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スティーブのひとりごと

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『スティーブのひとりごと』は、毎日の生活の中で「これは語りたい」と思ったことを、メンバーそれぞれの新鮮な言葉でお届けします。Steve* Magazineは、クリエイティブカンパ…
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#東北

大学で教えてくれないことは、東北の居酒屋が答えをくれる。 1時限目「完璧の正体とは」

 夕方から霧雨が降り続いたせいか、いつもはギラギラすぎる数多のネオンが、キラキラくらいには柔らかく見えた。まるで『銀河鉄道の夜』に書かれている夜空に浮かんでいるかのような心地よさを覚えながら霧の中を進むと、なんと、銀河の旅を夢見た小説の主人公、ジョバンニが正面から近づいて来るではないか。一瞬驚いたが、良く見ると単に銀河のようなスーツに身を包んだ客引きの店員だった。  仙台市・国分町。古くから東北一の繁華街として栄えたこの街の、稲荷小路と呼ばれる細い路地。派手な看板が多い国分

丸森時間差遺産 第4話「風呂上がりの夜風」

  僕は熱い風呂が好きだ。理由は恐らく幼い頃の記憶、建て替える前の実家が五右衛門風呂だったせいかもしれない。当時住んでいた家は台所が土間になっており、祖母と母が夕食の支度をしている隣で、お風呂を沸かす係だった僕はよく薪を焚べていた。徐々に太めの焚き木へパチパチと火を育てていきながら、時々アルミホイルで包んださつまいもを一緒に入れたりして、沸きたての熱い風呂に入った後に、出来立ての甘い焼き芋と冷たい牛乳を喉に流し込みながら、縁側で夜風に当たるのが大好きだった。  そんな風呂好

丸森時間差遺産 第3話「全力で走り抜けた公園」

 僕は全力で走っていた。とはいえ、太宰治の小説『走れメロス』のように親友との友情を守るためではない。先ほどスーパーで受け取ったレシートが風で飛ばされたため、追いかけていただけである。30mほど先で追いついて無事に回収したが体力は消費した。昔は追いかける側ではなく追いかけられる側だったのになと、息を切らせながら30年以上前のことを思い出していた。  実家には昔、コロという犬がいた。名前の由来は当時僕が夕食時にコロッケを食べているときに思いついたからで、マグロを食べていたら「ト

丸森時間差遺産 第2話「時をかける赤い橋」

 夜寝ていると息苦しいことがある。今夜も金縛り……ではないので安心してほしい。寝相の悪い我が子の足が僕の顔に乗っていただけ。いつものことである。家族で一緒に寝ている場合、自分の寝ている範囲を越えないようにという暗黙の了解があると思うのだが、そんな大人の常識で作り上げた境界を軽々と越えて来る息子の自由な本能に感銘を受けるとともに「境界を越える」というキーワードから、ふと、脳裏に丸森橋の思い出が浮かんだ。  丸森町には大きな橋が2つある。2012年に完成した556mの丸森大橋。