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第34話「ロンドンのホストファミリー」
カツヒロを乗せた迎えの車は、ヒースロー空港を出るとM25モーターウェイを飛ばした。このM25と言うのは別名ロンドン・オービタル (London Orbital) と呼ばれ、イングランドの首都ロンドン(グレーター・ロンドン)の周囲を繋ぐ総延長117マイル (188 km)の環状高速道路の事だ。片側4車線の高速道路で交通量は多い。
車はおよそ1時間半近く走り、ホームステイ先のあるArchwayという場所に止まった。ここはロンドン地下鉄、通称チューブの駅のノーザンラインでぎりぎりゾーン2になる。
運転手がドアをノックする間にカツヒロは、スーツケースや荷物をトランクから降ろした。
「こんばんは」主の女性が出て来た。
少しふっくらとした体つきで、ストレートの髪は黒く、ちょうど肩ぐらいの長さだ。大学3年生の娘と高校2年生の息子がいるそうなので、年は40半ばから後半ぐらいだろうか?黒いズボンにえんじ色のセーターを着ている。
「こんばんは。学校から依頼を受けて、あなたの大事なお客さまを連れて来ましたよ。」とドライバーは伝えた。
「ありがとうございます。では確かにゲストをお預かり致しましたので、お気をつけてお帰り下さい。」
それを聞くと、ドライバーはほっとして、カツヒロに忘れ物は無いかとも確認せずに、さっさと帰ってしまった。
「武藤さんでしたよね。ホストマザーのサテイヤです。今日から3か月間、よろしくお願します。」
「はじめまして、サテイヤさん。名前がカツヒロなんで、カツと呼んで下さい。今日からどうぞよろしくお願いいたします。」
「わかったわ、カツ。じゃあ、家の中を案内するか、そのまま靴で中に上がって下さい。」
「はい。」
二人は先ず2階に上がった。
「あなたの部屋は2階の入り口側ね。廊下を挟んで反対側が私の寝室。それから、その先にトイレとシャワー室。先ずはお部屋に荷物を降ろして。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ、今度は1階を案内するわ。ここの入口を入ってすぐの部屋は、今空室中なの。でも、2週間ぐらいすると、ブラジル人の生徒が来る予定よ。それから、奥の部屋は娘のレベッカの寝室ね。反対側はリビングとキッチンで、この階段を下ると地下室があるの。着いてきて。」
カツヒロはサテイヤに言われるままに、地下室に降りた。大きさは畳6畳ほどの広さで、洗濯機と乾燥機が備え付けられていた。
「洗濯物は週2回まで。それと、乾燥機を使うのは週1回で15分までにして下さい。この国の光熱費ってとても高いの、だから、それ以上必要な時は、1回につき1ポンドを払ってもらうようにしているの。春から、夏になれば外に干すだけで乾くんだけど、冬は日照時間が少なくて中々、乾いてくれないの。」
「そうなんですか、分かりました。」
15分ぐらいサテイヤから、家のルール説明を聞いた後、夕ご飯を食べないか?と誘われたが、さすがに時差や長距離移動で疲れていたので、丁重に断った。
・・・。
カツヒロは入国の際、9か月間の学生ビザが発給された。だから、希望すれば9月5日までイギリスに滞在出来る。英語力を磨くための語学学校には6か月間通学し、残りの3か月でヨーロッパ旅行に出かけるつもりだ。
計画だと8月末に帰国し、実家の稲刈りやお米の供出などを2週間手伝い、10月10日に一般旅行取扱主任者試験を受験する。それが終わったら、プロ添乗員として、大手旅行会社の専属ツアーガイドに成ろうと思っていた。
やらせてもらえるならJALパックか、Look JTBの添乗がいいな。それがダメでも添乗員は何時でも募集があるから就職するのは問題ないだろう。そうそう東急観光系のトップスタッフでもいいか。
そんな事を考えつつ眠りについた。
翌日、トーストにジャムを塗り、ベーコンエッグとヨーグルト、オレンジジュースで朝食を取っている所に、娘のレベッカが現れた。
「初めまして、カツヒコさん。同居人のレベッカです。ようこそイギリスへ。」レベッカは明るい声であいさつすると手を差し出した。
「初めまして、レベッカ。日本から来たカツです。よろしくお願いいたします。」カツヒロも笑顔で握手をした。
彼女の父親がどんな人か知らないけど、顔はそれ程、母親に似ていないが、オリエンタルな雰囲気は感じられる。肌の色は褐色がかっており、丸くて大きい目と広いおでこが特徴だ。身長は165㎝ぐらいあり、スラっとしてモデルのような体形だった。
「カツは、どうしてイギリスへ留学しようと思ったの?」
「一番は英語を勉強したいからだけど、ヨーロッパ旅行をして見たいと思ったからなんだ。」
「そう、では、どのくらいロンドンに滞在するの?」
「多分、半年ぐらいかな。6か月語学学校に通って、その後旅行に出かけるつもなんです。」
「そうなの、私はね。母から聞いたかも知れないけど、今、音楽の大学に通っているわ。平日は大学とアルバイトがあるから、家で過ごす時間は少ないけど、何か困った事があれば、遠慮せずに聞いてね。」
「ありがとう。困った時はそうさせて頂くよ。」
「じゃ、私、今から外出するんで、楽しい日曜日を過ごしてね。」
レベッカはそう言い残した後に、カツヒロに軽くハグをしてから、外へ出かけて行った。
朝食を終え、食器を洗った後に紅茶を入れた。日本にいた時はいつもコーヒーだったが、これからイギリスに住むわけだから、紅茶になれておこう。少しミルクを多めでメルクティーを作った。
サテイヤって、仕事、何しているのかな?あと高校生の息子がいるっていったけど、この家には部屋がなさそうだけど、どうなっているのかな?
しばらく、リビングルームでくつろいでいたらサテイヤがやって来たので、仕事と息子について聞いてみた。
すると、「私は2つ仕事をやっていて、メインの仕事は翻訳なの。子供の頃にポルトガルで育ったので、英語以外にポルトガル語が出来るのよ。それから2つ目の仕事はシンガーなの。歌の方は不定期なんだけど、週に1,2回パブやレストランで歌う事になっているの。」
「へー、すごいですね。」カツヒロは、心から驚いた。
「それから、息子の事よね。ジェームスは今、南ロンドンの学校に行っているのだけど、ここからだと少し遠いから、おじの家にお世話になっているの。そうね、月に1,2ぐらいはここへも顔を出しにくるから、いずれ紹介するね。」
「はい。ありがとうございます。」
二つの疑問がクリアになり、カツヒロはスッキリした。他にも何か聞いておこうかと思ったが、もう少し慣れてからにしようと、それ以上は止めた。最寄り駅のArchwayまでの行き方を地図に書いてもらい、駅の下見とスーパーで買物するため外に出た。
つづく。
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