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石垣島とサンゴ礁〜私たちに出来ること〜

サステナブルアイランド石垣から、今一番伝えたいこと。

沖縄地方を大きな台風が通り過ぎてゆきました。
大きな被害がなさそうで良かった、というと共に聞こえてくるのが
「これで海がかき混ぜられて水温が下がるね。サンゴが復活してくるといいね。」という声。
私達にできることは、自然の力に任せて祈ることだけなのでしょうか?
サンゴの事を心配している人にも、よく知らないなぁという人にもぜひ知っていただきたい事があります。

※以下は台風11号が来る前、8月23・24日にFacebookに掲載した記事 の転載です。

サンゴの白化と回復

今、石垣島周辺のあちこちでサンゴの白化が報告されています。

Photo by @123ko_hei

続く高水温と、来ない台風。。
サンゴが死んでゆく悲しい光景を前に、
”私たちには見ていることしか出来ない”や”自然の前には人間は無力”
といった声が聞こえて来ますが、本当にそうでしょうか?

BEGINが歌う、”減っていく魚も壊れていくサンゴも、どうしたらいいのかわからない〜♪”
しかし、世界ではもうどうしたら良いかわかっていて、それに取り組みを始めているところもあります。


まず、サンゴは寿命も持たず環境が適していれば何度でも再生する回復力が高い稀有な生物。なんとサンゴは5億年前から地球上に存在し、数々の進化を経て地球上に存在しています。これまでもサンゴは幾度も夏場の高水温で白化し、一時・地域的に危機状況に陥りましたがまた回復してきました。サンゴにはもともと、(例えば悪いですが)雑草のように環境に適応し増える力があります。

それをだんだん不可能にしているのは、世界的な気候変動の影響だけじゃなく、地域の環境・水質汚染がサンゴの元来の住環境や回復力を奪っていること。

水質汚染・サンゴへの影響

これは不都合な真実かもしれないのであまり伝わっていませんが、過去20年間に於けるグレートバリアリーフの研究で、浅瀬や沿岸にあるサンゴには人間的な要因が影響し、水質を6〜17%改善することで白化現象からの回復率が上がると研究者らは言っています。(詳しくはコチラ→ https://www.stbisg.com/post/解決策は私たちの身近にあった!)

反対に、水質が悪いと回復が遅くなり病気もオニヒトデの発生も起こりやすくなり、白化現象への耐性ももちろん弱くなってしまいます。この”回復力”や”耐性”は、ひっくるめて”レジリエンス”と呼ばれますが、せまりくる環境の脅威に対しどうレジリエンスを高めるか、というのが現在の課題です。

世界的にも沖縄県でもサンゴに適した水質は、水質汚染の指標である「全ちっそ」が0.08mg/l以下であると研究者はわかっています。そして石西礁湖の10地点の水質の平均値は2010~2012年には既に通年その値を超過し、0.12~0.16mg/lでした。これはサンゴにとっては被度50%、つまり半分が生存可能な水質にも達していないということを意味します。平均でこの数値なので、大雨が降った沿岸ではもっと値が高くなります。ちなみに、1996年頃の西表島網取湾はたったの0.04mg/lで、澄み切った海だったとわかります。

しかし、日本の行政が設定する水質の環境基準は、全国で一律の水質汚濁防止法 (0.2mg/L)だけ。これは人間が泳いだり景観を楽しむことには十分ですが、サンゴにとっては生存可能ではないし、沖縄の澄んだ海にも適しません。サンゴや沖縄に適した0.08mg/lの水質を守るための基準は国立公園海域にも全くありません。唯一の根本的解決策となる水質改善に向けて、現在私たちは対策できていないのです。移植をしたとしても、その成功率が低いままかもしれません。

希望となるのは、世界的な気温は私たちがすぐ変えることは不可能だけど島の周りの水質なら島を挙げて取り組めば改善可能ということ。決して何も出来ないわけではありません。サンゴが守られれば魚も増え、安心して漁業をしたり観光経済も湧きます。

でも、わたし別に政治家でもないし、具体的にどうすればいいの??

みんなができること、あるんです。

現在起きている、サンゴの白化に対しての1番の解決策、それは水質の改善...
わかっちゃいるけど、どうしたらできるわけ...?

サンゴが元気でいるために必要な条件は、適切な水温、水質(とそれに関係する光、つまり水の濁りのなさ)です。世界的な気温や水温上昇は私たちが変えることはできなくても、島の周りの水質なら島を挙げて取り組めば改善できること。


石垣市の下水処理の現状

石垣島では沿岸の水質汚染の原因トップ3が下水・排水、農業、畜産です。そのうち下水道は接続できる地域が街中など狭ーいエリアに限られている上に古い家で昔のままになっている設備が多く、なんと”単独処理浄化槽”の家が63%もあり、実際の下水道接続率はたったの17%だと知ってましたか?

