ、と。

暦パパと栞ママが躊躇する中、暦は「なぜ二人は栞がいなくなって冷静でいられるんだ」と八つ当たりします。

ここでようやく栞ママも感情をあらわにして、涙します。さすがに科学者しすぎだろ、と思っていましたが、やはり栞ママも一人の母なんですね。

暦パパからの後押しもあって、

栞を呼び戻すための実験の日々が始まります。

※ちなみに、親が再婚したとしても、その子ども同士に血の繋がりがないので、子ども同士の結婚は認められるのだそう。僕、法学部ですが知りませんでした(お恥ずかしい)

つまり、暦と栞は無知が故に無用な方法をとり、取り返しのつかない状況になってしまった、ということです。ひどい鬱展開だ。

2.そしてついに

暦は暦パパの指導のもと、虚質科学の勉強にいそしみます。昼は学校、夜は勉強、深夜にはパラレルワールドへの移動実験。

このパラレルワールド移動実験の中で、暦は例の交差点で、必ず栞(零体)を目撃します。

つまりどの世界線に飛んでも、栞は死んでしまうことを意味している。いよいよシュタゲっぽくなってきました。

暦は自責の念に駆られながらも、栞(零体)に語り掛けます。

暦は日々成長していきますが、栞は死んだ日のまま、白いワンピースを着たいたいけな中学生です。

落ち込む暦に、いろいろと察しながらも無邪気に語り返す栞。近くの銅像にハトが来るんだ、なんてのんきな話をします。(これがまた伏線)


季節は流れ、暦は高校生になります。日々の猛勉強のかいもあって、その地方では有数の進学校に入学。しかも主席です。暦の栞に対する思いが垣間見えますよね。

朝昼晩と、学校で学生として過ごす以外は、栞を中心に暦の生活は成り立っていました。


そして季節の移ろいは、さらに残酷な結末をもたらします。

ある日、暦パパから暦に告げられます。

栞の心肺機能が完全に停止したこと。栞はついに真に帰らぬ人となってしまったのです。

悲しみに暮れる暦。それでもパラレルワールドでの交差点の少女は、元気づけようと声を掛けます。

そういえば、あのハトね―。」(超伏線!)

3.暦と和音の出会い

この辺の描写は分かりにくいですが、暦は高校を卒業して、大学には進級せず、研究所に就職します。

しかし、彼の見た目はひどいものでした。よれよれの趣味の悪いシャツ。無精ひげ。机の上にはビールの空き缶。(ということは一気に成人後まで時期が飛んでるんですね)

根を積めすぎた暦は、深夜までデータとにらめっこをしています。
そしてひと休憩と椅子に深く腰掛けたところで、なんとパラレルワールドに移動します。

移動先はなんと、ベッドの上。裸の女性が隣に寝ています。暦もすっぽんぽん。まさかの事後です。ここでいきなりアダルティなシーンに入ったので内心ビビりました。

目が覚めた長髪の女性は、ゆっくりと上体を起こしながら、メガネをかけつつ、暦の方を向きます。

ここで暦はパラレルワールドから帰還。疲労の末に知らない女と寝る夢(?)を見た罪悪感に苛立ちを覚えます。

疲労困憊の暦を見かねたのか、暦パパ(この時点で研究所の室長になっています)。暦に助手をつけると言います。

細かな部分は忘れましたが、海外の大学で学んできた優秀な助手であると。

名前は瀧川和音(たきがわ かずね。以下「和音」)。メガネにショートボブ。白いぴったりとしたスーツ。強そうな女です(笑)

和音の入所祝いのため、正装に着替えて暦が向かったのは、なんとカラオケ、ジョイサウンド(笑) 
どうやら和音チョイスのようです。ちょっとズレた子なのかな?

それまでは敬語だった和音が、カラオケの個室で唐突なため口に。さも暦を昔から知っているような口ぶりになります。


なんと。和音は暦と同じ高校のしかもクラスメートだったのです。

暦の生活は栞を中心に回っていましたから、もちろんクラスメートなんて眼中にありませんでした。当然、和音のことも覚えているわけがありません。

和音は堰を切ったようにまくし立てます。暦が高校で常に成績トップであったことが癪だったこと。
自分がその後、研究者になるべく大学で学んでいる最中に、大学も出ていない暦が、虚質科学に関する画期的な論文を出し、世界的に認められるに至っていたことが、更に癪に触ったこと。

とにかく、プライドの高い子なのですな(笑)

