恋の葬式

鈍い星屑が目の奥で点滅する。
君の名前を思い出せない1日が、もう何度も訪れて、恋も死ぬのだと思った。
失恋の時に泣かなかったから、恋のお葬式ができなかったのかと少し寂しくなる。
花を供えることも出来ず、偲ぶことも出来ず、怒ることも出来ず、ただ風化してゆく恋は果たして恋だったのだろうかと思う。
ガラスに反射した顔はただの湖だった。私は何者でも無いことにひどく安心する。恋がわからないことが少し許された気になって、キツく握りしめた太陽に手を振った。

恋をしたいと思う時、その先に私の恋人は不在で、恋をしたいと頬を赤らめる少女の私だけが存在する。恋をすることは酷く簡単で、映画のような胸を焦がすような熱も、冷房の効いた部屋で読んだ物語で知った太腿を抉るような痛みもなく、それが酷く私を寂しくさせる。海が見たくなるような恋がしたいだけだった。

君が幸せでいて欲しいという呪いは、たぶん本物で。天国でも地獄でも無い、2人だけの部屋でただ、私を待ち続けていて欲しい。

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