しかも一般に言う浄化槽は合併浄化槽のことで、”単独浄化槽”は浄化槽と言えない、というのが専門家の意見です。し尿以外は全部垂れ流しになっているので、海が汚染されます。

沖縄県は県内各市町村の下水道接続率を公表していて、その中で石垣市の接続率は61%となり段階的な100%達成の長期計画もあることになっています。ですがこれは接続可能地域だけを対象とした場合のこと。接続できない他のほとんどのエリアを含めると人口比ではたった17%!!です。

産業の排出規制も、石垣市では一定の産業のみが排出規制対象なので、なんと規模の大きい製造業でも何の規制もないまま毎日廃棄物を地面や海に流していい業種もあって、昔からのゆるい規制が見直されず続いているのが現状です。新川や大浜の沿岸で悪臭に驚いた人も多いのではないでしょうか?

水質改善、世界の実例

サンゴを守りたいと思うなら、思考停止状態から抜け出ることが必要です。このようなことを言うと、極端だとか自分たちの生活はどうする?という声が聞こえそうですが、世界では段階的に目標を定め、長期的視点で確実に変化を起こす取り組みがあります。

市民の多様な声を聞きながら、地域にあった最適なやり方を考える丁寧な政策作りをすればこうできます。

例えば、ハワイ州では数々のステークホルダーを入れた議論の末、サンゴ礁の観光経済への影響と緊急性を認識し、2017年に法律を改正し2050年までに全てを下水道に転換すると決定しました。長期計画ではありますが、2020年から計画的に下水の技術士を養成し、年間3000個の古い浄化槽を転換することで新たな雇用を生み出しグリーンな経済振興につなげています。

沖縄県では観光・レクリエーションのみのサンゴ礁の経済価値でも2,324億円と試算されるので、観光に依存する石垣の経済を考えたら十分やる価値があるでしょう。

現在、グレートバリアリーフの保全計画でも2020年から2030年までの目標のトップに水質改善が掲げられ、多様な行政・民間期間・市民団体が官民協働で取り組んでいます。

日本では出来ない?

実は日本にもよい前例があり、実行可能なことがわかります。

1960年からの瀬戸内海は高度成長の工業地帯が排出する汚染で赤潮が発生し、魚が住めない海になっていました。ですが1978年、瀬戸内海に影響する13府県知事が集まって瀬戸内海環境保全特別措置法が可決させ、水質基準を守るための総量規制が行われました。地域全体の水質目標を掲げて取り組んだのです。

その結果、瀬戸内海は現在きれいすぎると言われるほど澄んだ海に変わりました。

石垣島で出来ること・私たちが出来ること


沖縄の綺麗な海が1番の観光資源であるならば、どうしてやれないのでしょうか?

無駄な道路を作るよりも、浄化槽の転換に税金を使うのはどうでしょう?
農薬の制限や畜産施設の整備も良いでしょう。
サンゴへの影響を考慮した市政というのもクールですよね?

市民が単独でできることは限られているので、全体のルール作りは行政のお仕事です。行政の英断が沖縄県や石垣市に必要ですが、そのためにはどうしても市民の理解と要望が大切です。

みなさん一人一人がやれることは簡単なこと。

この事実を周りの人へ広めてください。
議員さんや県・市の関係者、市長へは特に!
皆さんの税金を使って、市政に何をして欲しいですか?
今の行政が楽をすることか、それとも将来の島に希望を持てるルール作りをすること?

子供たちに残す環境を決められるのは今の大人だけです。
今出来ることを、みんなで始めませんか??

〜まとめ〜

”サンゴは気候変動であと持って10年”とも言われている中、頑張ればそれをあと10年、もしくはもっと延ばせる。それをやるには行政でルールを決めないと個人の活動では限界があります。サンゴは6~17%の水質改善で回復率があがることがわかっています。各業界でできるところから、ステップ順を作り確実に目標を定め達成しよう。

八重山はコーラルトライアングルの北限にありサンゴの多様性が世界でもトップクラスであり、うまく残すことができれば世界でサンゴ礁保全に成功した場所として素晴らしい優位性をもつ地域になります。世界中から高額を払ってもダイバーや観光客がやってきて、長く地域経済を支えてくれるでしょう。

まずは、下水処理から。

サステナブルアイランド石垣 Yoko

学び・繋がり・行動する〜サステナブルアイランド石垣〜

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