ともかく、同じ研究所の所員になった以上、同じ土俵には立ったと言い放ち、ビールを一気飲み。恐ろしい女の子です


完全にできあがった和音を介抱しながら、夜の街から帰路に着く暦。

途中、栞(霊体)がいる交差点を通ります。

当然、栞(霊体)は暦にしか見えていません。和音が先をゆくのを見届けながら、暦は栞に耳打ちします。
「また後でくるから」
「うん」

この二人は本当にいじらしいですね。早く結ばれて欲しいと念じてしまう。

しかし、その様子を目敏く見ていた和音が、驚くべき一言を放ちます。

「あれ?見えるんですか?交差点の幽霊」


なんと、和音も暦ほどしっかりとではありませんが、栞(霊体)の存在に勘づいていたのです。

和音を詰問する暦。まさか、自分以外に栞(霊体)の存在を知れる人がいるとは思いませんからね。

この共通点により、和音に心を許した暦はある秘密を和音に打ち明けることにします。

入所祝いの翌日。二日酔いに頭を痛めながらも通勤する和音。

駅前で暦と待ち合わせです。

そして暦は秘密を打ち明けます。

なんと、暦は栞をこの世界に取り戻すことを諦めていなかったのです。

しかし、栞の虚質が置き去りになって「存在」していたとしても、肉体はこの世から永遠に葬り去られています。

なんと暦は、タイムリープの研究を秘密裏に進めて、過去の栞を救おうと考えていたのです。タイムリープは実現不可とされているので、いくら国立の研究所でも(虚質科学研究所は、いつの間にか行政機関に昇格してました)、予算が降りるはずがなく。

暦は、虚質科学研究のためにおりた予算を横領し、タイムリープ研究費に充てていたんです。おいおい犯罪だよそれは...。

バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。ってとこでしょうか...。暦、なかなかイカれてきています。

さすがにドン引きの様子ですが、黙認する和音。

二人は研究者として、切磋琢磨していくようになります。

ここで暦は、以前に一瞬だけパラレルワールドに移動して見た裸体の女性が、和音であることを悟ります。あら、ヒロインが2人に(ゲス顔

でも今の暦が見ているものは、栞が帰ってくる未来、たった一つの様子。このシーンで暦がうかべる険しい表情が印象的です


4.ギネスカスケードと希望の光


そしてある日、研究所にて、和音が暦と飲むつもりなのか、ギネスビールを持ち込みます。

どうやら直前の場面から時間がいくらか経過しているらしく、研究所の規模も拡大し、研究費も増え、暦は胸を張ってタイムリープの研究に心血を注げているようです。

ギネスビールを缶から直接飲もうとする暦に対して、
和音はコップに注ぐよういいます。

コップに注がれたビールは泡を立てます。しかしここで不思議な現象が。
通常泡は上に向かって流れていきますが、このときは泡が下に沈んだのです。

ギネスカスケード。という立派な物理現象なのだそう。原理は和音が言っていましたが、正直よく理解できませんでした苦笑

ともかく、この「泡が下に沈む」という事象が、暦にある閃きをもたらします。

この物語の中で、世界は「泡」にたとえられています。泡は浮力をもって、水中から水面に向かって上昇する。この上昇する「向き」がすなわち「時間」である。だから、上が未来、下が過去、ということですね。

暦の頭の中では、ギネスカスケードという現象と、タイムリープが結びついた。つまり泡を過去の状態に引き戻すアイデアの糸口を見つけた、というような感じでしょうか。

正直に言うと、この場面が一番理解に苦しみました。上映中、このあたりから僕は作品に感情移入できなくなっていきます苦笑

ともかく、暦は和音の意図せぬ助力によって、タイムリープの方法を見出します。
しかし、問題点もあるよう。理屈はこれまた良く分かりませんが、過去に戻ることによって、戻った人間はそれまでの記憶を失ってしまうそう。
ですが、暦はそれでも問題ないようです。

暦が過去に戻って栞を救うということ。それは暦が栞と出会わなかった世界線を目指すということ、なのだそうです。確かに、栞が交差点の幽霊になってしまった結末を、順々にさかのぼっていくと、暦と栞が研究所内のキッズスペースで出会ってしまったことが原因である、とは言えそうです。

なんだか、もっとやり方があるように思えてしまいますが。
でも他のタイムリープものの設定と、この物語の設定で明らかに違うのは、未来の暦の記憶を保持したまま、過去の時代に干渉することはできない、という点ですね。おそらく、厳密にはタイムリープではなく(暦一人が時間という不可逆な法則から外れて過去に行くのではない)、暦が生きる世界(「泡」)そのものを過去に巻き戻す(「泡」を下に向かわせる)ということなんでしょう。

でもそれは、動画を巻き戻すように再び再生されてしまえば、つまりタイプリープ後の世界が時間に沿って進めば、
もとの結末と同じ結末を迎えることになるではないでしょうか…?

