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第48話「CA受験スクールに通学」

1999年1月からスカイビジネススクールに3か月通った。この学校でカツヒロが学んだのは、書類選考を通過しやすい履歴書やResume,Cover letterの書き方と面接対策だ。

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カツヒロがそれまで自信をもって書いていた和文の履歴書は、かなりのダメ出しをされた。特に自己PRをしようと、ぎっしり細かな字で特技や趣味を書いている箇所と志望動機欄は、大きく✖印をつけられ、「書きすぎ、シンプルで見やすいモノに変更する事」と書かれていた。

それから、写真もこだわる様にと。それまでは、地元の写真店で撮影した全身と上半身の写真を使っていたが、CAやアナウンサー合格者を多数出している有名スタジオで取り直すことになった。スチュワーデスマガジンには、CA受験スクールと合わせて、受験用写真スタジオの広告が多数出ている。

どこのスタジオもこれまでの合格者実績を大体的にアピールしており、選択肢は無数にあったが、同じスカイビジネススクール仲間がお勧めのスタジオデーバを予約した。このスタジオはCA,アナウンサー受験者はもちろん、ミス・日本代表や様々なオーディション、政治家の選挙ポスター撮影まで扱っている。

最低、2万円からと言うことで、これまでの10倍近くの費用が掛かったが、自分の人生に対する投資だと割り切って撮影を依頼した。90分の撮影にメイク付きで、2.5万円。応募写真にこだわる人だと、受験するエアライン毎に撮影をする。本当にそれが効果があるのかは不明だが、エアライン毎にコーポレートカラーや社風が異なるのでスーツの色を変えたり、メイクや髪形も変えて取り直す。

スチュワーデスマガジン

スカイビジネススクールの特徴は、厳しいダメ出しと昭和的な根性論を含めた指導方法。大体、6~7名ごとにパーテション仕切られた小部屋で外国人講師又は、日本人で外資系エアライン経験者の講師とレッスンを受けるのだが、レッスンの冒頭5分間は、全員が大声でPA(機内アナウンス)を読まされる。

はじめて、この場面を見た時は、何かの宗教団体のような異様さを感じたものの、案外大声を出すと脳が活性化されて、授業に集中できる。また、その時は気づかなったが、後にCAになった際のエマージェンシートレーニングの時に役に立った。※(CAは訓練でEmergency Braceなど大声を出す)

CAを目指す生徒が通うナイトスクールだから、圧倒的に女性が多い。そのうち半分は、国内エアラインの新卒合格を目指している大学3,4年生だった。彼女たちは、面接練習で詰まると容赦なく厳しいダメ出しをされる。最初の1,2回は何とか耐えるが、3,4回と続くと。泣き出して練習にならない。

21,22歳の女の子にとって、体育会系の部活のようなシゴキは堪えるようだ。カツヒロと同時期に入学した何人かがシゴキに耐えられず2週目から来なくなってしまった。

根性論なのか、精神論なのか?分からないが、レッスンの後、生徒たちで廊下とトイレ掃除もさせられた。普通、生徒はお金を払って通学しているのだから、本来はスクール側が掃除をすべきなのだろうが、雑巾とほうきを渡され10分ぐらい掃除をする。

スクール側の言い分としては、「CAになったら機内清掃を積極的にやる必要があるから、普段から掃除をする習慣を学ぶ。」という事らしい。とにかく外資系エアラインに多くの合格者が出ていたから、生徒たちは黙ってスクールの方針に従った。

カツヒロは、3か月間で入学金、レッスン代、書類添削費を合計すると20万円ほどスクールに支払った。3か月前と比較して、CA受験の基本ノウハウが身についた事、同じ目的の仲間を得られた事も大きかったが、特に優秀な生徒(すでに最終面接に呼ばれれている人や国内エアライン現役CAで外資系に転職を目指している人)を観察する事で自分に不足しているモノが客観的に理解できた事が最も大きかった。

