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第36話「学歴コンプレックス」

楽しいロンドン留学は、あっという間に3か月が過ぎた。        8月末に日本へ帰国するつもりだから、もう全体の3分の1が終わってしまった事になる。                            

カツヒロは、3月末でホームスティ先を出る約束だったから、4月から新しい住所に引っ越した。今度はセントラルラインのレイトンストーン駅(Leytonstone)から徒歩15分と結構遠い。ゾーン3だから地下鉄の定期券代はその分高くなる。

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しかし、レントは月に175ポンドと非常に安いから生活費は、これまでより3割ぐらい安くなる。一軒家を4人でシェアするシェアハウスで、モロッコ人大学生のアブデルとアイルランド人夫婦のジェームスとマリーが一緒だ。 カツヒロの部屋はきちんとしたベットルームではなく、スタデイと呼ばれる書斎だった場所を改造したものだったから、部屋は狭く、窓は小さい。そのかわり、賃料が他より抜群に安かった。それが、この家に決めた理由だ。

イギリスの家

クラスメイトで親友のカチャとイザベルは3月初めに祖国へ帰った。   二人とは本当に良く遊んだ。ある日、イザベルがテニスをやりたいと言い出して、3人で放課後にテニスコートを予約して、2時間プレーしたけど、思ったより下手くそで全然ラリーが続かなった。              本人曰く、中学時代はテニス部でもっと上手だったけど、しばらくやっていなかったから、全然だめだと言っていたけど、本当かどうかは分からない。

女の子相手だと手加減してあげないと、ダメなんだとカツヒロは反省した。

イザベルはそれでも、すごく楽しそうだった。彼女はパリの出身だから、「是非、遊びにおいで」と誘ってくれた。本当にカワイイくて性格が良い。

一方、カチャは日系ブラジル人で、日本に半年住んだ経験がある。ワーキングホリディを使って長野県のリゾートホテルで仲居の仕事をやっていた時にヤクザがやって来きた。その時、他の仲居達が怖くてビクビクしていたら、彼女は持ち前の明るい性格で、そのヤクザと仲良くなったらしい。日本語も少しだけ喋れたが、カツヒロ達とは英語で会話した。

フランスもブラジルもラテン系だからか、イザベルとカチャはとても元気で明るく、一緒にいると楽しかった。どちらとも恋愛にまで発展はしなかったけど、後になって思えば、イザベルはきっとカツヒロに思いを抱いていたのかも知れない。いつも彼女が積極的に誘ってくれた。

「フランス人の彼女が出来たよ。」って、冗談で両親に言ったら、将来、フランス料理が食卓に並ぶのかしら?なんて言わるのかも知れないと、ちょっとだけ妄想した。

二人とは、他の友達とは違う友情以上の強い絆を持てた。だから、二人そろっていなくなってしまった事がとても寂しかった。


毎月1回、学校のレクレーションツアーと言うのが合って、土曜日に希望者を募ってロンドン郊外の観光地に連れてってもらった。         1月はストーンヘンジ (Stonehenge)とソールズベリー大聖堂へ行った。ストーンヘンジはとにかく石が大きくてビックリしたけど、それよりソールズベリー大聖堂で見た"マグナカルタ”に大きな感動を得た。

ストーンヘンジ

マグナカルタって、高校の時、世界史で習った「世界最初の憲法」だ。日本は明治維新の後、イギリスの議院内閣制を参考にした事を考えると、このマグナカルタは今、日本人として生きる自分にも影響を与えている。そう思ったら「うわー、すげーなー。」って、めちゃくちゃ感動した。

だからカツヒロは、その事がとても嬉しくて、デービットの宿題日記に書いたのだけど、その背景が上手く表現できなくて?「どうして、マグナカルタが、カツヒロに影響しているの?」と不思議そうな顔をされて、中々理解してもらえなかった。

2月はストラッドフォード・アポン・エイボン(Stratford-upon-Avon)に行った。この町は文豪として有名なウイリアム・シェイクスピア生誕の地で、英国が誇る劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで芝居を見る事も出来る。美しいエイボン川のほとりや昔ながらの木造の街並みを歩くだけでもとても風情があって旅心をくすぐる。

ストラッドホードアポンエイボン

そして3月は学生の街、オックスフォード(Oxford)へ。オックスフォードは約40余りのカレッジが集まるイギリスで一番古い大学の街。オックスフォード大学と言えば、イギリスだけでなく世界中の秀才が集まる場所だ。   マーガレット・サッチャー、トニー・ブレア、デビット・キャメロンなどイギリスの首相だけでなく、パキスタンやカナダ、インドの首相、他多数の大物政治家を輩出している。                      他にもノーベル賞受賞者や有名な作家、企業のCEOなどが卒業生として名を連ね、日本の皇室関係では現天皇がマートン・カレッジ、皇后がベリオール・カレッジに留学している。

「俺もお姉ちゃん達みたいに、大学に行けたらよかったのに。」ふと、カツヒロは、自分が日本で大学を諦めた事を悔やだ。            

確かに、両親に金銭的な負担をかけたくないと思ったから、浪人をする事をせずに、旅行の専門学校へ進学した。だけど、大学を諦めた理由はそれだけではない。自分自身の学力に自信が持てなかった事も大きい。      本気で大学を目指していたなら、旅行専門学校でなく、浪人生をやりながら新聞奨学生をやる事だってできたのだから。

学歴に対するコンプレックスが無いと言えばうそになる。        

東急観光時代の同期は7割以上4大卒だったし、千葉支店の同期3人は、皆、大学卒だったから、負けたくないと頑張った。国内旅行取扱主任者の資格も入社前に持っていたし、旅行に関する専門知識、そして、旅行会社での企業研修体験。これらがあるから、3人には負ける気はしなかったけど、どこかで自分は3人に負けているような気もしていた。その負けている部分は、自分自身が大学受験を簡単に諦めてしまった事だとその時気づいた。

とりあえず、あと3か月間、必死に英語を勉強して、そこから先はヨーロッパ旅行をしながら考えよう

そう考えて、次の3か月も頑張った。


つづく。

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