ともかく、ここは一度深堀るのを止めて、

暦が最愛の人を救うには、最愛の人と出会わなかったことにするしかない、ということらしいです。いまいち呑み込めませんが、そうなっています。

5.怒涛のパラレルシフト(映画上映当時は大混乱、後ほど補完)

その後場面は暦の少年時代へと移ります。ここからは怒涛のパラレルシフトが起こるので、この物語を理解するうえで最難関シーンと言えます。

因みに、上映中の僕の頭は混乱を極めています(笑)。

ですが、ここでは敢えて上映後に自分なりに整理した状態で記述します。

B世界線(便宜上、「B世界線」とタイトル付けします)

そして子どもの暦が三叉路のようなところで、2択を迫られる意味ありげなシーンに突入。片方の道は暦パパ、もう片方には暦ママがいます。子どもの暦は暦ママの手を取ります。

つまりこれは暦が、ギネスカスケードから着想を得たタイムリープによって、過去の世界に戻り、暦パパに引き取られるのではなく、暦ママ(とおじいちゃん)に引き取られる人生を選択をした、ということなのでしょう。

(このシーンに突入してから、若干ですが作画が変わったような違和感を覚えました。多分、僕の勘違いですが、もしそうだとすれば、直前の場面(大人の暦と和音が研究所でタイムリープの着想を得る場面)と、世界線が違うことを印象付けているのではないでしょうか。)

暦は、暦ママとおじいちゃんの家で暮らしています。

暦は庭先で、エアガンを使って遊んでいるご様子。庭の池に浮かぶ葉っぱに穴をあけたり、愛犬のユノに銃口を向けたり。なんだか、暦パパに引き取られた暦より、少し幼稚に見えますね。

ユノに銃口を向けて、興奮気味に小声で一言「バーン」。とんでもないクソガキです(笑)

その様子を見かねて、エアガンを取り上げたのはおじいちゃん。
「暦にはまだ早い」といいそのまま持って行ってしまいます。まあごもっともな指導ですよね。

どうやらこのエアガンは暦パパからもらったものらしく(たしか誕生日プレゼント、ということだったと思います)、暦は取り上げられたことが納得いかないようです。

おじいちゃんも言っていますが、このエアガンは対象年齢が10歳以上だったようで、8歳(と思われる)暦には不相応だったわけです。この世界線の暦パパは、あまり子どもに与えるべきものが分かっていないようですね…。

暦は機嫌を損ね、「おじいちゃんとはもう一生口をきかないっ」と完全ふてくされモード。出ました。これくらいの年齢は「絶対」とか「一生」とか、大人がギョッとするような重い言葉を平気で使いますよね苦笑

暦が言い放った言葉は、不幸にも現実のものになります。おじいちゃんはその日のうちに急逝してしまったのです。

つまり、おじいちゃんが死んで、ユノは生きている世界線です

A世界線(便宜上、「A世界線」とタイトル付けします)

そして場面は変わり、研究所のパラレルワールド移動装置の中で目を覚ます暦。状況がつかめていない暦は「ねえ、ここ開けてくれる?」と内からガラスをたたきます。外にいる少女に向かって助けを求めているのです。そう、栞です。栞はそそくさとやってきて、装置のガラス戸を開けると、暦には目もくれず部屋から出て行ってしまいます。暦は、誰だあの少女?という顔。

研究所から暦は暦ママに連絡を入れて、迎えに来てもらいます。
ここで暦ママは暦が自分の連絡先を知っていることを不思議に思っています。暦からすれば、同居している母親の電話番号を覚えているのは、何も不思議なことではありません。

そしてなぜか、家に帰るとおじいちゃんが生きています。え?

そしてユノは庭先に埋められている。

暦は、その夜、おじいちゃんと寝ることにします。おじいちゃんにひどい言葉をかけたことを反省する暦。でもおじいちゃんはそんな記憶はありません。「喧嘩したかもしれないけれど、暦が「嫌いになったわけではないよ」と。「うん、僕もおじいちゃん大好きだよ」。涙を流す暦。

ここでまた世界線が移動していることが分かります。そう。ユノが死んで、おじいちゃんが生きている世界線です。
ちなみに上映中僕の頭の中は大パニックです(笑)

B世界線
再び場面は変わり、暦は暦ママと一緒にベッドで寝ています。あれ、おじいちゃんは?
あんなことがあった後だから、一緒に寝るのは恥ずかしいことじゃないのよ、と慰める暦ママ。
そして今日から忙しくなると身支度を整えるためにベッドを離れる暦ママ。忙しくなる。そう。おじいちゃんが亡くなった後の遺品整理のことでしょう。ユノが生きていて、おじいちゃんが死んでいる世界線です

遺品整理をしている中、暦は戸棚からおじいちゃんが募集していたエアガンと、一枚のメッセージカードを見つけます。「いきものに打っちゃだめだよ」と。おじいちゃんは最期まで孫思いの優しいおじいちゃんでした。

もう上映中の僕の脳内はオーバーヒートしています。

(補足)
ここで整理しましょう。僕が混乱した原因は、1つ大事な情報が欠落していたからでした。映画を見たのち、理解が追い付かなかったので、たまらず小説版を購入し、情報を補完しました。

