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地域にこだわる生き方/リーダーシップ・チャレンジ2023開催レポートvol.11

📖講義内容

リーダーシップ・チャレンジ(大隈塾)は9月16日(土)に第11回講義「地域にこだわる生き方」を開催しました。

ゲストは株式会社東北アレンジャーズ代表取締役、株式会社刀エグゼクティブ・ディレクターなどを務めている佐藤大介さんでした。

「地域と関わる生き方、働き方」というテーマで、ホテルの再建を通じて地域経済に関わってきた、これまでのお仕事についてお話していただきました。

今回の目的は……

・地域経済との関わりを考える
・10年後、どんな生き方、働き方をしているか想像する
第8回講義の越境学習&ワーケーションツアー(釜石)を改めて振り返る

◆佐藤さんの原体験

佐藤さんは大阪府に生まれ、その後は父の仕事の関係で国内外を転々としてこられました。そんな佐藤さんが好きだった場所が、祖父母が住んでいる岩手県でした。幼少期の頃から、岩手県の文化や自然に「故郷への憧れ」をかきたてられたそうです。

しかしながら、経済合理性のながれで地方は均一化していきます。新幹線や高速道路がつくられ便利になる一方で、大型のショッピングモールや世界規模の飲食チェーンがつぎつぎと地方にも進出していく。この時代の変化のなかで、佐藤さんは「地方らしさ」を無意識に小さいころから感じざるを得なかったと言います。

大学卒業後は三井物産に入社し、入社4年後には同期トップでニューヨークに駐在します。そこでコーネル大学の観光ビジネス、ホテル経営学の講義を見学した時に、その内容が自身の地方への思いとつながります。

そこで会社を辞めて、星野リゾートのホテルで働き始めます。

◆改革の数々

最初に佐藤さんが星野リゾートで手掛けたのが、青森県の「古牧グランドホテル」(現・星野リゾート青森屋)の再生でした。当時、佐藤さんは30歳。220億円もの負債を抱えていた原因を「やるべきことをやっていなかった」からとシンプルに分析し、責任者として経営改革案を作りました。
多額の負債の原因は、ホテルの魅力のアップデートをせずに拡大を繰り返してきたことにありました。そこで施設の改修や提供する食事を抜本的に改革したことで、古牧グランドホテルは再び息を吹き返したのでした。

古牧グランドホテルでの実績を買われた佐藤さんは、次に北海道占冠町のトマムリゾートの改革に着手します。ところが、佐藤さんが着任した当時は、古牧グランドホテルよりも困難な状態でした。従業員のモチベーションが下がり続け、退職者が続出。少ない人手でなんとか回そうとして、お客さんにも満足してもらえるサービスが提供できないでいました。
そこで佐藤さんは従業員の信頼を獲得するために、「約束とお願い」を作りました。それだけでなく、アルバイトを含む従業員全員に、ホテルの経営情報を開示したのです。
お客さんを幸せにしながら、そこで働いている人たちも幸せになる環境を作る。そのために従業員を「主役」として考え、皆が積極的に意見を発信し、行動できる関係性構築と環境づくりに尽力したのでした。

佐藤さんが星野リゾートトマムの改革で作成した「約束とお願い」(再現イメージ)

◆リーダーシップの三要素

早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授の日向野幹也氏によると、リーダーシップには三つの要素があります。

・目標設定、共有
・率先垂範
・相互支援

イラスト:ひえじま ゆりこ

これに当てはめると、佐藤さんは星野リゾートでの改革で

  • どんなホテルをつくりたいか(目標設定)を構想し、自ら進んで経営情報を開示(共有)

  • 「約束とお願い」を作成(率先垂範)

  • ホテルで働く人たちが自分たちを「主役」だと思えるような働く環境づくり(相互支援)

を行なってきました。

そして、佐藤さんがリーダーシップの三要素と同じくらい大事にしているのが「リスペクト」です。
ホテルの再建にあたり「ここがダメ」とダメ出しをするのではなく、これまでの取り組みに対して敬意を示す。そのうえで、改革を進めていきます。
自分だけでなく相手の正しさも受け止める。

