第20話「外国人とシェアハウス」
成人式の後、カツヒロは木更津駅の東口にある居酒屋で、週6日アルバイトをする事になった。
夕方5時から12時まで、途中、まかない休憩があって20分ぐらい休めたが、基本はずっと立ち仕事。洗い場やキッチンのサポートをする事もあったが仕事の中心はホールスタッフだった。多い日だと、250名ぐらいのお客さんがやって来る。カツヒロの他に高校生のアルバイトが3人、社会人フリーターが4人程一緒に働いていた。
平日はだいたい4人、週末や大口の団体予約がある場合は、5人体制でホールスタッフをしていたが、かなり忙しかった。
居酒屋と言うのは、オーダーが1回だけで済むレストランとは違い、追加の飲み物や食べ物がどんどん入る。オーダーを調理場にまわし、出来上がった料理をテーブルに運ぶ。そうしているうちに、別のテーブルの様子を見て、食べ終わったお皿を下げたり、お客が去ったテーブルの片づけと準備を終わらせる。
最初の3日間ぐらいまでメニューを覚えたり、様々なルールを理解するまで時間がかかったけど、1週間が過ぎた頃には、両手でビールジョッキを10個運べるようにもなっていた。
夜は居酒屋のアルバイト、昼は木更津自動車教習所に通って普通自動車免許取得に励んだ。春休みになると高校3年生が一気に増えるから、それまでに免許を取ろうと頑張った甲斐があり、3月初めに免許を取得した。
「そろそろ、東京でアパートを探さないとな。もう一回、新聞奨学生をやる手もあるけど、就職活動や旅行会社での企業研修もあるから、別のバイトにしよう。」
メルボルンから帰国して、早2か月半が過ぎていた。
英語をもっと喋りたい。だけど、東京でメルボルンみたいにフラットメイトを探すにはどうすればいいだろう?
当時は未だ携帯電話もインターネット通信も大して普及していなくて、ようやくポケベルが出まわり始めていた頃だから、情報を得ようと思ったら図書館とか市役所の掲示板、新聞や雑誌を利用するしかなかった。
袖ヶ浦図書館でJapan Timesの個人広告コーナーに、外国人の同居人募集投稿が数件あった。場所は広尾や六本木、渋谷など家賃がスゴク高い地域だ。恐らく、日本に駐在しているエリート外国人のモノなんだろう。
他に何かないかな?別に人気エリアや東京の中心部でなくてもいいから、出来るだけ安い物件の方がありがたい。明日、しばらくぶりにトラジャルに行って相談してみよう。
1年ぶりに東中野のトラベルジャーナル旅行専門学校を訪問すると、春休み中だったから学生は殆どいなかった。同級生達は既に卒業してしまったようだ。誰かに会えたら嬉しいなと期待していたから少し残念だった。
学生相談窓口を訪問すると、「今は無いけど時々、留学生同士が同居人を探している事があるから、そういう案件が出たら紹介すると言われた。」
まあ、仕方ないか。久々に教務室を訪問すると担任の山本先生や添乗実務の池田先生、海外地理の七瀬先生らがカツヒロを迎えて入れてくれた。
「無事にオーストラリアから帰国しまして、4月から2年生として復帰します。どうぞよろしくお願い致します。」
カツヒロがあいさつを済ませると、たくさん留学中の事を質問された。それらを全て答え終わった所で本題のアパート探しについて相談すると、英語の田中先生が雑誌を持って来た。
通訳ジャーナルと言う、雑誌で通訳や翻訳家を目指す方向けの本だった。その雑誌の広告に「Tokyo English Center:日本人と外国人が同じ部屋に住んで、英語と日本語をシェアする場所」があった。
場所は杉並区上高井戸、井の頭線の富士見ヶ丘駅から徒歩10分、料金は月4.5万円、トイレ、バス、キッチンが共有。と言う事が分かった。
「これだ、俺が探し求めていたものが揃っている。」
先生、ありがとうございます。カツヒロは早速、その日のうちにTokyo English Centerを訪れた。
「初めまして、本日、電話した武藤と申します。見学に参りました。」
「こんにちは。代表の泉です。良く来ましたね。そこで、靴を脱いでスリッパに履き替えて下さい。」
「はい、それではお邪魔します。」
「え~と、武藤さんは専門学校でしたよね。学校はどちらですか?」
「はい、トラベルジャーナル旅行専門学校と言い、東中野にあります。」
「あー、あの学校か。悪いけど、あんまり好きじゃなくてね。前に東中野に住んでいた事があってね。その時は学生が道路いっぱいに広がって歩いて、邪魔だと注したら、無視されてね。頭に来たから学校に直接クレームを伝えた事があるんだよ。」
「そうでしたか、それは申し訳ございませんでした。」
「いいんだよ、武藤さんとは関係ない話だから。」
代表の泉は雰囲気からおよそ40歳ぐらいに見えた。顔は綾小路きみまろさんに似ていたが目は鋭かった。このTokyo English Centerを始めたきっかけは、20代の頃にバックパック背負って世界を旅した事らしい。その旅行の際、たくさんの外国人にお世話になったから、その恩返しのつもりでやっているそうだ。
「今、ここには何人ぐらい住んでいるんですか?」とカツヒロは尋ねた。
「日本人が8人、外国人が9人だったかな?全部で12部屋あるから、まだ十分余裕はあるよ。」
「外国人はどこから来て、日本でどんな仕事をしているんですか?」
「そうだね、オーストラリアやニュージーランド、カナダ、アメリカ辺りが中心だね。日本で英語の先生や外資系企業で働いているよ。あと短期の旅行者とか、ワーキングホリデイ組も時々、利用するね。」
「そうなんですか、私、一月までメルボルンに留学していたので、オーストラリア人と同じ部屋だと良いなと思いました。」
「そう、一応、入居者の希望は聞きますが、希望通りにならない事もあるので、その点はご理解下さい。」
「はい。分かりました。本日は突然、お伺いしたのに親切にご案内頂きましてありがとうございました。」
カツヒロは、施設内を見学させて頂いた後、ここに1年間お世話になる事を決めた。
つづく。
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