つまり、パラレルワールドへの移動(パラレルシフト)の仕組みです。
暦(「A暦」とします)がA世界線からB世界線に移動している間、B世界線にもともといる暦(「B暦」とします)はどうなっているのでしょうか。
ここが僕は分かっていませんでした。
B暦は、A世界線に行っているのです。すなわち、A暦とB暦は、入れ替わっている、ということです
そうすると、話に合点がいきます。
すなわち物語冒頭で栞にそそのかされたのはA暦ということです。

【A世界線】ユノは死んでいる、暦は暦パパに引き取られている
【B世界線】おじいちゃんは死んでいる、暦は暦ママに引き取られている

物語冒頭で、A暦は、A世界線→B世界線→A世界線、と移動しています。
だから、暦ママと寝る→朝起きたらおじいちゃんと寝ている、という場面展開が成り立つわけです

一方、先ほどまでの怒涛のパラレルシフトは、B暦視点ということになります。すなわち、B暦は、B世界線→A世界線→B世界線、と移動しています。
だから、おじいちゃんと寝る→朝起きたら暦ママと寝ている、という場面展開が成り立つわけです。ついでに言うと、B暦は栞と出会っていませんから、A世界線に一度とんだとき、栞を見ても誰だか分かりません。このまるで別人のような暦を見て、栞は怖くなったから、そそくさと装置のある部屋を出ていった、ということになるわけです。

6.B暦の半生


そして、世界線はB固定のまま進行していきます。すなわちB暦視点で時間が経過していくのです。

暦は暦ママのもとで成長していきます。もちろん栞とは出会いません(厳密にはパラレルシフトでA世界線の栞には会っていますが)。

中学に進学し、なんと高校はA世界線と同様、その地方有数の進学校に入学します。しかし、A世界線と若干異なるのは、高校入学式の、生徒総代が瀧川和音であること。
この世界線では、暦はA暦ほど猛勉強はしてませんからね。

何事もなく流れる時間の中で、突然転機が訪れます。

和音が、暦とコンタクトをとるのです
このシーン挿入歌がガンガンに流れて、声なしでシーンが次々と流れていくので、何が行われているか推測しなければいけません。

どうやら、和音は暦と知り合って、勉強を教えてもらっているようです。生徒総代の和音でも、暦に教えを乞うくらい、暦は地頭が良いんですね。

次第に勉強グループの輪は広がり、放課後、図書館などで暦、和音を中心に数人が集まるようになります。

カラオケルームのシーンが出てきます。勉強グルの面々と和音、暦でカラオケに来ているんですね。カラオケルームから焦ったように出ていく勉強グルのメンツたち。ルームの中には和音と暦の二人きり。なんと、和音が暦に告白をしているようです!どんな告白だったのか分かりませんが、その後、ヘタヘタになった暦がルームから出てきて、廊下にへたばります。いや、マジでどんな告白を受けたんだよ(笑)

カラオケシーンの前後どちらか忘れましたが、和音がノートに♡をいくつか書いて、ことあるごとに✕で消していましたね。あれは、暦に和音がアタックした回数、ということでしょうか。

いかんせん声が入っていないので、確かなことは分かりません。

ハッひょっとして、このB世界線の詳細が、「僕が愛したすべての君へ」で明らかになるということでしょうか??これ当たってたらすごい。

その後、暦と和音は研究所の所員になって働いています。A世界線よりも周りの所員が多いので、ひょっとして高校の勉強グルの面々が一緒に入所しているのでしょうか?

そして時は流れて、暦と和音は結婚します。和音が純白のウェディングドレスに身を包んで笑いかける姿は、さすがに尊過ぎました。最高。

7.A暦の真意と和音の覚悟


そしてシーンは、例のギネスカスケードから着想を得たA暦と和音がいるところに戻ってきます。

A暦は、「泡」が下るようにする、すなわち過去に世界を巻き戻すことを計画するとともに、もう一つのことを考えていました。

さあ、ここで伏線回収フェスティバルです。

交差点の幽霊こと、栞(霊体)ですが、暦は最初、どの世界線でも栞が交通事故で死んでしまうからこそ、どの世界線の交差点にも栞がいると考えていました。僕もそう思っていました。

しかし、真実は違ったのです。栞(霊体)は、A暦と一緒に世界線をパラレルシフトをしていたんです。ずっとA暦に付いて行っていたのです。

なぜ分かるか。パラレルワールドごとに栞(霊体)がいるとすれば、それぞれが違う記憶を有してるはずです。

しかし、とある世界線で暦に「ハト」の話をした栞(霊体)は、

また別の世界線で「そういえば、あのハトね―。」と暦に語り掛けています。「そういえば」ということは前話した内容の続きであることを、栞(霊体)が認識してるということ。