尊敬する先輩に言われた言葉に「仕事がうまく行かない理由は次の3つが不足しているから」と言われた事がある。一つ目は行動力不足二つ目は情報不足、3つ目は想像力不足。カツヒロは、自分が客室乗務員になるためのプロジェクトに不足しているモノを一つ一つ減らして行くことにした。

一つ目の行動力不足は、スクールに通ってノウハウを得たから、どんどんエアラインに応募する事を続けた。ダメ元で日本でCA募集があった外資系航空会社のほぼ全てに応募書類を送った。それが現在募集中の会社以外であっても、CAの欠員募集が出るようなら、是非、面接に呼んで下さいと。

結局26社にResume,カバーレターを送って、返事があったのは2社だけ。ユナイテッド航空とルフトハンザ航空の人事部から現在欠員補充の予定はないが、実施の際は連絡をすると手紙をもらった。

二つ目の情報不足は、スクールで人脈を得た事と、クルーネットやスチュワーデスマガジン、Japan Timesの求人募集欄を確実にチェックする事に。又、千代田区内幸町にある航空資料館にも良く出かけた。ここは航空関係の資料や書籍が豊富に揃っており、外資系エアラインに関する資料をたくさんコピーして企業研究を続けた。

三つ目の想像力不足に関しては、自分を客観視する事を意識した。エアライン業界未経験の27歳、男性の自分を客室乗務員として採用する会社があるとしたら、それはどんな理由になるのか?語学力、対面接客経験、コミュニケーション力、国際的な環境での経験、海外留学、ファーストエイド、手話、ワインやチーズの知識、観光地理、出入国関係法令知識・・・。

これらの要素の幾つかは自分にも当てはまるけど、これだけでは現役でCAをやっているJAL,ANA,JASのクルーと勝負しても、勝てないだろう。日本で外資系エアラインが新規のCA募集を出すと軽く50倍近い倍率になる。最終的に選ばれる100分3や50分の1になるためには、他の受験生にはない圧倒的な何かが無いと、その他大勢に埋もれてしまう。

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カツヒロは、KLMオランダ航空の書類選考で落ちた時、普通のやり方では書類選考すら突破するのも難しと悟った。そして、ルール違反と言われても良いから、一次面接が行われる当日の朝、KLMオランダ航空の日本オフィスの前で採用担当者が来るのを待った。

面接会場が東京フォーラムである事は受験仲間から得ていたので、前日の夜に都内のカプセルホテルに泊まり、朝の7時から日本オフィスの前で待ち伏せをした結果、予想通り担当者に会えた。そして、ダメもとで面接を受けさて欲しいとお願いしたら、その場でOKをもらった。11時30分からのグループで、一人欠員が出たからその時間にという事だった。

結果は残念ながら、1次面接で敗退だった。だけど、初めて外資系エアラインの本試験を受けた経験はその後に生かされた。その時、同じグループだった2人と面接の後、お茶をした。一人はJTBのカウンター、もう一人は外資系生保の事務。二人とも女性だった。一人は帰国子女でかなり英語が出来る。

カツヒロは二人以外の書類選考通過者も待合室で観察して、倍率が10~20倍の書類選考を通過して来た受験生がそうでなかった人との違い、優れた部分を見つけ出そうと懸命になった。

KLMオランダ航空での経験が生きたのか?5月にあったヴァージンアトランティック航空の書類選考は通過出来た。恐らく、カツヒロがイギリスに3年留学経験があった点が評価されたのだと予想した。

一次面接は男性受験者6人対、面接官2名。簡単な英語での自己紹介をした後、全体で20分程度の短い時間だった。大手商社、新聞社、外資系ホテル、英会話スクール、航空会社の地上職など、それぞれバラバラの仕事についている全員CA未経験者だった。結果は全員一次面接で敗退だった。

悔しさもあったけど、ここで考え方を変える事にした。普通に勝負しても、殆ど勝負をしてもらえない。ならば、日本国内で勝負をするのは辞めよう。

ニュージーランド永住権を取れれば、きっと道が開ける。

と信じて、エアライン就職活動と合わせて、永住権申請の準備を進めた。


つづく。

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