「どうせこの人たちは……」とバイアスでひとくくりにしないためにも、誰に対しても常にフラットに、一人一人をリスペクトし、「なぜできないか」より「どうしたらできるか」を考える。

これが佐藤さんの「リーダーシップ」であり「リスペクト」の生き方なのです。
講義の終わりには「私はまだまだです、みなさんの前で話すような立場ではない」と、受講生へのリスペクトも忘れないでくださいました。

🖊️受講生の講義レポートより

◆講義での学び、気づき、感想

今回の講義で下記のことを学ぶことができました 。

①自分が自分らしくあることが原点
自分の挑戦や志が誰かのためになるのかを考えた上で、他者の評価を気にせずにあくまで自分自身がどうしたいかを考えることがリーダーにとって必要であること。

②1人1人に対するリスペクト
自分自身が志したことを実現するためには相手を尊重し、立場や考え方を理解した上で、自身の考えに共感を持ってもらえる行動、工夫をすることが重要であること。

③コミュニケーションの重要性
組織のメンバーと学んだことを共有し合うことや外部とのトラブルを避けるための根回しにおいても、コミュニケーションがいかに重要であるかということ 本間正人さんの講義でも学びましたが、相手を知り、己を知ることが重要であることをあらためて認識する機会となりました。

小売業・男性・40代

新たな関係性構築に於いて注意しておくべき2つの陥りやすいバイアスは、「内集団バイアス(内集団びいき、理解されないのは相手側に問題があると考えてしまう思考)」と「外集団同質性バイアス(所属していない外集団は均質でステレオタイプであると認識する心理的傾向)」であり、このバイアスに気をつけながら、常にフラットで常に1人の個人として接するリスペクトの姿勢が重要であることを学びました。

商社・男性・40代

「自分が思う正しいことの反対は、間違いではなく、相手にとって正しいこと」、「自分が思う正義の反対は、悪ではなく、相手にとって正義である」こともある。「反対されること=全てが抵抗」と捉えず、自分の思うことが本当に正しいのか、相手にとってはどうなのかを立ち止まって考える必要があること。相手にとって本当はどうなのかを知るには、理解する姿勢を持ちコミュニケーションをとることが必要であると感じました。

商社・男性・40代

佐藤さんの三井物産人事部時代に、「三井物産"で"」ではなく「三井物産"と"」働く人を採用の軸にされていた話が印象的。今の時代、自身のパーパスを明確に持つ若者も増える中で、多様な背景を持つ人が働きやすい企業にするだけでなく、「自社で実現できることがこんなにも多いんだ」と実感できる企業にすることが、様々なステークホルダーに選ばれるために必要なことではと感じた。

金融業・男性・30代

成功体験や挫折体験を包み隠さずお話いただき、メモがとまりませんでした。

食品業・男性・30代

実践で活躍されている佐藤さんの仕事の進め方について、マーケティング手法などの具体的なビジネス手法の話だけではなく、人間の心理的な側面にあてた非常に貴重な講義だったと思います。 このリーダーシップチャレンジで経験している「地方創生」というテーマについても、今まで私は正直無関心でした。 そして、関心を持つようになるにつれ「地方に対して大きな経済圏をつくる」とか「地方に人が集まるようにする」などを考えるようになりましたが、それも手段でしかないことに気づきました。 日本の国土を最大限に活かし、「新しい日本の未来をつくる」ことに対して「自分として何がしたいか」「地方はどうなりたいとおもっているか」についてよく考える機会を作っていただける講義だと思います。

小売業・男性・40代

◆講義を受けて、短期的な目標、自分の部署への応用 など

自身の業務において、メンバーへの接し方を見直したいです。「スタッフができないんじゃない、知らないんだ」という言葉が胸に刺さりました。自身は今の職種に20年以上携わっています。ともすると「なぜこんなこともできない」という思いが強くなってしまう傾向があります。あらためて現状分析し、課題を可視化しシンプルでわかりやすい目標を掲げて成果に繋げていきたい。

小売業・男性・40代

 自身の場合、内集団バイアス(身内ひいき)が強いと感じた。改めて指摘されなければ、意外と気付かないものだと感じた。「社内は信用したい・きっと良いようにやってくれるだろう」という感情が出ており、客観性や根拠は欠いていたような気がする。あくまで個々人を見て、仕事をしていきたいと感じた。

