【3選】ミニマリストが手放して買い直した何度でも読み返したい本
アムリタ(上~下巻)|吉本ばなな
吉本ばななさんの小説のファンは大勢おられると思いますが、アムリタを購入した回数が最も多いのは、わたしかも知れません。
吉本ばななさんの作品と出会ったのは中学生のときで、購読していた進研ゼミ(もはや読み物w)、今月のおすすめ図書コーナーに紹介されていた、「NP」という作品でした。
キッチンやTUGUMIあたりから入ったのではなく、NPだったのです。このあとから吉本ばなな作品を片っ端から買っては読むようになり、どの作品もそれぞれに素晴らしいですが、アムリタを超える作品は無いというのが個人的な感想です。
何度も買い直した件ですが、友人に借りパクされて買い直し、断捨離しては買い直し、半同棲を解消した元カレの部屋に置き忘れたものを処分されてしまっては買い直し、ふたたび断捨離しては買い直し、再々々……断捨離しては買い直したので、もう手放さないことにしました。
ソフトカバーの装丁がとても気に入っていましたが、近頃は待ち時間というものに遭遇することが増え、本を持ち歩くようになったので、本は出来るだけ文庫版を購入することに決め、現在手元にあるのは文庫版アムリタです。
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主人公の朔美が階段から落ち頭を打ったことをきっかけに、半分死んでいる、という特殊な状態に置かれたり、弟の由男がチャネリング小僧になったり、スピリチュアル色が強めとも捉えられる内容です。
現在、吉本ばななさんはスピリチュアルを基軸とした生き方をされているよように、わたしは感じていますが、この作品は、その産声のようだとも思えるのです。
少し風変りな家族構成の中、平凡ではない立場に置かれながらも地に足をつけ日常をしっかりと生きている登場人物たちの暮らしの中に、次々と介入する「不思議」なできごと。
朔ちゃんが、自分の風変りな立場を恵まれていて幸せだ、そしてそれは、誰にとっても考え方ひとつ、思い込み次第だから、みんなにもそう思って欲しくて仕方ない、というくだりがあります。
壮大な物語の中の、この何気ない一節が、いちばん好きです。何度も何度も、この一節に救われるような気持ちになったから。
九つの、物語|橋本紡
いつかの夏の文庫フェアにて、夏の浮かれ気分で購入しました。
著者の橋本紡さんは、元々ライトノベル作家として人気を博したかただそうです。ラノベには疎いので、この作品で初めて、橋本紡さんと出会いました。
他の作品も数冊読みましたが、個人的感想としては、どの作品も、あと一歩という感があり、逆を言えば「九つの、物語」 この作品の完成度が非常に高いと言えます。細部まで丁寧に丁寧に綴られている、そして著者の文学に対する並々ならぬ愛とこだわりが盛り込まれている作品です。
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大学生活を送る主人公女性、そしてイケメンで女性好き(チャラい)けれど読書が趣味で、自室の本棚に収まりきらない程の本を所有している兄、兄妹が織りなす物語。
チャラい兄のもうひとつの趣味は料理、これもかなりの腕前。著者の橋本さんご自身の趣味とリンクしているようです。
物語は九章からなり、一章ごとに有名な文学作品と、美味しそうな料理が登場します。これをきっかけに興味が湧き、手に取ってみた文学作品があり、作ってみた料理もあります。
橋本紡さんの傑作といって過言では無い。橋本紡といえば、この一冊!
充実した内容なのにも関わらずライトに読み進められるのは、さすが。ラノベと文学に橋を架ける役割も担っていそうです。
バージンパンケーキ国分寺|雪舟えま
湿度が高い曇りの日にしかたどり着くことのできない不思議なパンケーキ屋さん、「バージンパンケーキ」を舞台に繰り広げられる、スピリチュアルな物語。曇りでなければならず、晴れの日だけでなく、雨が降っても店仕舞いをしてしまいます。
パラレルワールドをテーマとした、ごりごりにスピリチュアルな内容であり、秀逸なファンタジー作品。
高校生の主人公と、幼馴染の同級生男子、主人公の親友……三角関係があったり無かったりしますが、ドロドロとした嫌な感じは無く、懐かしいような気持ちで楽しむことが出来ました。現役の高校生が読んだ場合、もっと切実な感覚を抱くのかも知れません。
著者さんの感性の豊かさを通じて、真実の片鱗が垣間見える。スピリチュアルの何たるかを……重要な何かを、この書き手はきっと知っている、そのように思わせられます。
清々しくて、少しだけ胸がギュッとなるラストシーンを経て、登場人物たちにもう一度会いたくなって、何度も読み返したい。
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松本市で暮らしていたとき、休日には図書館通いをしていて、そのとき出会った一冊です。
文庫化する際に、加筆修正されたようです。単行本で読んでいてちょっぴり違和感のあった箇所が、文庫版ではしっくりくる内容に書き換えられていました。
文庫版のカバーイラストは、人気漫画家の池辺葵さんによるものです。