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連作短編の良さを語りたい

みなさんは『連作短編』という小説の形式を知っていますか?

今回はとってもおもしろいのにちょっと珍しい『連作短編』の魅力について、自分なりに書いてみようと思います。

連作短編ってなに?

『連作短編』とは、単なる『短編集』とは少し違う、けれどやっぱり一冊に複数の短編作品が集まった形式の本のことです。

短編集との一番の違いは、収録されている短編作品たちそれぞれが「キャラクターや設定、世界線、時間軸などを共有している」という点です。

一章ごとに完結した物語が並んでいるのに、各章全体に共通点がある。
これが連作短編の最大の特徴であり、魅力でもあります。

しかし、全体的にはあまり多くないジャンルのようで、その数はおそらく短編集、長編と比べてもかなり少ないです

そしてその事実を、私は嘆いています。
こんなにおもしろいのに!連作短編!
もはや、小説の王道である長編よりも、おもしろさでは勝るのではないかとすら思っています。

伝えたい、この魅力!

連作短編のいいところ

連作短編の最大の魅力はなんといっても「短編集と長編のいいとこ取りができる!」という点です。

一話ずつ話が短くまとまり、長編ほど読むのにカロリーがかからない。
それでいて、各話にしっかり繋がりがあるため、長編に負けない読み応えがあります。

例えば、「前の章に出てきた登場人物が別の章にも登場する」「ある章で提示された設定が、別の章で別の角度から描かれる」というように、連作短編の各章には、部分的な連続性が見られます。

この構造によって、短編のテンポのよさと、長編のような奥行き、読み応えの両方を感じられるようになっているわけですね。

うーん、なんてお得なんだ。


連作短編の有名作品例

私が好きな本である青山美智子『赤と青とエスキース』や、辻村深月『ツナグ』は、どちらも連作短編です。
収録されている数本の短編作品には、共通するキャラクター、設定が登場します。

もちろん短編集なので、それぞれの章で展開されるエピソードは独立した起承転結を持っています。
しかしそれとは別に、一冊全体で見たときのもっと大きな起承転結があり、各話を通してキャラクター、設定が深掘りされていきます。

例えば『赤と青とエスキース』は、一枚の絵を通じて色々な人の運命が絡み合うお話です。
各話の登場人物がほかの章でも登場し、世界のつながりを感じられてとてもワクワクします。
最終話では全体のお話が一点に収束していき、読後感も読み応えも抜群です。

『ツナグ』は死者を生者に合わせるちからを持った一族と、死者に会いたい生者たちのお話です。
各章では、様々な理由で故人との再会を望む人たちの姿と、この不思議なちからを持った一族の後取りの問題が並行して描かれます。
一冊を通して、最終的にはちからの後継者となる少年の成長に焦点が当てられます。

こうした連作ならではの要素が、短編集や長編とは違う独特の読み味をもたらしてくれるというわけですね。

短編の読みやすさと、長編の読み応えの両取り。
時間がないときは短編として少しずつ気軽に、時間があるときは長編のように一気に読める。
なんと贅沢な形式か、連作短編!


連作短編増えてほしいね

こんなに魅力的な形式なのに、少なくとも私の認識では、連作短編はあまりメジャーではありません。
もちろんたくさんあるんですが、取り立てて好きだと言っている人もあまり見かけず、概念自体の認知度も低そうです。

連作短編大好きな私としては、ちょっと寂しいですね。

というわけで、みなさんもこれを機に、連作短編にあらためて注目してみていただけると幸いです。

おもしろいよ!

それから作家としても、いつか書いてみたいと思います。
アマチュア作としては書いたことがあるのですが、商業作だとまだなので。


さて、では最後に私のおすすめ連作短編をもう少しだけ紹介して、今回の記事は終わりにしようと思います。

参考になれば幸いです!


オススメ連作短編

『死神の精度』伊坂幸太郎
『箱庭の巡礼者たち』恒川光太郎
『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信
『光の帝国』恩田陸


それでは!




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