暦が出会った栞(霊体)はすべて、同じ栞(霊体)だったんです。

これはどういうことか。ここら辺の説明が「過干渉うんたら」など謎用語が出てきて、また良く分かりませんでしたが、要は、暦と栞の間には特別な引力が働いていて、暦がパラレルシフトをする際は、どうしても栞を連れて行ってしまう、ということのようです

この特性を利用して、暦はもう一つの計画を考えました。

過去にタイムリープする際に、栞(霊体)も連れていく。過去に連れていくということは、現在のA世界線とは遠く離れた世界線につれていくということです。最初にお話しした通り、世界同士(「泡」同士)が遠ければ遠いほど、互いの事情が大きく異なっている、ということです。

そうすると、暦と栞を強く結びつける引力は弱まり、暦は栞を引き離すことができる。いよいよ、暦が全く栞に出会わない世界が誕生するわけです
分かったような分からないような。

しかし、和音はそこで遮ります。A暦がタイムリープすることで、A暦は帰ってこれなくなってしまいます。言ってしまえば、脳死状態になった栞と同じ状態になるということです。

和音は暦に尋ねます。「残された人のことはどうでもいいの?」と。

暦は即答します。「栞のためだったら周りはどうでもいい」と。

和音は激昂して、テーブル越しにいる暦にとびかかり、押し倒します。

そりゃそうです。この時点で、和音はB世界線の和音と同様、暦に恋をしていたんですから。(正直、この辺の和音の心情は作中の表現だけでは分かりにくいですが、まあそう解釈するしかありません)

そして、暦と和音は一緒に過ごし続けます。結婚はしたのでしょうか?
上映中、ただでさえ世界線理解がぐちゃぐちゃだった僕は、てっきり結婚していたものだと思っていましたが、おそらく結婚まではしていないのでしょうね。

暦からすれば一番頼りになる助手として、和音からすれば愛する一人の男性として、一緒に過ごすことを選択したのでしょう。

自分を真に愛しているわけでもない暦と、それでも結ばれたい和音の心の強さは、脱帽ものです…。

そのまま、お互いが老人になるまで歳月は流れます。

8.暦の計画は最終段階へ

そして、暦はちゃぶ台を挟んで、和音とお茶をすすります。
暦は自身の余命が、その日であと一年であることを和音に伝えます。

このころには、医療が発展しているようですね。暦も和音も、ハイテクな腕時計型のウェアラブル端末を身に付けています。ここがまた表現が足りないようで分かりにくいですが、虚質科学と医学が結びついたことで飛躍的に世界は進歩を遂げているようです。

暦は、和音に計画が最終段階に入ることを告げます。そう。暦は自身の人生の終わり際まで、タイムリープ計画をとっておいたのです。

それは、和音を思ってのことなのか。暦自身も和音に特別な感情を抱くようになったからなのか。

和音は悲しそうに「私は人殺しになるのね」と言います。暦はタイムリープをすることで、脳死状態に等しい状態になります。いくら余命いくばくであっても、やはり立派な「殺人」になってしまいます。

常人の感覚からすれば、暦の計画は狂気じみています。いや、間違いなく本物の狂気です。でもそれは栞を心から愛する心の裏返し、ということでもあります。

和音は言います。「そこまで誰かを本気で愛せるのは羨ましいわ」と。

研究所に行く前に、暦は例の交差点へ向かいます。

栞(霊体)は死んだときのまま、白いワンピースを着たかわいらしい少女のままです。

暦は、今日でお別れであることを栞(霊体)に告げます。

もちろん、栞(霊体)は拒みます。とても心がえぐられるシーンです。

そんな栞(霊体)に対して、暦はある「約束」を持ち掛けます。

自分たちのタイムリープが成功したら、そのままお互いは出会わずにA世界線の今日と同じ時間まで過ごすこと。つまり60年間以上を過ごすということです。そして、今日この時点から1時間後に「ここ」、つまり交差点で再会しよう、と持ち掛けるのです。

表現が難しいですが、タイムリープ先の世界の60数年と1時間後に、交差点で再会する、という約束です。もちろん暦は、タイムリープ先の60数年と1時間後に本当に栞に出会えるなんて思っていません。別れ際に彼が考えた夢物語のようなものなのでしょう。

栞(霊体)は悲しみながらも、納得します。栞(霊体)からすれば、すでに60年以上交差点に拘束されているのに、もう一度人生をやり直さなければいけない、しかも暦に出会わずに60年以上生きなければいけないのですから、もう残酷も残酷、悲しくなって当然です。

でも、暦が自分を思ってのことだと理解しています。自分たちが出会ってしまっては、お互いが幸せになれない。

最愛の人の幸せを願えば、最愛の人と別れなければならないのです。

栞(霊体)と別れ、暦は和音とともに研究所に向かい、装置に入ります。

この世界、つまりA世界線の和音と暦は、今生の別れ、ということになります。
和音は暦に言います。「何か言い残すことはある?」と。
暦は「きれいだな」といいます。でもそれは和音を言い表した言葉ではありませんでした。和音の小指に光るアクアマリンの指輪を指していたのです。

