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天下は川の流れのように

楚の狂接輿が、歌いながら孔子のそばを通りがかった。

「大鳥よ大鳥よ、何と徳が衰えたことだ。過ぎたことは仕方ないが、未来は変えられる。やめろ、やめろ、今の政治に関わるのは危ない」

孔子は狂接輿と話そうとしたが、逃げられてしまった。

長沮と桀溺が畑仕事をしていた。孔子がそこを通りがかり、子路に渡し船の場所を尋ねさせた。長沮は「(あちこちを旅しているのだから、)もう知っているだろう」と答えた。

桀溺に聞くと、「天下は川の流れのようなもので、誰がそれを変えられるのか。君も(仕えるに値しないからと)人を捨てる者より、世を捨てた者に従った方が良いのではないか」と答えた。

孔子は失望して言った。「鳥獣の群れに加わることは出来ない(のだから、世を捨てるわけには行かない)。私が人々の仲間でないのなら、誰の仲間になるのか。天下に道があるのなら、私だって(世を)変えようとはしない」


これは『論語』微子篇の、孔子と逸民との関わりを記した箇所だ。孔子は逸民のようにはなれないと言いつつも、彼らに理解されなかったことを悲しんでいるように見える。また、孔子への意地悪な皮肉は、後の道家に通じるものがある。

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