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転生したらAsalesの○○を▲▲したい

Stockmark Advent Calendar 2022 の23日目の記事です。

いやあ、早く転生したいですね。

それはさておき、社内データ活用への進出が、社内でよく話題に上がるようになってきましたね。ストックマークは過去に「Asales」事業として、社内データを活用したビジネスにチャレンジしたことがあります。

当時の経緯を知らないメンバーも増えてきたので、①どんな事業内容だったか②何が難しかったか③転生してもう一度やり直すならどうするか、を当事者の1人として振り返ってみます。

そもそも、なぜAsales始めたの?

①社内データを扱いたかった、②営業職をターゲットにしたかった、この2点が主な理由です。
当時の我々は、「社内データ扱えば、グロースの速度が3倍ぐらいになるんじゃね? 重要データ握ってるから、チャーンも防ぎやすいじゃね?」と考えていました。
また、当時のメインターゲットであった新規事業部やDX推進部は、人数に限りがあるため、より予算が潤沢で人数の多い営業職向けビジネスへの参入を狙っていました。

Asalesの雑な歴史

2018/04 原部&岩谷さんにより立ち上げ、"ニュース"と"類似商談"作った
2019/04 真嶋参画、この時期に"Insight"はあった
2019/10 "Slide Finder"の開発開始
2020/01 "Slide Finder"の提供開始
2021/01 Asales事業停止の決定( ;∀;)
2022/03 最後のユーザーが契約満了
※時期は誤っている可能性が高い!

Asalesの4機能

Asalesといえば、Slide Finderの印象が強いと思います。が、実はAsalesは4つの機能を持っていました。
最初に開発されたのが、Salesforceのアドオンとして開発された「ニュース&類似商談」です。これはSalesforce上の情報に基づき、担当企業のニュース記事や、提案の参考になる商談を推薦する機能でした。

Asales Basic(ニュース配信)
Asales Basic(類似商談レコメンド)

次に「Insight」を開発しました。
顧客が保有する商談メモなどのデータを取り込み、センテンス単位に分割、アノテーションを行うことで、「自社プロダクトに対する要望についての文章だけを集めたい」といったニーズに応えようとしました。

Asales Insight

最後に「Slide Finder」を開発しました。
営業が一番苦労するのって提案やろ、もっと効率的にTTPできるツールがこの世にあるべきだとの思いから、開発されました。
Slide Finderのウリは3つありました。スライド単位検索、スライドの自動分類、類似スライド推薦です。

Asales Slide Finder

残念ながら撤退

計4つの機能を作りましたが、実質的にはピボットを3回したようなもので、最後はSlide Finderのみしか販売をしませんでした。

そのSlide Finderも、事業撤退を会社として決断し、現在は販売をしてません。撤退の理由は、Asales事業を単体で伸ばすことができず、会社のリソースをAnews/Astrategyに集中させるためでした。

では、Asalesの何が難しかったのか?を振り返ってみます。
※以降、とくに注記がない場合、主にSlide Finderの話をしています。

①手段としてのAI/NLPにこだわり過ぎた(AI)

「AI / NLP」により人類未踏の提供価値を実現するんや!と意気込み過ぎて、そうした機能の開発に膨大なリソースを投下したものの、ビジネスとして成立する水準の機能に仕立てられなかったです。

具体的には、Insightの文章分類や、Slide Finderのスライド自動分類ですね。どちらの機能も、「欲しい情報を学習させれば、自動で抽出/分類してくれるよ」がウリだったんですが、これがウルトラ大変でした。

分類の精度を実現するには、AIに正解/不正解のデータを学習させる工程(アノテーション)が必要となります。この工程を、顧客のビジネス文脈や取扱商材を理解した上で実行する必要があります。しかも、分類したい項目毎にそれぞれアノテーションを行う必要があります。これがウルトラヘビー泣

当時、アノテーションのために顧客の資料を膨大に読み込んでいたため、糖尿病のクスリや、コールセンター向けIT商材、福利厚生サービスのメニュー、広告代理店の提案書構成などにめっちゃ詳しくなりました笑

これは、1社ずつコンサルティングをしているようなもので、SaaSとして運営するのは、当時の体制では難易度が高過ぎました。しかも、Slide Finderにおいては、ユーザーの90%はキーワード検索でスライドを探すのみで、精魂込めた自動分類が使われていない、クッソ!

