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養われる者の反論

鄭の圃沢には賢者が多く、東里は名士を多く輩出していた。圃沢には伯豊子という者がいて、東里を通りがかった際、(政治家の)鄧析と出くわした。鄧析は伯豊子をからかって言った。

「お前は、養うことと養われることの意味が分かるか?他人に養われて自分を養うことが出来ないのは、家畜と一緒だ。それを養って自分のために使うのが、人の力だ。お前のような者が、食うに困らず生きていけるのは、政治の功績だ。全く(お前は)家畜のようなものじゃないか」

伯豊子は何も応えなかったが、彼の従者が進み出て言った。

「先生は、斉や魯に人物が多いことを知っているでしょう。土木工事が上手い者、武器を作るのが上手い者、読み書き計算が上手い者、軍の統率が上手い者、祭祀が上手い者、皆それぞれに才能があります。しかし、彼らは人の上に立とうとしないので、他人を使うこともありません。だから政治家は、無能なのに彼らを使えるのです。どうして先生は、そんなに偉そうしていられるのですか?」

鄧析は何も言い返せず、その場から逃げ去った。(『列子』仲尼篇)

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