々とぷいエッセイ【床乃シール】

々【のまのじ】と言います。 Radio Talkでラジオもやってます。 ノートは「々と…

々とぷいエッセイ【床乃シール】

々【のまのじ】と言います。 Radio Talkでラジオもやってます。 ノートは「々とぷいエッセイ」をやってます。 【床乃シール】でシマイシバイのラバーズやってます。

最近の記事

たまにずっとを

アタシはとらわれているらしい。 やらなきゃいけないのに、やりたいことがあるのに、今のうちにやった方がいいのに、せっかく朝起きたのに、今日着たい服を着れたのに、髪型がいい感じに出来上がったのに、あと2歩目を踏み出せばすぐそこにあったのに、未だここにいるのは「とらわれているから」らしい。 気を抜けば力も一緒に抜けて絵に描いたようにへたり込んでしまう。 今まで頑張っていなかったアタシがいたとして、なぜか頑張れてしまうものに出会った時、頑張れているこの時間が愛おしくて仕方なくて、こ

    • 「行ってきます。またね。」のに。

      行ってきますってお別れの言葉みたい。 終わりがあって、帰る場所があって、待ってる人がいて、会いたい人がいて、やり残したことがあって、それらを背にしたとき人は「さよなら」なんて言わずに「行ってきます」という。 「行ってきます」だけが目の前に残ったまま、あの人が戻ってこなかったときの手持無沙汰。 行ってきますがお別れの言葉になった人たち。たくさんの別れ。数多くのたった一度のほんの一瞬。 テレビから流れ出てきた、あそこにいる誰かの運命を思い出して、ただただ不安に苛まれてしまう。

      • 一週間の歌うたい

        世界が赤と青に溶け込む瞬間。 灰色の雲でさえその一部に染まり、アタシもその雲になる。 橋の上で人々は足を止め、今日の終わり、または始まりを一身に吸い込む。 曲がりくねった薄暗い階段の道を降れば、静けさの中にこの街の安堵が吹き抜ける。 鳥居を潜った先にはいつも大樹が見守り、カラスが寝床へ帰っていく。 立ち止まったり、まだ歩き続けたり。 明日はまだ遠いすぐそこにある気がする。 すっかり蝉が夏の夕暮れを独り占めして、見上げるところには小さな一週間の姿があった。 窓を開けてピアノ

        • 赤い月の昇る日

          きっと、幸せすぎたんだと思う。 手に入るものも、目に見えないものも、 抱きしめていたものすべてが温かかった。 できるだけたくさん詰め込んでから出かけたはずなのに、気が付けばここにあるものを忘れていたみたい。どこかで落としたのかななんて思ってたけど、もう感覚なんて麻痺してたのかもしれない。 怖がらずに振り返ってみなよ。 どれだけ自信に満ち溢れていたのか。どれだけきれいな感情に包まれていたのか。どれだけ大切な日々だったか。 いいんだよ、そのままで。多分、アタシはアタシのままだから

          すべてがここにはないから

          できるだけ誤解を避けて生きていたい。 が故に言葉数が増える。 心の中の言葉を、できるだけ具体的に誤解を与えないように話そうとするものだから、修飾に修飾を重ね、ダラダラ早口に何かを言っている。 相手の意思を汲み取ろうとする時も同様である。 前方から肌の露出が多い服を着た人が歩いてきたら、間違っても見てると思われたくないから目を瞑る。 歩行に十分な視覚情報を得られないため、一瞬緊張する。 自分が人よりも少し身体が大きくて、自分が思っている以上に真顔が怖くて、一人で歩くときは常に

          XⅠ男、XⅡ女、自分

          アタシが通信制高校に入学する前。 いわゆる「全日制」に通っていたとき。 ちょうど夏休みが終わって新学期が始まるタイミングだから、高校に入学して半年も経たないころ。 思ったよりも課題こなすとか進学について考えるとかしんどくて、なんとなく学校に行けなくなった。 熱があったりお腹が痛かったりとかではないので、倦怠感と仮病の境目に葛藤した記憶がある。 とくに理由はないがトイレにこもってぼーっとする癖というか習慣がその時ついて、今も無性に「しんど」ってなったときはトイレにこもって世界か

          カギャクテキミックスフレーク

          ずっと一緒にいたい人というより 離れてはいけないなと思う人。 悲しい時にハグして欲しいと唯一頼める人。 「なんでもない」を探らないでおける人。 体中の膿を吐き出せば楽になるわけではない。 食べ物を吐き出すのと同じで、その行動には不快感と疲れが伴う。吐き出したそれを見るだけで、またヤな気分になる。 それでも吐き出すのをやめればいつか破裂してしまうのだと思う。 どっちもどっち。 人が食べている食事はなんでも美味そうに見える。 映画見てても外食に行ってても、目に映る誰かが食べて

          カギャクテキミックスフレーク

          It is my ROPE

          綺麗に折り畳まれた不織布マスク。 出かける時、ズボンのポケットに入れるだけ入れて一度も着用せずにゴミ箱に捨てる。 ほんの数年前まで片時も手放すことができなかったのに。 どうしてもいいとこ取りをしてしまうのだ。 目の前のあの人の、 いいとこだけ。 上がったり下がったりの日々の、 ほんのいいとこだけ。 でも自分のことは悪いとこばかり見つけます。 自分ばかり不器用で要領が悪いと思い続けて、 でもちゃんとみんな不器用で。 本当にめんどくさくて、 本当に可愛らしい。 面倒くさい

