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本当の自分が失われるのは

伯昏瞀人が列子の家を訪れると、外は〔来客の〕靴でいっぱいだった。伯昏瞀人が立ち去ろうとすると、列子が裸足で追いかけて「先生、せっかくいらっしゃったのですから、お言葉を頂けませんか」と呼び止めた。伯昏瞀人はこう言った。

「〔他人がお前を頼っているのは、〕お前が他人に頼られる能力があるのではなく、他人に頼られない能力が無いからだ。お前はどうやって他人の心を動かしたのか。他人に喜ばれようとすれば、〔自分の本心とは〕違うことをするようになる。もし他人の心を動かしてしまったら、それはお前の本心を揺るがしたことになる。全く理不尽ではないか」

「お前の所に来る者どもは、何も教えてくれないだろう。彼らの言うことは、全て毒になるだろう。彼らは何も気付かず、他人に気付かせることもないだろう。どうして互いのためになるのか」


これは『列子』黄帝篇にある説話だ。ここでは、他人を喜ばせようとすることが、どうやって自分の心を乱すのかが追求されている。

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