「三国志」と「戦争と平和」
『三国志』というのは群像劇の代表のものだが、凡そ人間の全ての人格が網羅されている文学である。
その為に書かれたと言っても良い。
民族によって文化の中核を為す「骨」がある。
そして、この『三国志』と読むと中国の文化の「骨」が「文」というものになることが分かる訳だ。
つまり勇猛果敢な英雄ではなく、教養人というものが尊ばれる国である。
なので、数々の英雄や豪傑が登場する中で、最も偉大に描かれているのは諸葛亮孔明。
孔明を中心に、厖大な数の人間が躍動して歴史が紡がれていく様を謳い上げた、と言う文学である。
『戦争と平和』はトルストイの代表作だが、これは戦争とは何か、平和とは何か、ということの本質に迫る偉大な文学である。
ナポレオンのロシア遠征によって起きる戦乱を背景にしている。
そしてナポレオンも、迎え撃つロシア人の3人の主人公たちも、自由への希求を軸にしている事が描かれて行く。
つまり、戦争とは自由への希求。
そして人間は自由のために死すことが最大の幸福なのだと言う事がわかる訳だ。
平和とは何か。
それは戦いによって勝ちえたものである、ということが最後の結論として描かれている。
ロシアという国がイワン雷帝以来、戦いによって築かれた国である事、即ち自由を希求し続けた偉大な国である、とトルストイは言っている。
これが「偉大なるロシアの大地」という崇高な象徴にもなっている。
ロシア文学にはこの「偉大なるロシアの大地」という通奏低音が在る、と言っても良い。
また、こう言う事が分かるには、「自由」と言う概念の深い考察と研究が必要な訳だ。
だから膨大な書物を読まなければならない、と言う事です。