自分が嫌いと泣いた君へ

ある時君は一人で泣いてた

君がそうなってしまったのはいつからだろう

君は元々自由奔放で今を楽しむって感じで、我が道をゆくって感じで。

でも、君は突然気付いた
自分はみんなとは違う って
それは良い意味ではなかった

そこから君は走り出した
みんなと同じようにならなきゃ
みんなに追いつかなきゃ
もっと、もっと、努力しなきゃ

って。

そこから君はすっかり変わった
自分の出来なかったことを責めた
なんで出来ないんだ
自分はダメな奴だ

君は恐れた
自分だけが出来損ないの癖に努力もせずにみんなと同じように笑っていることを。

今まで見えなかった世界が、声が、急に視界の中に入ってきて
君はその世界を、声を、すごく怖がって
それから逃れようとまた走った


君は中学生になった

君はもう君の言う みんな と変わらなくて
ちゃんと同じステージに立ってた

君は中学に入った頃から高校受験を見据えてよく勉強してた
受験の為に..
受験の為に.....

中二になった春
君は入院した

何もわからなくなったんだ
自分の目標のために机に向かって
傍から見たら人間関係も勉強も悪い所はあまり分からなかった
けど君はいつの間にかトンネルの中にいて
周りの音も光も失いかけてた

そこで君は手を伸ばすべきだったんだ
なのに君が放った言葉は
何もしなくていい
だった

入院した君は入院した3ヶ月間で良くも悪くも
変わった
君は3ヶ月間ずっと勉強の事だけを不安に思っていた
3ヶ月間の勉強が遅れることを恐れた

またあの頃みたいにみんなと同じようにいられなくなるんじゃないか

君の表情が不安に染まっていく中、周りの大人たちは 全力でサポートする、だから心配しなくていい、夏休みは一緒に3ヶ月間の勉強を取り戻そう。 そう言った

夏休み、入院中の大人たちの言葉による期待は
簡単に裏切られた

それだけで目の前が真っ暗になって
でもその時君には光もなにもなかった
一人で走った
どこにも預けることの出来ない不安と恐怖と焦りを抱えて。
毎日が勉強で追われる日々
予想もせず、望んでもいなかった時間を
ただひたすらに過ごした

一人でわけも分からず全力で走り続ける君を
止めてくれる人も心配してくれる人も居なくて助け舟だってどこにもありゃしない
手を抜いたら、走るのを辞めたら、またダメな奴になってしまう
 自分を許すことが君は怖かった
だから君は毎日一日中勉強してた
不安と恐怖と焦りに押し潰されそうになりながら。
もちろん、耐えられるはずもない
君は毎日勉強するのと一緒にほとんど毎日ひとりで泣いてた
気持ちが空回りして走れば走るほど沼に沈んでいくようだった
泣く度に過呼吸を起こして
思い通りに走れなくなった君は君自身を責め続けた。なんでこんなことも出来ないんだなんで...なんで.....
頑張らなきゃいけない、結果を出さなきゃいけない、一人で走り続けなきゃいけない、苦しくても休んじゃいけない、
そんなことを考える君は思うように動かない自分がもどかしくて嫌で嫌で

自分なんか嫌いだ

そう言って悔しそうに涙を流した
自分で何度も殴りつけた脚はまるで君の心のように痛いと言っていた


二学期が始まって最初の定期考査、君はずっと頑張っていた
誰もが結果を期待していた
もちろん、君自身も

返ってきた数字は君の心をバキバキに折った

君はそこで膝をつくはずだったんだ
でも君は膝をつかなかった

バキバキに折られた心は戻らないまま
もっと頑張らなきゃいけない、もっと...もっと....
そう何度も何度も自分に鞭打って自分の心を自分で痛めつけることによって君はまた歩き出した。まるで呪いにでもかかったかのように。
君は次の定期考査に向けてちゃんと頑張った
机に向かって気付いたら空が明るくなっていたことなんて何度もあった
「努力と結果は比例する」
そう思っていた君はもう立ち上がれなくなった
どうして...
それしか頭に浮かばなかった
家に着いた君は泣き崩れた
過呼吸を起こしてどうにか自分を落ち着けようとした君の腕からは赤い涙がこぼれてた

死ぬ気はなかったんだ
結果を出せなかった自分への戒め
こんな状況から脱したい、リセットしたいと思った君は部屋のベットで目を瞑った
意識がはっきりする頃には病院のベットの上にいて管や機械に繋がれていた

誰にも声を届けられず、助けも求められず、一人で必死に命を懸けて戦った君を思い出すだけで今も胸が苦しくなるんだ
思い出しただけでこんなにも痛くて苦しくて辛いのに君はたった一人でそれと戦っていたんだ
たった一人でそれに耐えていたんだ
君はなんて強いんだろう
例えあの頃の君があの頃の君自身を出来損ないだと、ダメな奴だと、頑張ってないと、そう言ったとしても、僕は誰よりも君は頑張ってたと思う。
自分を傷つけてきっと誰よりも苦しんで誰よりも泣いて誰よりも自分を責めて誰よりも傷ついて、でもその分誰よりも立ち上がって誰よりも頑張って、誰よりも強く前へ進んだ
これは誰にでもできることじゃないさ
だから戦って闘ってたたかい抜いた君を僕は誇りに思ってる
誰も見ていなかった君を僕は知ってる
静かな夜に一人で自分が嫌いだと泣いた君を僕は好きだよ

どんな時も覚えていて欲しいんだ

真っ暗なトンネルにひとりぼっちでいて
誰も見つけてくれなくて誰も助けてくれなくたって、君だけは君自身のことを見てる。君だけが君のことを知ってる。
味方はいつだって自分自身なんだ
生きていれば未来の自分が過去の自分を見つけてくれる。
未来の自分が辛かった頃の自分を抱きしめてくれる。

だから

だから.....!!!

どうか、負けないでいてほしい

いつか必ず助けが来る

他人が助けてくれなかったとして、

自分が自分自身を助けられる

どうか...どうか...

辛くなった時は自分を抱きしめてあげて

いつかは絶対自分を責めないでいられるように

ひとりじゃない

だから大丈夫

少しくらい力を抜いたって

生きていける

大丈夫

君は君らしく生きていられれば

それ以外は何もいらない

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