商社・男性・30代

講師は昔から「地方が地方らしくありながら元気であり続けること」に貢献したいパーパスがあったため、抵抗勢力があり厳しい環境である地方再建事業や地方開発事業に自ら乗り込めたのだと思います。研修を受け、私自身のパーパスは何か、本当にやりたいことは何か、自分の譲れない考えは何か、自分の軸はどこなのか、遅すぎた年齢かもしれないが、自分を振りかえり、自分に向き合い、考えなければならないと痛感した次第です。

商社・男性・40代

今回の講義では、私自身が苦労している点であることから、特に組織や外部との調整力について大変気づきがありました。 そのうえで以下の3点について私自身改めて意識していきたいと思いました。

①今後何かを変えようとする場合は、まずその理由について掘り下げて、理解してもらうことを第一に対応にしていきたい。

②自分と意見が合わない(抵抗勢力だと感じる)人に対して、相手の背景や状況に対して理解をすることに努め、その上で自分の意見と調整できるように意識していきたい。

③内集団バイアスや外集団バイアスがあることを自覚して、常に別の文化もあることを理解した上で、個人対個人として接することを何よりも意識し、協調して取り組むことを心掛けていきたい。

商社・男性・40代

🕰️タイムテーブル

13:55〜13:59オープニング
14:00〜15:20 佐藤大介さん講義
15:20〜15:30 受講生ダイアログ(感想共有、質問をつくる)
15:30〜16:00 質疑応答(佐藤さん退出)
16:00〜16:10 休憩 16:10〜16:50
受講生グループワーク(「自社、自分の仕事の地域経済へのかかわり可能性」「今回の感想」)
16:50〜17:00 クロージング
17:10〜18:30 懇親会

👤講師プロフィール


佐藤大介(さとう だいすけ)
1975年、大阪府生まれ。 早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、三井物産に入社。 星野リゾートに転職してすぐに、青森の老舗温泉ホテル(古牧グランドホテル:現星野リゾート青森屋)の総支配人として再生を任される。 星野リゾートトマム、取締役グループマーケティング統括、取締役海外運営統括を歴任して、2019年2月退社。 現在は株式会社東北アレンジャーズ代表取締役、株式会社刀エグゼクティブ・ディレクター プランニング&オペレーション、株式会社ジャパンエンターテイメント取締役とともに岩手県沿岸広域振興局アドバイザーなどを務める。

❓リーダーシップ・チャレンジとは


リーダーシップ・チャレンジ(LC)は、会社で仕事(社業)を通じて社会に貢献する人材を育てる、ということをミッションにしています。

そのために、ヒューマンスキルを磨き、リーダーシップを身につけ、幅広い見識、判断力、思考力を学びとり、業界業種を超えた人脈を構築するビジネススクールです。

開講から20年目。本研修を学んだ受講生たちが日本国内のみならず、世界の色々な都市で活躍しています。
彼ら彼女らを、LCの教壇に立ったゲスト講師の皆様に後押ししていただきながら、私たち LCはこれからも、有能な人材を育み、社会に貢献していきます。

詳細はパンフレットをご覧ください

◆これまでの講義一覧

🏢2023年度参加企業 (順不同・敬称略)

受講企業
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
株式会社セブンドリーム・ドットコム
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
サントリー株式会社
三井物産株式会社
株式会社三井住友銀行
三井物産スチール株式会社
三井農林株式会社
リテールシステムサービス株式会社
エーザイ株式会社
綿半パートナーズ株式会社
第一生命ホールディングス株式会社
株式会社再春館製薬所
外務省

リーダーシップ・チャレンジ 2023開催レポートvol.11
2023年9月28日発行 
大隈塾事務局(一般社団法人ストーンスープ) 
田中渉悟・ひえじまゆりこ yuriko.hiejima@gmail.com 
〒026-0002 岩手県釜石市大平町3-9-1 
TEL:050-3558-7527 
     公式MAIL:ookuma_school@stonesoup.tokyo


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