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【読書感想】ゴーストハント―旧校舎怪談
読むは怪異な季節が来たり。
学校とは、実はそこいらの「歴史的建造物」よりも歴史がある場合があったり、入れ替わりの学び舎で学んだ子達の思念が渦巻いていたりする。
だからこそで、昔から「学校の怪談」というのは有名な怪談話のジャンルであり、堅苦しい教育現場での唯一のエンターテイメントであったとも言える。
カードキャプターさくらに夢中だった小学生時代。
「ちゃお」と張り合いながら首位をかけていた(と勝手に思っている)「なかよし」の片隅で、漫画版「ゴーストハント」は連載していた。
当時はまだ小野不由美の作品には全く興味がなかったうえ、絵柄があまり好みではなかったので、ぱらぱらと飛ばし読みする程度の認識でしかなかった。
そしてそれから四半世紀近く経ち、カドフェスの勢いにのまれ(単にホラーが読みたかっただけ)、改訂版のゴーストハントを手にしていた。
第1巻は「旧校舎怪談」という副題がついているだけあり、とある学校のいわくつき旧校舎の話である。
その高校に通う麻衣という女子高生が以降の巻でのヒロインとなっていく。
彼女が通う中高一貫校には取り壊そうとすると事故が起きる、いわくつきの旧校舎が体育館脇にひっそりと佇んでいる。体育館を拡張したい校長は、この「怪異」をどうにかしてほしいと、何人かの霊能力者や研究者を雇う。その中に、後々麻衣がバイトをする事になる「渋谷サイキックリサーチ」のナルシスト・ナルこと渋谷氏がいる。
物語の随所には、生徒が好きそうな学校にまつわる怪談話や、「友人の友人」や「友達のそのまた友達のおじさん」から聞いた怪談話が登場する。
きっと多くの人が、通っていた学校の怪談話を耳にしたり、聞きだしたりしたことがあるのではないだろうか。
かくいうわたし自身も、小学校と中学校時代に、怪談話を収集しまくっていた。残念ながら小学校にはその学校特有の怪談はなかったし、中学時代も「郷土資料室から体育館への渡り廊下の空気がヤバイらしい」という程度の話しか聞いたことはない。
義務教育時代は大した怪談話がなかったにも関わらず、まさかの大学生になってから、その大学の様々な怪談話を聞くことになった。
ま、それもそのはず。
校舎内の脇にひっそりと井戸があったり、周りは森に囲まれていたり、なんなら昔は死体安置所としてこの土地は使われていた、などの噂のある大学。さらには、ちょっと足を延ばしていけば東北随一の心霊スポット「男鹿プリンスホテル」もあるような県である。
ちょっぴり肌寒い夏の夜に、図書館から学内のアパートへ帰るときの、妙なひんやり感は未だに覚えている。
そんなことを思い出すような内容だったわけなのだけれど、十二国記や鬼屍、残穢などを読んできた身としては、文体がなかなかに砕けていたので面食らった。
物語は、麻衣の一人称で進んでいく。
高校生なのでそんなに難しい言葉は使わないし、意味深な言い回しもしない。それでも、キャッキャしていた文体の合間に、ひやりとする冷静な描写を読むと、やはり小野不由美の片鱗が輝くのである。
そしてさらに興味深かったのは、多発する現象を科学的に突き詰めてナルが説明していくところである。
伝承や奇譚をベースにその大本を突き詰めていくスタイルとは異なり、「怪異現象」と言われているものを科学的に突き詰め、ある程度解明できてしまうところが新鮮だった。そんな展開の仕方、小野先生、するんですね・・・。知りませんでしたよ・・・。
そんなわけで、読んでいくと、そういう糸口で物語をつなぎ合わせていくこともできるのか!とちょっと驚いた内容だった。
この驚きはたぶん、小野先生の「ホラー」と呼ばれる有名著書の印象が大きいからという事もある。
それでも、読後感は「へー、なるほど、そんなこともあるのね」という感じで悪くはないので、ぞくっとしてみたい方にはお勧め。
というわけで、次、第2巻、いってみよー!
おしまい
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