Story 5 おやすみダンゴムシ
ダンゴムシのネラレンターノ博士は長年不眠症に悩まされています。
「どうしたらぐっすり眠れるようになるのだ…。う〜ん、わからん。」
ネラレンターノ博士は今日も朝から研究を開始しました。
「そうだ!丸まって寝るから眠れないのかもしれん。背筋をピーンと伸ばしてまっすぐ寝れば眠れるかもしれないぞ!?」
良いアイデアを思いついたネラレンターノ博士は嬉しそうに背筋をピーンと伸ばして布団に入りました。でも布団がお腹に触れるたびに丸まってしまうのです。
「丸くなるのが得意なダンゴムシにとってピーンは難しいな。そうだ、ピーンのまま立って眠ればいいのではないか。そうしたらお腹がどこにも触れないぞ。象も立って寝ると言うし。あれだけ大きな体の象が立って眠るんだから、立って眠ることは体にいいに違いない。」ネラレンターノ博士はもうすでに眠れるような気がしています。
でも、いつも地面にお腹をつけて生活しているネラレンターノ博士はこれまで立ったことがありません。あっちにふらふら、こっちにふらふら…。お酒を飲みすぎた後のように千鳥ダンゴ足になってしまって、どうやっても立って眠れそうにありません。
「う〜ん、この方法はダンゴムシには向いてないな。余計に寝れん!」
「地上がダメなら空だ、空。なになに、空を飛びながら寝る鳥がいるのか!これだ、これ。飛びながら寝るなんてかっこいいじゃないか。」
ネラレンターノ博士は一生懸命木に登り始めました。
「おぉ~、かなり高いな。こ、怖いな。ここから飛ぶのか…。やめようか。いやいや。眠るためには覚悟を決めて飛ぶしかないな。それじゃあ、飛ぶぞ。飛ぶぞ。あぁ、でも怖い。」
ネラレンターノ博士は怖くてどうしても飛ぶことができません。
その時、強い風がぴゅーっと吹きました。ネラレンターノ博士は風にあおられ地面に向けて真っ逆さま…。
「お、お、おぉ~!!!助けてくれ~。」
ネラレンターノ博士は飛びながら寝ようとしても、怖くて眠るどころじゃありませんでした。草の上に落ちたので怪我はせずにすみましたが、ネラレンターノ博士はもう二度と飛びながら寝るのはやめようと思いました。
「空がダメなら海だ、海。なになに、海を泳ぎながら眠る魚がいるのか!これだ、これ。泳ぎながら寝るなんてかっこいいじゃないか。」
ネラレンターノ博士は海に向かいました。
「おぉ~、かなり広くて深そうだ。こ、怖いな。ここで泳いで足がつくかな…。やめようか。いやいや。眠るためには覚悟を決めて泳ぐしかないな。それじゃあ、飛び込むぞ。あぁ、でも怖い。」
ネラレンターノ博士は怖くてどうしても海に飛び込むことができません。
その時、強い風がぴゅーっと吹きました。ネラレンターノ博士は風にあおられ海面に向けて真っ逆さま…。
「お、お、おぉ~!!!助けてくれ~。」
ネラレンターノ博士は海の中にドッボーンと落っこちてしまいました。ブクブク、ブクブク。溺れかけて眠るどころじゃありません。波が浜辺まで運んでくれたので何とか助かりましたが、ネラレンターノ博士はもう二度と泳ぎながら寝るのはやめようと思いました。
ネラレンターノ博士は疲れてぐったりしています。
「朝からずっと研究しておったからかな。なんだか疲れたな。ちょっと横になろう。」
そう言ってネラレンターノ博士は朝までぐっすり眠ったのでした。
おしまい。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※毎晩息子に読み聞かせならぬ語り聞かせをしています。内容をどんどん忘れていくので書き留めていくことにしました。
「おやすみダンゴムシ」はClubhouseというSNS内のお部屋「ゆりかごの歌クラブ」の中で「光ダンゴムシ」という話が発展してできたお話です。