小学校の卒業式で「日本代表になる」と宣言した同級生がA代表になった
小学生の頃の自分の夢を覚えているだろうか。
ふと思い返したが私は思い出せず、実家で卒業文集を引っ張り出してようやく「小説家になりたかった」ことを思い出した。その小説家だって、本気でなりたかったわけではなく、書いている当時も心の大半で「どうせ普通に働くんだろう」と思っていた。
そんな、自分の夢ですらろくに覚えていなかった私が、少ししか話したことのないあるクラスメイトの夢を十数年間はっきりと覚えていた。
そして、そのクラスメイトの夢が今日、EAFF E-1選手権の日本代表メンバーに招集されたことで叶ったのだった。
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「サッカー日本代表になって、W杯で活躍します」
十数年前、卒業式で高らかに決意表明をしたクラスメイトがいた。卒業証書授与の前にやらされた決意表明。大半の児童は中学生になってやりたいことを気恥ずかしそうに表明していた中で、彼はこう宣言した。
「プロになりたい」という小学生はごまんといる。もちろん、当時他にそう夢を語っていた子はたくさんいた。クラスメイトのよしみ程度の会話しか交えなかった彼の夢だけを覚えていたのは「したいです」ではなく「します」と言い切った真っ直ぐな瞳の強さと、彼ならやってのけるのではないかという期待があったからだと思う。
私は彼の夢に期待していた。
卒業式のあの決意表明を聞いてから、いつも片隅で彼の活躍を追ってきた。
卒業で進路が分かれたきり連絡をとることはなかったが、中学・高校の時はふと思い出して名前を検索したし、クラブに加入したと知ったあとは度々サッカー雑誌を手にとった。私が評するのも失礼だが、決して華々しいキャリアではなかった。本当に一歩ずつ着実にキャリアを積んでいた。
彼は徐々にメディアに取り上げられるようになり、最近では「代表予想」に度々名前が挙がるようになっていた。
「もしかすると本当に叶えてしまうのかもしれない」
社会人になって夢を叶えることの難しさを知ってしまった私は、彼に希望を託していたのかもしれない。小学生の頃の夢を今も追い続け、叶えることに私自身が夢を抱いていた。
だから今日、日本代表招集メンバーに彼の名前を見つけた時、震えるほど嬉しかった。彼にとっては、まだきっと夢の途中だと思う。それでも私は、何かが報われた気がした。
当然彼は私のことなんて覚えていないだろう。友達ヅラして馴れ馴れしくおめでとうなんて言えないので、1ファンとして伝えたい。
夢を叶えてくれてありがとう。
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