第57話「オークランド空港見学:ブリーフィング、ロスター、ID写真撮影、デットヘッド」
トレーニング2日目。
8:30にクラスに集合した後、ジャンボタクシー2台に分かれて国際線ターミナルへ移動。このジャンボタクシーは今後、乗務で空港へ行く際に利用するタイプと同じものだとミッシェルから説明があった。
キウイエアラインのCAやパイロットは乗務で空港へ移動する場合、自宅から最寄りのピックアップ・ポイントと呼ばれる地点へ行き、そこから会社が手配した、このジャンボタクシーに乗り込む。このジャンボタクシーには、同じ便に乗務するクルーや出発時間が近いクルーがまとめて乗り込みオークランド空港まで運んでくれる。
ピックアップポイントは20か所程度あり、5つのルートが用意されている。お金はかからないリムジンバスのようなもので、東京行き、神奈川行き、埼玉行きのような感覚かな?とカツヒロはイメージした。
日本の様に空港直通電車がないから、今もこのシステムを使っている。自動車社会のニュージーランドらしい部分かも知れない。これは、オークランド空港が郊外にある事も原因の一つと言える。
グランドスタッフや一部の乗務員は、オークランド空港の駐車場を年間契約している人もいる。彼らは自宅の近くにピックアップポイントが無いケースや、駐車料金を払ってでも自分の好きな時間に通勤、帰宅したい人が利用しているそうだ。
その代り、ジャンボタクシーを使用せず自力で出社する場合は、リポートタイム(集合時間)に遅れた場合、自己責任となる。反対に会社の手配したジャンボタクシーを利用する場合はリポートタイムに遅れそうな場合、自動的に会社へ連絡が届く。だから、遅刻扱いはされない点と無料で利用できるので、多くの乗務員がこちらを利用している。
国際線ターミナルに到着した一行は、空港の裏側、関係者以外立ち入り禁止のドアを超え、国際線オペレーションセンターへ向かった。入口のセキュリティゲートは電子ロックがかけてあり、重圧なガラス窓の向こう側には乗務を控えた先輩クルー達がコーヒーや紅茶を飲みながら談笑をしている。
先頭のミッシェルが、4桁のパスワードを打ち込み、ドアが内側に開いた。カツヒロ達、新人CAはミッシェルの後に続いた。
3部屋あるフライト前のブリーフィングルームで使用されていないひと部屋に移動して、全員が席についた。
※ANAさんの乗務前ブリーフィングの写真
「あと、5分ほどすると11時30分発のシドニー行きB767-300に乗務する8人のFA達によるブリービング(フライト前の打合わせ)が始まるから、それを見学させてもらういます。皆、しっかりチェックしてくださいね。」
ミッシェルから指示がでた。
「はい。」
ブリーフィングが始まると、ISD(インフライト・サービス・ディレクター)のスティーブンが最初にトレーニング生たちの事を簡単に紹介してくれた。
「皆、今日は13名のスペシャルゲストがいます。彼らは昨日からトレーニングが始まったばかりの新人クルーです。どうか、仲良くしてあげてくださいね。」
「お~。皆、ようこそキウイエアラインへ。スゴク緊張しているようだけど、大丈夫だよ。この仕事は本当に楽しいから、トレーニングが終わって一緒にフライトするようになったらよろしくね。」
ISC(インフライト・サービス・コーディネーター)のリアンが代表して応えてくれた。
その後、ホワイトボートを使って、乗客数:C(ビジネス)クラス18名、Y(エコノミークラス)189名、スペシャルミールが10個、車椅子が必要なお客様が2人、ゴールドエリートと呼ばれる、キウイエアラインのマイレージプログラムで最高ランクのお客様が3名ビジネスクラス1AとB、4Kに座っていると言った情報を共有した。
先輩クルーたちはリラックした雰囲気でチーフからの説明を受け、メモを取ったりしていた。
ブリーフィングの最後に、それぞれのCAに担当ポジションが伝えられて解散。ほんの5分程度で終了だった。
カツヒロたちは次に、乗務員のロッカールームに移動した。
入社2日目の13人の書類用のロッカーは入口から近くのキャビネットの一番下の引き出しで、そこのキャビネットだけ、乗務員の名前の頭文字として書いてある、ローマ字のAやSと言った文字でなく「Temporary staff」と赤く目立つ字で書かれたマグネットが貼ってあり、とても分かりやすかった。
ケイトが尋ねました。
「ミッシェル、私たちのロスター(乗務スケジュール)って、何時いだだけるんですか?」
「確か、10月20日前後だったと思うわ、ロスターは4週間毎に発行されて、年間13回作られるの。」
「ロスターが完成すると、ここにある個人フォルダーに一枚づつA4用紙で配布されるのよ。」
それを聞いていたアンディが「わー、楽しみだね。最初のフライトはホノルルに行きないなー」と言うと。
側にいたスーザンが、「私はフランフルト便に当たらないかなぁ?」と返し。
更にサラが「フランクフルト便は現地6泊のDutyだから、人気が高そうだよね。私は、日本便にアサインして欲しいなぁ~」
とそれぞれ、皆、希望するロスターの話をはじめ、盛り上がった。
次に国内線ターミナールに向かいました。
ターミナルに到着すると6人と7人の分かれて、空港職員用の証明写真を撮影してもらうグループと国内線乗務員が利用する休憩室に向かうグループに分かれた。
カツヒロは写真撮影グループで、指定された事務所の一室に向かった。そこでパソコンを前に全身写真と上半身の写真を撮影し、最後に署名をした。
この写真はスタッフ用IDに利用され、空港を管理する会社の審査を経て、大体10日前後で発給されるそうだ。
「このIDカードはパスポートと同じくらい大切なもので、仕事に行く際は必ず持参しないといけないものです。」
と少し強い口調でミッシェルが話していた。
空港や航空機はハイジャックやテロ攻撃などのターゲットにされる可能性もある。だから審査や管理が厳重に行われるのは当然だ。とカツヒロはお待った。
およそ1時間程で全員の写真撮影と署名が無事に済んだ。その後、国内線をデットヘッド(乗客として移動する任務)する場合の手順と、その際に立ち寄るカウンターの説明があった。
オークランドベースの国際線のCAは数こそ少ないものの、時々、デットヘッドでクライストチャーチにフライトし、翌日、早朝便でシンガポール便やサンフランシスコ便に乗務する事がある。そう言う時に利用すると説明だった。
その説明が終わるとトレーニングセンターに戻って、ランチ休憩になった。
つづく。
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