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第23話「旅行会社でアルバイト」
東急観光から内定通知を受けたカツヒロは、次の目標を何にしようか?と悩んでいた。
ミニストップのアルバイトは、就職活動が落ち着くまでとの約束で、しばらく休んでいた。そろそろ、復帰しようかと思っていたら、7月1日から3週間の企業研修が始まる事を知らされた。
この企業研修と言うのは、専門学校生にとって授業の一部とみなされる。学生達は、旅行会社や観光関連企業に出向き、実際に仕事をさせて頂ける。
学校側にしてみると、学生達に貴重な職場体験の機会を提供できる事がメリットとなり、一方、企業側は夏の繁忙期に人手を確保出来るから、お互いにとってWin-Winの関係と言える。
学校の授業とは言え、一応、時給ベースでアルバイト代が支払われるから、学生達にとってもありがたい。そして、この研修を無事にやり終えると単位が付与されるシステムだ。
カツヒロは別のクラスの楠田愛子と一緒に、渋谷旅行センターにて企業研修をする事になった。
渋谷駅から徒歩で10分、道玄坂の上の方にある。この会社はアイランド・コレクションツアーと言う、自社企画商品の販売が業務の90%以上を占めていた。
このアイランド・コレクションツアーと言うのは、海外リゾートホテルと航空券をセットにしたツアーで、シンプルな旅行商品。添乗員は同行しないが、委託を受けた現地係員が空港やホテルのチェックイン、送迎などを対応をする。
カツヒロ達はフィジーとタヒチ、それとモルディブ行きツアーを担当させていただいた。主な旅行者はハネムーンカップルとダイビング愛好者だ。
「武藤君と楠田さん、先ずは封筒セットをやってみようか?」
と今年入社された社員の男性に言われた。
「はい、よろしくお願いします。」
二人は元気に答えた。
封筒セットとは、ツアー参加者向けの書類やギブアウェィを封入する作業の事。セットの中味は①ツアーバッチ、②荷物タグ、③パスポートフォルダー等のギブアウェィを2個ずつ入れておく。ツアー参加者はカップルが多いので、基本は2人用だが、一人参加や奇数参加のお客様の場合はこのギブアウェィの数を調整するだけで良い。
これに確定旅程表や成田空港で受け取る航空券の引換券やバウチャーを追加で封入し、出発10日前ごろにお客様に発送する。この販売方法だと、お客様はわざわざ旅行会社に足を運ぶ必要が無く、電話と書類のやり取りだけで旅行の手配が済むから、完全に通信販売型の旅行だ。今でこそ、こういう通信型の旅行商品はたくさんあるが、その当時、海外パック旅行を通信販売で売っていた旅行会社は少なくて、そのスタイルが世の中から支持されていた。
非常口の近くに山積みされている段ボール箱の前に案内され、2時間ぐらいその作業に没頭した。それが終わると、ランチ休憩が入り、午後は"申し込み客向け書類セット”を作らされた。
今度の仕事は、①旅行申し込み書、②旅行傷害保険のパンプレット、③お土産品の案内、④送り状を、それぞれ3つ折りにして同じ封筒にセットして行く作業。
1時間ぐらい、ずっと同じ作業。ランチを食べて、お腹が満たされたのと、初日の緊張感からくる気づかれから、カツヒロは眠くなってきた。
ヤバイ、このままだと寝ちゃうかもしれない。カツヒロはこの眠気を追い払おうと、封入作業に没頭する愛子に声をかけた。
「楠田さんは、好きな場所にハネムーンに行けるならどこが行きたい?」
お互い、今日が初対面だから何を話せば良いか分からなかったけど、壁に貼られいるタヒチのポスターが目に入ったので、会話のきっかけに使う事にした。
すると、愛子も退屈し始めていたようで、タイミングはバッチリだった。
「私はフランスのモンサンミッシェルに行きたいな。子供の頃から強い憧れがあって、一生に一度で良いので行ってみたいと思ってます。」
「へー、モンサンミッシェルか。俺も何時か行ってみたいなあ。だけど、アイランド・ツアーで行く、モルディブ水上コーテージもよさそうだよ。」
「そうですね。1週間滞在したら一人50万円は必要みたいだけど、何時か素敵な人と水上コーテージに泊まれたらいいですよね。」
と愛子は笑った。
「そうだね、先ずはお互い素敵な人を見つけないとね。」
こういう単純作業も、仕事を覚える上で大事だけど、一人でやるより複数でやった方が作業がはかどる。大体、200セットぐらい封筒セットを作ったら休憩して良いと言われたので、二人で200セットを作り終えた。
定刻の18時になり、カツヒロ達は帰宅の準備をしていると、社長の西村が社員全員に声をかけた。
「よっし、今週金曜日は二人の歓迎会をやるから、皆、夜、時間を空けておいてくれ。」
すると女性社員の一人が席を立ち、嬉しそうに社長に腕を絡ませた。
「ヤッター、社長のおごりですよね。あー、嬉しい。私、金欠だから、社長、お願いしますよ。」
「いいよ、だけど、その代わり、チョメチョメ1回、オッケーだからね。」と真面目な顔で言い返した。
「あら、ヤラシ―、私、社長の愛人にさせられちゃうの?それなら特別手当が出るのかしら?」
最初二人の会話を聞いていて、「これ大丈夫かな?セクハラすれすれ?」と心配したが、直ぐにそれは勘違いだと気づいた。
なぜなら、二人とも本当に楽しそうで、周りの社員も笑っていたから、深刻に受け止める様子はない。多分、こうやって皆で冗談言いつつ、仲良くじゃれ合っているんだ理解した。
会社は西村を含めて社員は全部で11人。男性が7人、女性が4名。設立5年目で、社長以下、従業員同士、とても仲が良い。20代の社員が多く、若くて元気があり、業績は上向きのようだった。
・・・。
3週間の企業研修はあっという間に終了した。
日を追うごとに二人が任される仕事の種類や量も増え、お客様へ送る封筒のあて名書き、申し込み書類や入金チェック、最終旅程表の作成も任されるようになった。2週目からは電話応対やカウンター対応も手伝った。
夏休み中もバイトを継続しかないか?と二人は誘われ、カツヒロは8月末まで継続したが、楠田は就職活動があるという理由で断った。
つづく。
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