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老子注解 36章 柔弱は剛強に勝つ

縮めようとするなら、必ず先に伸ばせ。弱めようとするなら、必ず先に強くしろ。滅ぼそうとするなら、必ず先に盛り立てろ。奪おうとするなら、必ず先に与えろ。

これを微妙な明知と言う。(つまり、)柔弱は剛強に勝つ。魚が淵から離れてはならないように、国は武力を誇示してはならないのだ。

【注】
この章は謀略を勧めているようにも見え、老子らしくないと評されてきた。また、前半部分は他書で『逸周書』の文章として取り上げられているので、後世に紛れ込んだものとされることもある。

しかし、69章の王弼注に「我々は悲しむから退くのであって、強さを得て天下の無敵になろうとするのではない」とあり、この章にも通じるものがある。つまり、あくまで争いを避けることが目的ということだろう。

恐らくこの章は、「柔弱は剛強に勝つ」ことに説得力を持たせようとして、当時の格言を引用したものだと思う。老子は18章のように、常識に反した衝撃的な逆説を好むから、他章と矛盾するものではないと考える。

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