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勝算はあるのか?イタリア高速列車市場への参入を画策するSNCFと問題点

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2024年6月12日、フランス国鉄SNCFは2026年からイタリア国内の高速列車市場へ参入し、毎日最大13往復の列車を運行したいとする声明を発表した。区間はトリノ~ミラノ~ヴェネツィアおよびナポリ間で、SNCFの長距離列車運行子会社SNCF-Voyageursによって運行される。SNCFは、今後10年間の間にヨーロッパ域内における利用客数を倍増させ、イタリア市場においてはシェア15%を獲得するという目標を掲げている。

TGV-M(メーカー名アヴェリア・ホライズン)

車両は、現在認証試験中の最新型車両TGV-Mを使用し、高速新線を経由して運行するという計画だ。イタリア国内では、既にパリ~ミラノ間でTGV-Rを使用した国際列車が運行されているが、同車両は欧州標準信号ETCS非装備で、高速新線の走行基準を満たしていないことから、イタリア国内は在来線を経由して運行を行っている。またSNCFはかつて、イタリアの民間高速列車イタロを運行するNTVの株式を保有しており、いずれはイタロを通じてSNCFが参入をするのではないか、といった噂も流れていたが、SNCFは同社の株式を既に売却していて、現在のNTVは海運大手MSCが筆頭株主となっていることから、SNCFの参入が実現した際には、トレニタリアを含めた3社による競合となる。

フランスで好評のフレッチャロッサ

フランス国内では、2021年12月からトレニタリアが高速列車フレッチャロッサ・ミッレを引っ提げて参入を図っているが、現在は運行本数を増加させるなど、業績は大変好調となっていることから、それに対抗するための「イタリア逆参入」とも考えられる。

イタロの参入はイタリア国内の鉄道に大きな変革をもたらした

イタリアにおけるフレッチャロッサとイタロの競合はもちろんのこと、スペインの3社による争いや、前述フランス国内高速列車市場へのトレニタリア参入など、競争相手の誕生によってもたらされた経済効果や、都市間輸送における鉄道シェアの拡大などは、現時点ではいずれも好結果をもたらしており、イタリア国内へのSNCFの参入は、基本的にはポジティブに捉えられている。イタリア国内の高速列車は、イタロの参入によってサービスは向上したが運賃価格は下落し、既に非常に手頃な価格での移動が可能となった。

フィレンツェ・サンタマリア・ノヴェッラ駅で発車を待つフレッチャロッサ

ただし、ここへSNCFが殴り込みを掛けてきたら、低価格化競争がさらに加速することも考えられ、消費者側にとってはありがたいことと言えるのかもしれないが、鉄道会社側は体力勝負となる可能性もあり、どこかで歯止めを掛ける必要が出てくるだろう。同様の事態がバス業界で起こっており、ヨーロッパの高速路線バス最大手フリックスバスが、採算度外視の超低価格運賃を販売したことに批判が集まっている。

その一方で参入へ向けた課題や、懸念についても取り沙汰されている。

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