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エスゾピクロンとの和解

職場復帰を諦めた挙句、薬によって睡眠の質を改善することも放棄していた僕ですが、再び労働に従事することとなった。

睡眠障害を抱えたまま働けるか?いいや、無理だね。
不眠と向き合わない限り、結局またジリ貧になってしまう。机の引き出しを開け、三たびアイツとの邂逅を果たす。睡眠薬エスゾピクロン9錠。つい先日、不眠を改善するために1錠だけ試して匙を投げた(「匙を投げる」の極めて正しい使い方)。今はもう君しかいない。こんな不遜な僕に、どうか力を貸してくれないか。

パキッ。と、鈍くも軽快にも聞こえる音を立てて錠剤が飛び出す。エスゾピクロン1錠(2mg)。この間飲んだ時は、ひどく不愉快な思いをした。けれども、翌日に労働を控えて寝付けないほうがよっぽど苦しいのだ。して、半ば強引に眠らされるのもやぶさかではない。錠剤を口へ放り込んだ後、水で勢いよく流し込む。姿勢を整えてベッドに横たわり、胸の上で両手を重ねて祈りのポーズをとる。神様仏様エスゾピクロン様。どうかどうか。どうか一つ、僕に穏やかな眠りを。

祈りは届いた。打倒インソムニア。苦しみも不快感もなく、まったく自然に僕は眠りについていたのだ。辛酸を舐めさせられた先日の一件が嘘であるかのよう。本当に同じ薬を飲んでいるのか疑わしい。そのくらいに、僕は圧倒的快眠を堪能したのである。

まずは謝りたい。エスゾピクロン、先日は君のことを随分とこき下ろしてしまった。申し訳ない。「過ぎたことはいいよ、気にするな」…だって?なんて心の器の大きいやつなんだ。図体は僕よりはるかに小さいというのに。しかしな、それでも僕の気が収まらないんだ。ひと思いに一発殴ってくれ!「よしな。俺たち、『マブ』だろ?」...だって?おいおい、君はどこまで情に厚いやつなんだ。さすが僕ら人間と同じ有機物なだけあるぜ。

THE END OF 茶番。
なぜだか分からないが、2錠目以降のエスゾピクロンは僕の身体へ見事にマッチした。副作用として、翌日も頭が若干ぼんやりするのだが、いつも頭の中が多動でゴチャゴチャしている僕にとってはむしろ好都合。余計なマイナス思考を生み出さずに済むので前向きに捉えている。

憂うべきは、気持ちがかなりエスゾピクロンに依存していることだ。「薬さえ飲めば眠れる」と安心してしまっている。一見良いことのように思えて、不安な気持ちを和らげるため1つの物に頼り切っているのはとても危険。いざ薬を切らした時、薬が効かなくなった時、僕はきっとパニックを起こすだろう。薬による不眠の改善は一時凌ぎ程度に考え、次なる段階に目を向けなければならない。結局のところ、僕と睡眠障害の闘いはまだまだ続いていくのだ。

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