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小説

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書いた小説集です。【短編小説】1万字以内【中編小説】1-4万字【長編小説】4万字以上
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記事一覧

【短編小説】それな哲学

京都の街を覆う初夏の陽炎が、時間の流れを歪めているかのようだった。私、山田太郎は、八坂神…

すとがれ
2か月前
23

【短編小説】蝉時雨の向こう側

 蝉の声が耳を刺すように鳴り響く真夏の午後、私は薄暗い六畳間に横たわっていた。扇風機の風…

すとがれ
2か月前
16

【短編小説】サイバーパンク・ブルー

ネオン・ドリームズの扉が開いた瞬間、マーサ・神宮寺の目は鋭く入口を捉えた。 スーツを着た…

すとがれ
2か月前
12

【短編小説】転生したら賃貸契約更新の書類だった件

気がつくと、僕は封筒の中にいた。 最後に覚えているのは、原稿の締め切りに追われながら徹夜…

すとがれ
2か月前
47

【短編小説】電脳蝶の量子飛翔

2050年、テクノ・ハーバー。江藤舞(23)の網膜に、突如として蝶が舞った。デジタルの蝶。彼女…

すとがれ
3か月前
15

【短編小説】沈黙の螺旋

雨滴が窓ガラスを叩く音は、まるで時計の秒針のように、私の内なる空虚を刻んでいた。 机上の…

すとがれ
3か月前
14

【短編小説】ノスタルジー・アクション

道端の石ころを見て小学生時代を思い出した。 よく蹴りながら帰ってたっけ。何人かのグループだったなあ。 そういえば帰宅方向が同じ人たちでグループを作られていた気がする。 いや登校時だけのグループ?もう忘れてしまった。 正直あんまり小学校の記憶もない。わりかし楽しかった気がする。石ころを蹴るだけで思い出になるなんて簡単でいいや。 大人になってから嫌なことばかり記憶に残る気がする。心の底から笑ったのはいつが最後? とはいえ、小学生なりに悩んだこともある気がする。いつも通

【中編小説】人類の夜明け

プロローグ:黄昏2150年、東京。 高層ビルの林立する街並みは、一見すると21世紀初頭と変わら…

すとがれ
3か月前
10

【短編小説】左耳たぶとの会話

私は、ある日突然、自分の左耳たぶの形が気になり始めた。 それまで二十数年間、まったく気に…

すとがれ
3か月前
9

【短編小説】蝶の夢

月光が紡ぐ夜の帳が、大正の東京を包み込む。その光は、まるで古い因習と新しい思想の狭間で揺…

すとがれ
3か月前
10

【短編小説】シジジーの季節

京都大学の文学部に所属する私、高野空(たかのそら)は、ある春の日、突如として「シジジー」…

すとがれ
3か月前
22

【短編小説】観測者のパラドックス

2173年、地球。 エリック・リーは、窓越しに広がる東京の風景を眺めていた。かつての繁栄を誇…

すとがれ
3か月前
9

【短編小説】日曜日の憂鬱

日曜の夜。時計が午後11時を指す頃、俺はコントローラーを手に取った。画面に映る鮮やかな光景…

すとがれ
3か月前
23

【短編小説】虚空の訪問者

薄暮の光が窓辺を染める頃、私は一瞬の幻影に魅入られた。それは、夢幻の如く儚く、かつ鮮烈な光景だった。しかし、瞬く間もなく、世界は元の姿に戻った。いつもと変わらぬ夕暮れが、いつもと同じように街を包み込んでいく。 翌朝、会社に向かう電車の中で、スマートフォンをスクロールしていると、奇妙なニュースが目に入った。 『昨夜、複数の天文台が未確認飛行物体を観測』 『政府、異常現象の調査を開始』 『SNSで「宇宙人来訪」の噂が拡散』 私は息を呑んだ。昨夜の出来事は幻ではなかったのだ。