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第59話「初テスト不合格でがっくり」

教室に残された二人のうち、先にジャステインが別室に呼ばれた。

う~ん。何かまずい雰囲気だな。俺とジャステイン以外は皆、帰宅出来たのに、ここに残されたという事は、何か大切な話をされるのかも知れない。

カツヒロは一人ぽつんと教室に残され、ネガティブな事ばかり考えてた。

5分ほどすると、ジャスティンが戻って来て、カツヒロに言いました。

俺、80点だったから、明日の午前中に追試だって。最初のテストで追試なんて、やっぱり凹むよね。あー、俺、大丈夫かな?」

「そうだったんだ。合格点が90点だとプレッシャーが強いよね。だって、10問のテストだと、間違えてもOKなのは、1問だけだから。正直なところ、しんどいよ。」

と勝弘が答えると、

「そうだよね。でもさぁー、会社は俺たち訓練生を不合格にする事を目的にしているわけじゃないから一生懸命努力すればきっとなんとなるよ。

とジャスティンは自分自身に言い聞かせるように言って、その場を去った。

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カツヒロはミッシェルが待つ、103号室に呼ばれ、事の成り行きを説明された。

「カツヒロ。残念だけど、あなたとジャスティンの2人は午後のテストで80点だったから、明日、追試を行うのよ。」

やっぱり、そういう事だったんだ。カツヒロは自分一人だけでなく、英語がネイティブのクラスメイトが同じように80点を取って追試を受けると言う事実を内心嬉しく思った。「ありがとう、ジャスティン。君が赤点を取ってなかったら、めちゃくちゃショックだったけど、仲間が一人いてくれたから、本当に心強かったんだよ。」と本人に伝えてあげたいと思ったぐらいだ。

「そうですか。残念ですね。」

カツヒロ

とカツヒロは少しガッカリした調子で、答えると、ミッシェルが、尋ねました。

「あなたが間違えた2箇所だけど、一つ目はトイレの中からお客様が助けを求めて乗務員呼び出しボタンを押した際にトイレのドアの上の豆電球は何色に変わるか?という問題だけど、正解はアンバー(琥珀色)だけど、あなたはレッドを選んでいるわね。これには何か理由があるの?」

「実は、私はアンバーと言う色がどんな色だったか、今ひとつ覚えきれていなくて、乗務員呼び出しボタンを押した際はオレンジ色になると思っていたんだけど、選択肢にオレンジがなかったんで、レッドかアンバーかで悩んで、緊急事態の際は目立つ色の方が早く周りに伝わると思い、目立つ色という意味でレッドにしました。」

アンバー

※アンバー(琥珀イメージ写真)

「そうだったの、カツヒロはアンバーがオレンジに良く似た色という事を知らなかったんだね、だから、悩んで、グリーンか、レッドか、アンバーの内でレッドにしたんだ。」

「はい、そうなんです。もう少し、英語の語彙力を付けないとダメですね。」

「うん、そうかもしれないけど、大丈夫よ。」

ミッシェルは優しく笑顔で語りかけました。

「それから、もう一方の間違えた問題、お客様が機内で体調不良を訴えてこられた際、お水と“パナドール”を1錠差し上げる。正しいか、間違いか?だけど、正解はYes。あなたはNo.にしていたけど、どうしてNo.を選んだの?」

「パナドール(バファリンのような薬)がなんとなく、薬と言うことは分かったのですが、乗務員の判断でお薬を飲ませることは、病気を悪化させるリスクがあると思い、No.を選びました。」

パナドール

※パナドール(オーストラリアやニュージーランドの常用薬の一つ)

カツヒロはニュージーランドに住み始めて3週間ほどでしたが、まだパナドールを見たことはありませんでした。このパナドールと言う薬はオーストラリア人とニュージーランド人にとても人気のある万能薬のような存在で、日本の薬で言えば“頭痛にバファリン”と言ったような存在です。

カツヒロは旅行株式会社に勤務していた頃、時々、添乗員として国内外にお客様を連れて行くことがあり、その時の経験からこの問題に解答した。

添乗に行く際、体調を崩したお客様に胃薬や頭痛薬などを持ってないかと聞かれた際に、基本的に薬を勧めてはいけないと会社から教えられていた。その理由と言うのは、添乗員は医者や看護婦では無いので、誤った知識でお客様に薬を飲ませてしまい、何か問題が起きた際に責任問題になるからだ。

「キウイエアラインでも同じような対応をするのだろうと、予想してNo.を選んだのですが...。」

「そうなの、カツヒロはパナドールをまだ、見たことも触った事もないのね。パナドールは非常によく効く万能薬なので、機内でも常備しているから、医師や看護婦などの資格がなくても、処方して大丈夫なのよ。」

「え~、そうなんですか。全く知りませんでした。」

「そうだったのね。分かりました。あなたはまだニュージーランドに来て期間が短い分、知らない事も多いかもしれないけど、時間が過ぎれば色々と知識がつくはずだから、大丈夫よ。」

「明日は、機材毎の座席レイアウトの試験、それから、木曜日にB767-200と300のエコにミークラスのギャレーの引き出しやカートの中味のテストがあるから、大変だけど頑張ってね。」

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「ありがとう、ミッシェル。覚えることはてんこ盛りだけど、暗記するのは得意だから、次は100点取るよ。」

最後は少し、元気な声で挨拶した。

「分かったわ。楽しみにしているわ。また、明日ね。」

ミッシェルも元気にそう言い残し、その日の講義が終了した。


つづく

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