今思えば、もっと別の「AI / NLP」のウリを表現できたよなと思います。
例えば、Slide Finderのバックグラウンドでは、PowerPointの資料構造やフォント設定まで考慮したテキスト解析が走っています。こうした機能は一見地味ですが、スライド検索の精度を出すため等、大きな働きをしています。

もし転生したら、少なくともプロダクトローンチ当初はこうした裏方的な機能をもっと誇り、派手なウリを無理に作ろうとしないです。

②メンタルモデルを軽視し過ぎた(UX)

①と似ているのですが、アノテーションをユーザーにやらせるには、人類には早すぎた。まず概念を理解してもらい、他のサービスでは未経験の操作方法を伝授し、学習や予測の精度評価もユーザーにやってもらおうとしていました。これは無理ゲーでしたね。

そもそもAIを活用したSaaS自体が目新しいのに、操作や体験のレベルまでSomething Newを目指すのは、チャレンジング過ぎました。

もし転生したら、ユーザーの既存のメンタルモデルからはみ出さない体験をベースに据え、その中でAsalesにしか提供できない価値を追究します。

③社内データはニュース以上にカオス(Data)

いや、マジで。
主にSlide Finderの話ですが、PowerPointファイルだけでも、ppt、pptx、pptmと拡張子が多数あるんすよ。しかもバージョンが変わったりしてるんすよ。しかも、同じ会社のパワポ資料でも、構造やテキストデータの在り方が全然違うんすよ。
更に、PDF、WordやExcelの文書まで格納したいという要望が来る。そういったファイル形式毎に、解析やUI/UXを整備しなければならない。

もし転生したら、最初の2~3年はパワポ以外には絶対手を出さないです。

④エンプラのセキュリティ厳しすぎ(Security)

ワロタ、ワロタ、、、、、
事実として、日本を代表する大企業H社にSlide Finderを導入するまで、1年以上かかりました。導入基準を満たすため、暗号化したり、IP制限機能作ったり、閲覧権限作ったりと、非機能要件への対応にとても時間がかかりました。
顧客の営業秘密を含んだデータをお預かりすることになるので、再度社内データを扱う際には、セキュリティ対応へのリソースが一定必要になることを覚悟する必要があります。

もし転生したら、最初はエンプラを狙いません。SMBオンリーで一定の売上を作ります。それを実現した後で、エンプラに行く。

⑤ペルソナは絞らなあかん(Target)

Slide Finderはもともと「営業職の提案書作成」のペインを解消するために考案しました。しかし、営業活動を続けていくと、どんどん多種多様なユーザーが増えていきます。
ユーザーの種類が増えれば増えるほど、最大公約数的な要望への対応が多くなり、「営業職の提案書作成」用途からは遠ざかっていきます。

ターゲットを広く定義すればするほど、ペインキラーとしての効能は漸減していきます。そうなると、「一体我々が誰を救いたかったんだっけ?」と自身のアイデンティティにも悩み始め、プロダクト開発方針などの意思決定にも影響が出てきます。

ターゲットをどう定義するかは非常に難しい問題であり、どんな場合にも当てはまる回答は未だに私も持ってません。

もし転生したら、今の私は、ペルソナ定義を当時よりもっと厳格にすると思います。「SMBをターゲットにしているIT商材を扱う中小企業で、提案をパワポでやっている営業部」だけとか。これでも緩いかも。

終わりに

その他、体制や事業運営面での反省(※)も多々ありますが、主にプロダクト開発の観点で振り返ってみました。
※今では信じられんぐらい、マネ間の協調が取れてなかったですね笑 現在の数百倍はサイロ化してました。ていうか、こっちの方が苦しみが大きかったかもしれない笑

振り返ってみると、ストックマークの現在のプロダクト開発や事業運営方針は、Asalesがぶち当たった課題をクリアできるように整備されていると感じます。
事業撤退の決断、その後の顧客対応は、マジで辛いものでした。しかし、振り返りを経て、Asalesがストックマークの血肉の一部になっていると自覚できて、私も成仏できそうです(^^)/

最後の方になるにつれて、エネルギーが尽き、適当になってきました笑
ちょー長くなったので、このへんで退散いたします。
メリークリスマス!