和音は言います。「いいでしょう。お揃いなの」(←この発言が一番謎です。どういう意味でしょうか)

ともかく、最後の最後まで、暦にとって和音は特別な人にはならなかった、ということを暗に示していますよね。信頼できる優秀な助手であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。せつない…。

そして、暦は過去へと旅を始めます。

「泡」は下降を始めます。

9.エンドロール、そして


暦と栞(霊体)が下降していく様子が流れる中、エンドロールが流れます。

シルエットだけ映った二人は、お互いに抱き合う形で、ゆっくりと回転しながら、下へ下へ、過去へと下降を続けます。


そして、


暦は目を覚まします。カプセルのような容器の中で寝ているところを見ると、A世界線同様、医療が発達した世界であることが分かります。自分の腕を見ると、しわしわのシミだらけ。腕時計型のウェアラブル端末を身に付けています。そして、端末は一件の予定があることを通知します

傍らには和音の姿。当然、おばあちゃんの姿です。ガーデニングをする格好ですね。和音おばあちゃんかわいい(笑)

この時点で、あるいはもっと早い時点で分かるかもしれませんが、

この世界線は、B世界線です。

つまり「5.怒涛のパラレルシフト」「6.B暦の半生」は、この「9.エンドロール、そして」に直接つながるってことです。

(補足)
分かりやすく順番でまとめると、

【A世界線】0→1→2→3→4→7→8
【B世界線】(A世界線の8から下降→)5→6→9

ってことです。1と5の間で、A,B暦が入れ替わったりしていますが、おおむね2世界は並行し、独立して進行しています。

この辺の場面転換があまりにもトリッキーですね。上映中はさっぱり分かりませんでした。帰りの電車の中でうんうん唸りながら考えたのと、その日のうちに即購入した小説版を半分ほど読んで、ようやく理解したものを今まとめています(笑)

おそらくまだ誤解している部分が多々あると思うので、改めて訂正できたらと思います。

さて、端末に入った通知に全く記憶がない暦(B暦ですね)。でも直観か第六感か、気になって仕方がありません。

和音は行くことを薦めます。

通知画面には、この後、近くの交差点で人と待ち合わせる予定が記されているのでした。

モーター式の車いすでそそくさと出かける暦。B世界線では、もう足腰立たないくらいヨボヨボなんですね。

外は日が差しています。暦が帽子をかぶっていないことに気が付いた和音は、玄関先から、部屋に戻って暦の帽子を持ってこようとします。

しかし、暦は「それでいいよ」と。

和音が被っているガーデニング用の青いかわいらしい帽子を指さします。

車いすのヨボヨボの男性がかわいらしい帽子を被って町を行くさまは、なかなか滑稽です(笑)

ですが、引き寄せられるように、暦は誰彼構わず、目的地の交差点へと向かいます。

そして、幼い姿の暦と栞が交差点で抱き合うシーンへ移ります。

二人の像はすうっとフェードアウトし、

交差点の渡りきる当たり、そう、あの交差点の幽霊がいたあたりに画面が移動します。

そして、

姿は映らず、

二人の老人の声だけが交差点付近に響きます。

「あのー、失礼ですがお名前はなんと」と暦。

そこにいた老婆は、得意げに答えます。

名乗るほどの者ではありません」と。


【微ネタバレ】一晩寝かせた感想 


①あまりに惜しい作品

正直に言えば、とても題材は良い分、とても惜しい作品だと思いました。

思うに、100分弱の映画にするよりも、1クールのアニメにした方が、

世間を騒がす超大作になったのではないかと。

なぜそう思うのか。

この作品。圧倒的に説明不足な部分が多いんです。

私が説明不足だと感じる部分を思いつく限り列挙しましょう。


●パラレルシフトの説明が足りない。 


パラレルシフトすることで、シフト先の自分と入れ替わる

という物語を理解する上で必須の法則が全然説明されていません。

ちなみに小説版だと、最初に暦が栞にそそのかされてユノが生き残る世界線に飛んだ際に、暦視点だけでなく、残された栞視点のエピソードが描かれていました。


栞視点では、一人称や雰囲気が若干異なる暦が目を覚まして自分に話しかけたことで、栞は怖くなって逃げ出してしまった、となっています。


当時の暦視点と栞視点がほぼ同時期に描写されている事で、「あ、暦入れ替わったな」と勘づきます。


たしかに劇中にもその描写はありましたが、シーンの挿入箇所が少々意地悪で、

パラレルシフトした暦とシフト先の世界の暦が入れ替わっているとは、なかなか気がつけません。

一般に平行世界とか、多次元宇宙とか、そういうものが絡む物語では、

主人公がパラレルシフトした先に、パラレルワールドに暮らす自分も同時に存在している、というパターンが多いです。

パラレルワールドの自分にバレないように行動をするスリリングなシュチュエーションが、作品に没入感を産んだりするものですが、


この作品に限ってはその典型例が適用されません。だからこそ先入観を持って見ている人を誤解させないためにも、この設定は入念に説明、ないし示唆的な描写がなされるべきでしょう。


