渋谷、久しぶりに
昨日、事務的な用事があって、久しぶりに渋谷に行った。
午後、車で駅前のあの交差点を通ったのだが、凄い数の人だった、いや、数というより量と言った方が良い。周りの商業ビルは煌めいているし、芸能人が車体全面に映し出された広告用の車が走り回っている。
若い頃には渋谷に住んでいたことがある。中心街に近い所だ。思えば、その頃は毎日のようにこの賑やかさを浴びていたのだった。観光客も戻ってきているようだ。外国人も多い。夏に向かおうとする晩春の、既に暑さを含んだ風も、活気を勢い付けている。
公園通りを上りきったところにある役所で用事を済ませた後、せっかく来たのだからどこかカフェにでも寄ろうと思った。少し歩いてみると、その役所界隈は逆にとても静かで、人もまばらと言っていい。あの交差点からはほんの少しの距離でしかないのに、その差に戸惑ってしまった。私が住んでいた頃には、この辺りももっと人が多かったような気がする。もっと満遍なく街全体に人が多かったと思う。これも少子化の影響か。
とはいえ、やはり渋谷は渋谷である。そういう比較的静かなポイントでも、カフェにはそれなりに人が多い。私は賑やかな町が好きだ。だから、渋谷の交差点のあの雰囲気がとても好きで、若い頃は特に用事もないのに、あの交差点を歩くためだけにわざわざ外出したりしたものだ。だが、それとは逆に、カフェや酒場やレストランなどは静かな方がいい。昔からそうだ。だから私は、メディアで評判のラーメン屋とか、ああいう所で並んで順番待ちをするといったことが、もう完全に苦手だ。私の場合、腰を落ち着けて食事をし、その後コーヒーを飲んで、それに本を読めればなお良い、そういう所でないとまず入ることはない。もしも、どこも混雑しているようであれば、コンビニなりで食べ物を買って、公園を探して、ベンチや、あるいは芝の上に座ってゆっくりと食べる。
そういうことなので、いくつかその辺りのカフェを探して回ったのだが、一軒とてもいいところがあった。それはチェーンでどこにでもある店なのだが、そこは、静かで広くて、ソファーの質も良く、採光の塩梅も良い。私にぴったりだった。そこで、何やらいちごの入ったパイのようなお菓子のようなものを一つ取り、そして普通のブレンドを頼んで席に着いた。若い人が少ない。といっても、年配の人がたむろしているわけでもない。なんというか、30代から40代、あるいは少し50代位の、その辺りのベンチャー企業の社員のような、しかし、バリバリ系ではなく思慮深そうな人達が、ノートPCを広げたり、紙のノートにブレストのような図を書いて、集中して仕事をしていた。
この春から仕事の拠点の一つを渋谷に持つことになった。その用で今日も出て来たのだった。この辺り、そしてこのカフェ、これからも来ることになりそうだ。
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