第19話「帰国と成人式」
楽しかったニュージーランド南島旅行、そして、9か月半を過ごしたメルボルンとのお別れがやって来た。「寂しいな~、本当に。もう、俺、日本に帰っちゃうだ。」そんな事を考えていると中々眠りにつけない。1992年1月10日は友人の家に泊めてもらった。
フラットメイトとしてお世話になったウンソンは、カツヒロより一足先に韓国に帰国してしまっていた。昨日、クーヨンのフラットを訪れて、メラニーさんとデニスさんには別れの挨拶をした。ダンデノンロードのレスさんの所も訪問したが、あいにく留守だった。あとはICEの仲間達とのお別れだ。
ずっとクラスが一緒で本当に、一緒によく遊んだミカやタカエ、ヒロミ他、10名近くがわざわざメルボルン空港まで見送りに来てくれている。
「カツヒロ、しばらくぶりだね。旅行は楽しかった?」
「うん、おかげさまで、アッと言う間に終わってしったけど、本当に楽しかったよ。」
「いいな、カツヒロは。バンジージャンプやスカイダイビングもしたんでしょ?」
「うん、めっちゃくちゃ怖かったけど、とにかくやって見ようと思ってね。あとね、ケアンズでスキューバーダイビングもやったんだけど、凄くよかったよ。タカエやミカもチャンスがあればやった方が良いよ。」
「私もね、あと2か月ちょっとでICEが終わるから、そしたら一人旅に出ようと思っているんだ。ゴールドコーストまで行って、ムービーワールドとシーワールドへ行きたいと思っているんだよ。」
タカエは嬉しそうにそう話した。
「皆、わざわざ空港まで見送りに来てくれて本当にありがとう。日本に帰っても連絡を取り合って、何時か同窓会をやろうよ。俺が幹事をやるからさ。」
「わかった、絶対やろう。お前嘘ついたら、わかってるんだろうな」
「うん、大丈夫。絶対、約束は守るから。」
「じゃあ、皆、本当にありがとう。See you again !」
皆、カツヒロの姿が見えなくなるまで、手を振ってくれた。カツヒロも、負けじと力一杯手を振り返した。
飛行機が滑走路を飛び立った時、カツヒロは大粒の涙を流し始めていた。外の景色がにじんで見える。大好きだったメルボルンの街がだんだんと小さくなっていくのが分かった。30分ぐらい涙が止まらなかった。
「嬉しいのか、悲しいのか、寂しいのか。」俺の涙の原因は何なのだろう?多分、一つ言えることは、皆に助けられて、ここまでやって来れた事。苦し時も励ましあってやって来れた、仲間への感謝の気持ちがあふれ出て、こんなにたくさん出て来たんだろう。
メルボルンにいる間は、何時でも気軽に会う事が出来た仲間とも、日本に戻ってしまえば、そう簡単には会う事が出来ない。皆、帰国したら全国各地に散らばってしまう。「もう本当に一生会えないかも知れないんだ。」と言う現実をまだ受け入れたくない。
やがて水平飛行になり、シートベルト着用サインが消える。しばらくして乗務員さんが、テーブルに白いナプキンとおつまみのアーモンドを置いてくれた。カツヒロはオレンジジュースをオーダーし、それを一口飲んだ。
ようやく涙が止まり、別の事を考える余裕が生まれた。
「さて、日本に帰ったら、しばらくアルバイトを探さないとな。それから、自動車の免許も取っておこう。」「トラジャルの授業は4月からだけど、それまでにアパートも探さないといけないし、結構忙しそうだな。」
帰国して3日後に成人式に参加した。
会場の君津文化ホールには1,500名程の新成人が集まった。男子はスーツや羽織紐袴。女子は着物姿が殆どだった。久しぶりに再会した中学時代の友人たちとその日は夜遅くまで飲み歩いた。
「カツヒロ、お前、やたら日焼けしているけど、何やってんだ。」
同級生の男友達が少しからかうように声をかけて来た。
「成人式だから、ちょっと気合をいれて日焼けサロンに行って来てね。」
「ほんとかよ。お前バカか?」
「いやいや、本当は留学帰りなんだ。3日前にオーストラリアから帰国してね、今は旅行の専門学校生をやっていて、4月なったら東京に戻る予定なんだよ。」
「おう、そうなんだ。だったら英語がペラペラに喋れんだろう。カッコいいよな。」
「うん、そんなに上手じゃないけどね。将来、外国人と一緒に仕事を出来るようになれたら良いなと思っているよ。」
「ふーん、いいな。お前は頭が良くて。俺は高卒で、ずっと地元暮らしだから、お前みたいな東京暮らしとか、海外留学なんて考えた事も無いけど、本当は俺も東京や外国に行ってみたいんだぜ。うらやましいよな。」
カラオケで、「お前、英語の歌を歌えよ。」とリクエストされたけど、自信がないと断り、代わりにブルーハーツのリンダリンダを歌った。皆、酔いが回って、めちゃくちゃハイテンションだったけど、若かったから朝の4時頃まで騒ぎまくった。
つづく。
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