僕は物語を思い出し思い出し整理して、小説版をざっと半分ほど読んだことで、どうにか合点がいきました。
事前知識なしで、上映中リアルタイムにこのパラレルシフトの仕組みに気がつけた人には脱帽します。


●和音の心情描写が足りない

物語に登場したのは途中からですが、もはやこの物語のメインキャラクターと言えるはずの和音の心情を表すシーンがあまりにも少なく、

暦に対して抱く思いや、心境の変化が、非常に分かりにくいです。

ひょっとして、「僕が愛した全ての君へ」で深掘りされるってことなんでしょうか?

とすれば、ここは案外批判しきれない部分かもしれませんね。

●やっぱり足りない虚質科学の説明

この物語の世界観を支える屋台骨ともいえる、虚質科学。

もちろん、フィクションですから、本物の学問体系のように隅から隅まで完璧である必要はもちろんありませんが、

それでもツッコミどころが多すぎる。結局、虚質って何なんでしょう。

小説版を読み進めることで、虚質とは何かについて、おおまかに理解出来ましたが、それでもやはり腑に落ちない部分が多いです。

映画では尚更。大半の理屈が理解できないままに暦がギネスカスケードを手がかりにタイムリープを思いつく辺りでさらに話が拗れ、


物語最大の大仕掛けとも言える最後のシーンに集中力と気力を残しておくことができません。


結果、感動させたいポイントは何となく分かったけど、そこに至る設定や理屈がよく分からなくて、何となく誤魔化し誤魔化し話を進められている気がする、という気持ちになり、

不完全燃焼のまま終劇。

伝えたいテーマ(いうなれば「無償の愛」ですかね)に対して用意した舞台装置があまりにも複雑かつ壮大すぎた、というのがこの映画の悪い部分の核心でしょう。


●メインキャラクターたちがフォーカスされすぎるあまり、時代背景が見えてこない


メインキャラクターたちの生きる世界(この場合は「泡」の世界ではなくて、キャラクターたちが生きる生活域、と言ったらいいか)に焦点が絞られすぎていて、何となく時代背景のようなものがぼやけてしまっています。


たとえば、小説版なら、栞ママら虚質科学の研究者たちによって、平行世界の可能性が次々と明らかになり、世界中にインパクトをもたらしていることが描写されています。


平行世界の肯定が、世の中で起きる人の些細な勘違いや記憶違いといった不可解な現象の説明を可能にしてくれるようになったわけです。

メタい言い方にはなってしまいますが、並行世界の自分と意図せず入れ替わっていることが原因で、僕らの日常的な勘違いや記憶違いが起きる、という発想はとても独創的で面白いですよね。

平行世界を理解し、操作できる時代がくれば、どういう変化をもたらすのか。人々の価値観はどう変わるのか。

映画では、言ってしまえば研究所の所員までが、暦たちの周りの「世界」であり、何となくどういう時代なのかが見えてきません。


科学ばかりが発展している、現代とあまり価値観の変わらない社会、という妙に違和感のある背景しか見えてきません。


それでどういう問題があるかと言うと、彼らの生きる世界に厚みがないように感じてしまうわけです。どうしたって、研究所の中で起きている実験に過ぎない感が否めない。

だから、暦が最終的に行ったタイムリープも要は「世界改変」なのに、何だか小規模に感じてしまう。


舞台装置が大掛かりすぎる弊害がここにも出ているように感じます。


まあでもそれでも良い、という人もいるでしょうからここは好き好きかと思います。


②暦のCV、どうにかならなかったのか

日高暦役の声優さんが、正直あまり良くなかった。

暦が感情を露わにして怒ったり泣いたりする場面の棒読みっぷりが、頭を抱えたくなるレベルでした...。


こちらの感情も大きく揺さぶられる場面のはずなのに、急にあのセリフ回しで冷めてしまいます。

③回収できていない伏線が

私が見落としているだけ、という可能性も大いにありますから、その場合にはどうか大目に見てください。

更にこの未回収と思われる部分は、すべて和音関連のようです。これは「僕が愛したすべての君へ」で明かされるということでしょうか。

●なぜ、和音にも栞(霊体)が見えたのか?
劇中、和音にも、交差点の幽霊こと栞(霊体)がはっきりではないものの見えています。この理屈は何なんでしょう。

ひょっとしたら言及されていたのかもしれませんが、良く分からずじまいでした。

●A世界線の和音が見せた、アクアマリンの指輪が「お揃い」であるとは?
A暦がB世界線へと下降する直前、和音はアクアマリンの指輪を暦に見せています。そしてそれが「お揃い」であると発言しています。

何と、あるいは、誰と「お揃い」だったのでしょう?この発言だけが変に浮いています。何か、「僕が愛したすべての君へ」に繋がる重大なヒントなのでしょうか?