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より⑤

          ─2024年1月5日 午前0時5分頃。能登で震度4、やや大きめの揺れが10秒から15秒ほど。窓が音を立てて揺れ、細かい震動より大きい揺れが長かったため緊張する。 午前9時半頃に起きた。この季節には似つかわしくないほど最近は天気が良く、今日も空は明るい。 ただ風が強く、隙間風が窓やらドアやらをカタカタ揺らす。先の地震以降、家のあちこちで軋む音がする。今の自宅は祖父が建てたためかなり年季は入っているだろうが、こんなに音がしただろうか。敏感になっているだけか…。 午後2時。通

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より⑤

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より④

          ─2024年1月4日 嫌な夢を見ている。人々がパニックになっている。どうして皆んな慌てているのかは知らないが、たくさんの知り合いに逃げようと誘われる。 午前8時頃、たくさんのサイレンがなっているのを聞いてうっすら目を覚ます。アラームは遅め9時半に設定してあるのでもう一度目を瞑る。 午前8時15分頃、やや大きめの揺れが10秒足らず。おそらく能登で震度2を観測した地震だと思う。やや強く感じられた。目が覚めたので記録をしている。最初の地震から4日経った今も体で感じるほどのの地

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より④

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より③

          ─2024年1月3日 久しぶりに自室のベッドで寝起きした。昨日は床に座布団を敷いてコタツに羽毛布団だったため背中がまだ痛い。布団に吸い込まれているようでなかなか寝起きが悪かった。 10時55分ごろ、能登で震度5、加賀で震度3。自宅では揺れよりも先に石川テレビ(フジテレビ系)で警報が流れる。3〜5秒後細かく揺れ始め、大きな揺れを伴いながら20秒ほど揺れ続けた。 母親が灯油ストーブを消し、上に乗せてあったヤカンを下ろす。祖父がいる和室のふすまを開け、ガス栓も閉めて貰った。揺れ

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より③

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より②

          ─2024年1月2日 早朝4時45分頃。やや大きな揺れが5秒から10秒ほど。少し驚きながら目を覚ます。瞬間的に姉も目を覚ましたようで目が合う。揺れ始めてからすぐやや大きな衝撃があったため、姉に布団を被せるようにしながら様子を伺う。消防車だろうか。近くの方でかなり多くのサイレンが鳴っている。おさまって間もなく能登で震度4、加賀で震度3と速報があった。 昨日までなかった死者も2人とあった。 ほどなく母と父が無事に帰宅した。避難所が寒く我慢できなかったらしい。叔父は避難所近くの

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より②

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より①

          ─2024年1月1日 午後4時ごろだったか。 自宅の2階にいると家具がカタカタ揺れ出す。 地面が揺れている感覚はなかったが、窓ガラスが大きな音を立てて振動している。昨年の5月(令和5年奥能登地震)と比べ揺れは同程度かやや小さく感じられたため至って冷静にテレビをつけてNHKニュースを見る。震源は能登地方だった。 一度おさまったかと思ったが1分もしないうちに再び揺れ出す。20秒ほど遅れてスマホの地震警報が鳴る。今度は家ごと揺れている感覚があり、少し焦る。大きな音を立てて激しく

          令和6年能登半島地震ルポ金沢市より①

          しかし、パラレルはそこに

          鼻から空気が細く吹き抜ける音が鳴る。 どこからか、あるいは何者からかやってきたそれは 細胞によってカラダを構成せず、自分以外の細胞に入り込んでは生命を繋ぎ止めているらしい。 コイツがアタシの体の所々に自らの存在を知らせるサインを出し始めてから数日。鼻は依然詰まったりそうでなかったり。連発していたくしゃみは止まったものの、喉に引っかかった痰がしつこい。 どうぞアタシの身体を啄み、またどこかの誰かのところへ住み着くのでしょう。さようなら。 りんごを食べる。 数時間ほど前に遅めの

          ひだまり

          雨に打たれたい 夏の暖かい雫に 巡り巡っていくの 空に浮かぶ雲のように 大好きなものは最後までとっていたいから 眠るまで行かないでおくれ 青の中に響き渡る叫び声 応えようと伸ばした手が触れたよ あのそよ風は君だったね 時計さえも止まるような  ひだまり 明日の天気次第で行き先が変わる日々 大体のことはいつも何とかなる僕らみたい お腹が痛いことにして逃げ込んだトイレ 水に映るは波に飲まれていく黒子 人生のオーバーエイジ マジックアワー 自分の夢くらい無責任で行け

          羅 ─ 列

          あれはアタシが幼い頃、まだ新幹線も通っておらずあの街が観光地になるずっと前の話。 いつも保育園に通う道のりに、地元では有名な氷屋さんがあった。 朝方にはもうお店の入り口が大きく開いていて 大きな四角い氷の柱を回転するカッターで切り分ける音が鋭く通りにこだまし、仕事や学校に向かう人々の眠気を強烈に覚ましていた。 保育園児の時分はとにかくその音が怖くて、お店の前を通る時はまるで、予防注射の日、小児科に引きずり込まれる時のように、目一杯その氷屋さんとは反対側に体を翻しながら目をつぶ