傷んだバナナを買った訳
きっと翌朝バナナを食べたくなる、という
予感がした。
だからコンビニに入って、1本だけバナナを手にとった。
水など必要なモノを手に取りレジへ行こうとしたとき
見つけてしまったのだ。
さきほどとは違う一角に、違う種類のバナナ。
すでに手に持っているのは、きれいなバナナ。
いま見つけたバナナは若干の痛みがあるバナナ。
だけど、私はいままさに見つけた
その傷んだバナナを買うことにしたのだ。
自分でも秒速で心が動いたのがわかった。
なぜか?
それはそこに私をとらえて離さない文字が
あったからだ。
エクアドルで日本人が作った
というフレーズにすっかりやられてしまった。
わぁ、遠いエクアドルで、日本人が作ったバナナなの?
それは買わなくちゃ!
という気持ちになるから不思議だ。
正直、その時点では、エクアドルって
どのあたりにあるのかわからなかった。
感覚的に遠い異国で、ということはよくわかる。
※調べました。ここです
私の心をとらえたのは、わずか8文字。
エクアドル + 日本人 =8文字
応援しなきゃという気持ちになり、
バナナの背景にあるストーリーを買ったような
そんな気分になった。
買い物なんて本当にそんなもん
なんだろうと思う。
きれいなバナナを買わず、
傷んでいたけれど、
会ったこともない田辺農園さんに思いをはせ、
いまいちエクアドルがどこにあるかも
よくわからないけれど、買った。
その行動はよく、
人は感情でモノを買い、理性で納得させる
なんて言われるけれど。
本当にそうだなと思う。
私はエクアドルと日本人という
ストーリーを買ったのだろう。
そのバナナが内包しているであろうバックストーリー。
言葉を扱う仕事である私は、
うまいコピーだなと感心しつつストーリーがある
バナナをもってレジに向かった。
目の前のバナナは、もはや普通のバナナではなかった。
傷んだバナナは中身はとくに問題もなく、
おいしくいただき、私の胃袋へと消えた。
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