●B世界線で、なぜ和音は暦とコンタクトをとったのか?

B世界線の和音は、高校に首席で合格し、入学式では生徒総代を任されています。A世界線とは異なり、和音は暦に対してコンプレックスを抱きようがないのです。つまり、暦と接触する理由がない。

いやもちろん、それ以外の要因で(たとえば暦の容姿や性格)暦に惹かれたなら話は別ですが。

【考察】これら未回収の伏線について、数行程度で考察をしておきましょう。おそらく「僕が愛したすべての君へ」で和音がクローズアップされることは間違いないでしょう。

その中で、どういった伏線回収がされるのか。私が推す説として、

和音も「暦と同じくパラレルシフトしやすい体質、あるいは「和音も暦にバレないかたちで、A世界線→B世界線への下降をしている、があります。

前者は、和音にも栞が見えたことの説明が付きそうです。暦と同体質の人間が、栞を見ることができる、みたいな。
また、後者は、B世界線の和音が暦にコンタクトをとれた理由が説明できます。B世界線の和音が、何らかの理由でA世界線の記憶をとどめた和音だとすれば。当然和音は暦と知り合いになろうとするでしょうし、

そしてなによりB世界線の最後のシーンで、暦に対して栞が待つ交差点に行くように薦めた理由に合点がいきます。

どちらかというと後者の説を推したいです。

さあ、当たるでしょうか?それとも僕のとんだ記憶違い??


④でも、もちろん良かった点も

ここまで否定的なことばかり言っていますが、もちろんお気に入りのシーンもあります!

たくさんありますが、敢えて3つに絞ってお伝えしましょう。内2つは上述の「物語の流れ」でも軽く言及しています。

①暦と栞の逃避行

二人が身の丈に合わない逃避行をしようとするシーンですね。自分たちだけが幸せになれる「将来」を妄想してきたに胸を膨らませながら、がむしゃらにいろんなことをする。町中を自転車で乗り回したり、家具屋さんで盛り上がったり(このシーンの栞が犯罪級に可愛い)。

でも二人は、心の奥底では、この逃避行が成功しないことをわかっているんでしょうね。

最終的には夜になって、暦が一言「無理だな、これ」。

「大人になったらああしたい」「大人になったらこうできる」そんな考えはいくらでも浮かぶのに。大人になるまで、どうやって生きればいいのか。

今の自分たちと、理想の将来像との、途方もない距離感を肌で実感した二人の姿が、あまりにも切なくて、愛おしく感じます。

②暦とおじいちゃんの関係

もうこの二人だけで別の作品が作れそうだなと思いました。
暦は、生涯をかけられるほど大切な人(もちろん、栞のことです)との死別を経験しましたが、

実はそれより前に、おじいちゃんとの死別を経験してるんですよね(まあ、並行世界の出来事ではありますけど)。

暦の心には深く刻まれた出来事のはずです。

おじいちゃんも、孫思いの良い人なんです。本当に。
日頃は優しく、でも必要な時には厳しく。B世界線のおじいちゃんは特にそうでしたね。

③そして、なんといっても「名乗るほどの者ではありません」

これですよ。さすがに衝撃が走りました。まさか序盤の和やかなシーンが、こんな形で最後の特大級の伏線になってくるとは。

映画が終了した時点で、もう少し話全体が理解できていれば、もっと感動できただろうに。そこがとにかく惜しいです。いかんせん話の理解できていない部分が気になり過ぎて、最後のシーンに集中できなかったもんですから。いやあ、本当にもったいない。


総評

では、「君を愛したひとりの僕へ」について長々と話してきましたが、この作品に点数をつけるとすれば、という話をしてこの記事を〆ましょう。

ずばり100点満点中、60点!

感動     ★★★☆☆
シーンの構成 ★★☆☆☆
世界観    ★★☆☆☆
作画     ★★☆☆☆
キャラの魅力 ★★★★☆
声優の質   ★★☆☆☆

本音は50点ですが、もう片方の「僕が愛したすべての君へ」への期待値から10点加算しています。

やはり、全体として言えるのは、説明不足感。

ここに尽きると思います。あと、暦のCVね…。

繰り返しにはなりますが、

この題材なら、絶対にワンクールのアニメにするべきだった

心からそう思います。

最後に

これらのレビューには、多分に僕の勘違いや記憶違いが含まれている可能性があります。

小説版をちゃんと読んで(また可能なら「君を愛したひとりの僕へ」を再度観て)、改めて本記事を加筆訂正する予定ですので、ご容赦ください。

でもまあ、勘違いも仕方ありませんよね。

多分それは、無意識に僕が上映中にパラレルシフトを起こしてたことが原因でしょうから(笑)


ヨタロ


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