Остеопатия/オステオパシー

どこかの真冬の公園で散歩中に、母に送るための全身ポートレート写真を撮影し送ったところ、『あなたこの立ち方はやめなさい』と返事が来て驚いたことがある。何かのポーズをきめて撮影したのではない。両脚を揃え、両手も真っ直ぐ下に垂らした直立の姿勢で、カメラに向かって真正面だと面白くないから少し斜めの角度に立っていただけだ。母が指摘したのは立ち方ではあったが、実際には私の体の歪みに気づいてのことだった。

メッセージの後、自宅で鏡の前に立つと確かに右肩の方が下がっていて、夫いわく背骨も曲がっていると。特段体にはなんの問題もなく生きてきた私にとって、初めての不健康の兆候であった。分厚いコートを着ていても見破った母の観察眼はいったいどこから。

すると夫は、『今から治してあげる』と言い出し、私にベッドに横になるよう指示した。マッサージかなありがたいと思っていると、『はい、力抜いて~~~~~』とやけに語尾を長く伸ばしながら、背骨のある部分に手を添えている。何かを待っているの?と思い始めたその時、背骨からゴツ!という大きな音が漏れ聞こえ、私は腰から下の体の感覚を失った。脊髄損傷?!車椅子生活?!と言葉を失う私を、笑顔で覗きこむ夫。『どう?よくなった?』どこから知っているのか、オステオパシーを私にやってくれたのだった。

日本ではオステオパシーの認知度はまだ低いほうだと思う。海外で講習を受けるなどした日本人専門家たちが、国内での普及に向け頑張っているところのようだ。これに関する日本語の情報は年々増えているように感じるが、技術の習得用の情報発信の方が多い印象だ。技術者の育成がより進めば、治療を受ける患者向けの情報も増えてくるにちがいない。オステオパシーは簡単に言えば、リラックスし脱力した状態で瞬時に圧を加え、骨などの位置を本来あるべき正しい位置に戻すという治療法なのだが、初めて聞くと確かに怪しい治療のように聞こえる。私も、そんなことをされると事前に聞かされれば、夫の善意でも拒んでいたかもしれない。

今回ご紹介するのは、確かな技術を持つ治療師としてロシアで知られているВячеслав Семешкоさんによるオステオパシー治療の様子だ。彼のYouTubeチャンネルの概要にある記載を日本語訳してみた。

こんにちは。このチャンネルで公開しているのは、私の実践する手技療法、オステオパシー、理学療法などの技術です。

私が診ている患者の方、同業の方、そして自身の健康や健康を維持する方法に関心を持っている方のためのチャンネルです。また、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ロストフナダヌーでは私の手技療法技術を教えています。

診察は、私が運営する手技療法・オステオパシーセンター『Восстановление(バスタナブレーニエ)』(意味:回復)にて行っています。

レクチャーへのお申し込み、治療のお申し込みは以下のURLからお願いします。
ビジネスパートナーとしてのご提案はメールの方へご連絡ください。

YouTubeチャンネル『Slava Semeshko』概要欄 より

スラヴァさんのチャンネルでは、解説も交えながらの治療の様子が公開されている。ロシア語がわからない方でも、技術自体の勉強をするには参考になるはずだ。少し残念なことに、コメント欄を見ていると『この女の子の体を見るために来たのは誰?』といった内容のものが散見される。これらの動画が大真面目なオステオパシー治療の指南・紹介動画であることは、いち視聴者としてしっかり理解しておきたい。

Вправление атланта и суставов мануальной терапией /YouTubeチャンネル『Slava Semeshko』 より

こちらのビデオのタイトルは『手技療法による環椎と関節の調整』。治療を受けた女性は、『まるでもう一度生まれたかのように体の痛みがなくなりました。この状態が長く続くといいけど。家まで空をとんで帰れそうです』と感想を述べている。私も実際に体験してみて、夫の技量はスラヴァさんとは比べ物にならないだろうが、彼女と同じような不思議な解放感に包まれていた。いつかチャンスがあるならば、彼の治療を受けてみたいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?