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天気にまつわるエトセトラ

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天気と文化、地域に伝わる伝承のまとめです。
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#写真

青天の霹靂

青天の霹靂(せいてんのへきれき)という言葉をご存知でしょうか?突発的な大事件など、予想もしていなかったことが起こることを意味する言葉です。元になっているのは雷で、青く晴れた空に突然起こる雷の意味から、上記ような例えとして使われるようになりました。英語でも同じ意味を持つ言葉があり、Bolt from the Blue を日本語訳すると青天の霹靂になります。似たものに、Out of the Blue がありますが、こちらは突然や予想外を意味する言葉です。 雷の発生には積乱雲が必

北関東のライサマ大暴れ

7月10日から13日にかけて北関東では激しい雷雨にみまわれ、4日間全てに突風被害が発生しました。12日を除く3日間積乱雲を追って出動していましたが、いくつもの積乱雲が次々にわいてくるような状況で、竜巻注意情報を知らせる防災無線が鳴り響く中で撮影を行いました。余談ですが12日は不覚にも午前中に熱中症になってしまい、午後になっても体調不良が続き出動することが出来ませんでした。 7月10日レポート 7月10日、午後になると北関東の山沿いで次々に積乱雲が発生、夕方になると平野部

ディープなアーチ雲の世界

以前は一部の人にしか知られていなかったアーチ雲ですが、ここ10年ほどで多くに人に知られたように思います。アーチ雲は積乱雲の周囲にできる帯状の雲で、積乱雲から吹き下ろす冷気と周囲の暖気との境目(前線)が可視化した雲です。 積乱雲の発達がピークをむかえると、上昇気流が弱まり下降気流が優勢になります。上昇気流の支えがなくなることで、雲の内部で上下動を繰り返していた雨粒や雹が冷気と一緒に勢いよく地上に下降してきます(ダウンバースト)。地上に衝突した冷気は四方に広がり、周囲の暖気と衝

春雷轟く

いよいよ2023年のストームチェイスシーズンが始まりました。季節の変わり目には度々嵐がやって来ます。上空には真冬の寒気、地上付近には暖かく湿った空気、温度差が対流を生み、上昇気流となって積乱雲が発達します。 約3年続いたコロナ禍も表向きは収束して、自由に動き回れるようになりました。うまい具合に今シーズンはスタートダッシュをかけることが出来て、上々の滑り出しといった感じです。3月の終わりから4月の中旬までに何度かのチャンスがあり、それぞれ満足のいく結果が得られました。 とは

霧はフォトジェニック

晩秋から初冬にかけて、霧を好んで撮影しています。紅葉の時期が終盤に差し掛かると朝晩の気温が一桁台まで下がり、霧の発生が多くなります。霧は見慣れた風景を一変させて、余計なものを隠してくれる、写真撮影の強い味方になります。 霧と靄(もや)の違いは視程範囲の広さで、現象としては同じ空気中の水蒸気が飽和状態になって漂っているものです。地上に居ながらにして手が届く雲と考えていいと思います。夜間の冷え込み(放射冷却)、適度な湿気、無風または微風、この3つが重なると発生の可能性が高くなり

ラピュタは嵐の中にいる

映画、天空の城ラピュタの名場面の一つで、竜の巣の中をワイヤーの切れたグライダーで彷徨いながら、パズーとシータがラピュタに到達するシーンが印象的でした。公開されたのが1986年ですから、2022年現在で36年前の作品になります。いつの頃からか、積乱雲の代名詞として「ラピュタ」や「竜の巣」が使われるようになりました。実際に積乱雲を見ていると、上昇気流に乗って上へ上へと発達していく様子はまさに竜の巣、ラピュタは本当にあったんだ!と思ってしまいます。 ヘッダー画像はスタジオジブリか

突風は竜巻だけじゃない

5月下旬から6月中旬にかけて、上空寒気の影響で関東地方の各地で荒れ模様でした。季節の変わり目には天気が荒れますが、今年は特に激しかったように感じます。5月27日には群馬県南部の太田市、邑楽郡邑楽町、邑楽郡千代田町、邑楽郡明和町、館林市で現象区別不明の突風が、同27日に茨城県筑西市でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています。大粒の雹による被害が多発した6月2日には、埼玉県北部の深谷市、大里郡寄居町でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています

雷撮影は情報戦

雷撮影に必要なスキルを割合で示すと、情報収集と土地勘が7割、気象の知識が2割、撮影技術が1割といったところでしょうか。撮影技術は続ける間に自然に身に付くのでそれほど重要ではありません。気象の知識は積乱雲が発生する条件や雷の特性がわかっていれば十分です。 そして最も重要なのが情報収集と土地勘(土地勘も情報のカテゴリ)です。積乱雲の発生には色々な条件がありますが、鍵となるのは上空の寒気です。上空の寒気の状況を知るためには地上天気図ではNG、もっと高いところの天気図が必要です。7

技法の確立

私にとっての最重要年は2008年です。前年の2007年から雷の撮影をはじめて、当時はどう撮ったらいいのかもわからず、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的に撮影していたものです。今見ても下手クソだな~と思うような写真ばかりで、この頃の写真は全て封印しています(笑)。 そして2008年7月、部屋から雷が光る様子を眺めながら、タイミングを図ってシャッターを切ったところ、奇跡的に写ってしまったのです。恥ずかしながら、それまで雷を狙って撮影するという観念はありませんでした。偶然撮れたらラッキ

プロが教える雷撮影の基本

夜間にバルブで雷を撮影する方法の解説動画を公開しています。カメラの設定から、シャッター開閉のタイミングまで、基本を解説しています。これから雷が発生しやすい時期になりますので、興味のある方は、是非チャレンジしてみてください。 動画の補足です。電子シャッターはローリングシャッター現象が出るので雷撮影には不向きです。画面に明暗差が出てしまい、使い物になりません。他、アンブレラホルダーを三脚に装着するのは危険です。風に煽られて転倒、地面に叩きつけられたカメラはバラバラになります。

積乱雲のおなら

積乱雲の下では度々激しい現象が起こりますが、夏の北関東でよく起こるのが、落雷、ダウンバースト、ガストフロントです。その中でも被害が広範囲に及ぶダウンバーストは厄介です。 私がダウンバーストという言葉を初めて聞いたのは、忘れもしない1996年7月15日に地元の茨城県下館市(現筑西市)から栃木県小山市にかけて発生した国内最大級のダウンバーストでした。当時のスケールでF2、60m/sを超えるような突風です。被害幅は1,500mから3,000m、被害域は2.5kmから4km、住宅被

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エクストリームウェザー

筑波ナライと砂埃

茨城県南東部から千葉県北部で、冬季に筑波山方面から吹いてくる冷たい北西風を「筑波ナライ(筑波おろし)」と呼びます。実際には吹き下ろしの風ではなく、いわゆる西高東低、冬型の気圧配置が強まった時に吹く風のことです。筑波ナライが吹く時は乾燥した晴天で、対象地域から筑波山が良く見えることから、そのような俗称が付いたのでしょう。ナライ、おろし(颪)と呼ばれる風は山越えの冷たい風のことで、赤城颪(上州空っ風)や六甲颪などがあります。筑波ナライは、日本海側から関東北部の山を越えて入ってくる