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知ったかぶりは災いの元

孔子が楚に行った時、背の曲がった〔老〕人がセミを取っているのを見た。孔子は「先生は上手ですね。どうやっているのですか?」と聞いた。〔老人は〕こう答えた。

「夏に二つのトリモチを重ねても落とさずにいられれば、〔セミを〕取り逃がすことは少なくなる。〔そうしてトリモチの数を増やしていけば、〕まるで拾うように〔簡単に〕なる。私の体は木のようで、いかに天地が大きく、万物が多いと言っても、セミの羽根しか見えない。〔そうなれば、〕失敗などあるだろうか」

孔子は弟子に向かって言った。「精神を集中させれば、神業も成せると言うのは、まさにこの老人のことだ」

〔すると〕老人は言った。「お前は儒者だろう。〔セミ取りの〕何が分かるんだ。〔まずは〕自分の仕事を心配したらどうか。話はそれからだ」


これは『列子』黄帝篇にある説話だ。『列子』には他にも孔子の知識を疑う話があり、知ったかぶる儒者を皮肉っているのだろう。

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