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【短編小説】春風の中で 2.言葉を交わす距離
(画像は生成AIによるイメージ映像です。)
(「心の架け橋」から続くシリーズの短編です。)
びぃくんと晶が屈託ない様子で接しているのを見て、心の中に理由の良く分からないモヤモヤを抱えた妙子は、自分が びぃくん に頼りきってしまい『依存』してしまってるのではないか? と思い始めていた。
その日、ボクは少し早めに家を出て、アルバイトに向かう途中で少し普段とは違う道を通って散歩してみることにした。胸のモヤモヤは消えないままで、何か気分転換が必要だった。
その途中、ふと甘くて、でも甘いだけでなく爽やかさも含んだ香りが風に乗って来るのを感じて、公園に立ち寄ってみた。すると、思った通り、梅の花が咲いている。少しずつ春が近づいて来てるんだ。ぽかぽかとした陽射しを浴びると寒さも和らいで、柔らかくなった空気に少しだけ心が軽くなる。
ボクはベンチに腰掛けて、ぼんやりと辺りを眺めた。
楽しそうに走り回る子供たち。動き回って暑くなったのか、帽子や上着を脱いで元気に遊んでいる。それを目を細めて見守りながら、穏やかに会話をするお年寄りたち。あの子たちのお婆ちゃんだろうか? そんな様子を見ている内に、胸の中もじんわりと温かくなって来た。
でも、それと同時に、ちょっと情けないなって気持ちが湧き上がった。
「ボクって、こんな風に起きてもいないことに不安を感じてクヨクヨしてるままでいいのかな? 今、手元にあるものを、もっと大事にした方が良いんじゃないのかな?」
自分に問いかけてみるが、答えは出なかった。
そうは思ってみたって、現に不安を感じている心は否定できないのだし。
だけど…
このまま何も出来ず、ただ不安に押し潰されて行くのは嫌だ。不安があるのも、また現実だ。それをそれとして、逃げたりせずに受け止めた上でボクがどうするのかを、ちゃんと考えなくちゃ。
今は びぃくん に頼ってしまってる部分が多い。精神的にも経済的にも。いつの日か、それを失ってしまうかも知れないことの不安は大きい。でも、それは今じゃない。まだ起きていないことに怯えて膝を抱えてうずくまっていたら、前には進めないんだ。
「なにか、今の自分に出来ることを見つけたいな。ううん、出来ることじゃなくって、やりたいことかな。」
そんな風に呟いてみると、少しだけ前向きになれる気がする。
先のことに怯えていたって仕方がないし。今のボクに出来ることを頑張らないと。そして、やりたいことを見つけないと。これからは、もっと自分のために頑張ろう。ちゃんと自分の足で、しっかりと立てるようになりたい。びぃくんに『依存』しているままじゃ、きっとボクの不安は消えないんだ。背負ってもらうのではなく、自分の脚で一緒に歩いて行きたい。
「こうしてクヨクヨして立ち止まってるままじゃダメなんだ。」
そんなことを考えていた時、スマホの画面に びぃくん からのメッセージが届いた。
『梅の花が咲いてたぜ。今年初めて見た ♪ 』
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外回りに出ている途中で撮ったのであろう写真が添付されたメッセージに、ちょっと驚いた。けど、同時に少しホッとした気持ちもあった。ボクがこうして公園で梅が咲いているのを見ているとき、別の場所で びぃくん も梅の花を見て、それをボク宛のメッセージとして伝えてくれた。少なくとも今は、ちゃんとボクのこと気にかけてくれてるんだって、実感できたから。
それでも心の奥には、あのモヤモヤが残ったままだ。「外回り中ってことは、晶さんと一緒に梅を見てるんだ… また、軽口を叩き合ったりしてるんだろうか?」なんて考えてしまって、どうしてもモヤモヤしてしまう。
「このままじゃダメだ。一人でも、しっかり立てるようにならないと」
自分に言い聞かせた。何も今すぐには出来なくてもいい。焦らずに、少しずつ自分を変えていけばいいんだ。
ボクは、公園を出てバイト先へと向かった。
>>>>>To Be Continued
<以下余談>
涼子「妙子ちゃん、早速『兄離れ』の試練にぶつかっちゃったのね。」
晶「私が切っ掛けになっちゃったの? アイツとは、そんなんじゃないんだけどなぁ。悪いことしちゃったかな。」
涼子「いいんじゃないかしら。遅かれ早かれ、いつか立ち向かわなきゃいけなかったんだし。ただ… 」
晶「うん。これってさぁ… 」
晶・涼子「『依存』もあるけど『Love』っぽくない?」
涼子「表向き兄妹ってことにしてるんだし、二人とも奥手っぽいから、このお話が簡単にそっち方向に進むとも考えづらいけど。」
晶「ちょっと、そんなメタなこと言っちゃって良いの? 私たちって、その辺の事情は知らないって設定じゃない。」
涼子「先輩は初めてで知らないだろうけど、この<以下余談>スペースでは、読者視点半分&著者視点半分のメタ認識で喋って良いみたいよ。キャラの口を借りた『あとがき』みたいなものかな? 時々、サイドストーリーになってることもあるみたいだし。」
晶「なるほど、それじゃ遠慮なく。気になるのは、お兄さんは“バケモノ”で異種族な訳だけど、ぶっちゃけ、アソコってどうなってるのかしら? 妙子ちゃんが受け入れ可能な形状とサイズなのかしら?」
涼子「さすがは『歩く18禁』いきなり、そこをぶっこんで来たか… 呆れるやら感心するやら。」
晶「だって、気になるじゃない。そもそも恋愛対象になるのかどうか?」
涼子「別に恋愛は肉欲と直結する訳じゃないでしょうがっ?!」
晶「とは言え、重要なことよ。中の人も、二人の関係を恋愛方向へと進めていいものかどうか、迷ってるみたいだし。」
涼子「行き当たりばったりで始めるからそう云うことになるのよ。世界観とかキャラ設定とかが浅いから。」
晶「ワナビー勢の典型例ね。でも、あまり人のこと言ってるとブーメランになって帰って来そうで怖いわね w 」
涼子「なんだか、本編のシリアスな展開を余談がぶち壊しにしてる気もするけど… 」
晶「きっと中の人だって、重苦しいムードに堪えかねて、賑やかしに私たちを起用してるんじゃない? だから、はっちゃけても良いのよ。」
涼子「まぁ、そう云うことにしておきましょう。さて、次回は定番の、夜のリビングでの会話シーンです ♪ 」