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どうしてスタートアップでは労務トラブルが発生しやすいのか

 起業をすると、会社の設立、資金調達、商品・サービス開発、従業員の採用、取引先の開拓、取引の開始など、やらなければならないことが山積みです。このように、起業をすると経営者はあらゆることに対応しなければなりませんが、多くのスタートアップが直面するトラブルの代表格が労務です。

 では、どうしてスタートアップは労務トラブルを抱えてしまうのでしょうか。労務トラブル自体は大企業や創業から時間が経過している中小企業でもしばしば起こりますが、スタートアップで労務トラブルが起こりやすい原因としては、以下のようなものが挙げられます。

①対応が後手に回ってしまう

 前記の通り、スタートアップの経営者にはやらなければならないことが数多くあります。しかし、当然ながら限られた時間の中で経営者が対応できることには制限がありますので、自ずと優先順位を付けることになります。その際、企業の発展のためには売上を上げなければならず、どうしても売上に直結する事項を優先することになります。
 そうすると、労務という売上には直結しづらい事項への対応は後回しになりがちであり、事前対応が不十分なためにトラブルとなる事例が多く見られます。

②労働法に関する知識や経験が少ない

 労務については労働法の遵守が大切です。しかし、労働法と呼ばれる分野には数多くの法律があり、さらにその詳細を定めた政省令も含めるとその数は膨大です。その上、役所への届出など必要な手続きも多く、複雑かつ煩雑です。
 このような詳細まで熟知している経営者は多くなく、また、熟練の人事労務担当の従業員を雇用することも容易ではないため、気付かないうちに労働法違反という状況になってしまい、トラブルとなってしまいます

③経営者と従業員の意識のギャップ

 スタートアップの経営者の多くは創業者であり、創業者ではない場合でも経営者として会社の命運を握っていることを自覚していることがほとんどです。そのため、経営者は心血を注いで会社の経営に取り組んでいることが多いでしょう。
 しかし、会社が雇用した従業員は必ずしも同じような意識を持っているわけではありません。会社とは労働契約を締結した使用者-従業員という関係に過ぎず、全てを会社に捧げようと考えている例は少ないのではないでしょうか。それにもかかわらず、経営者の中には、どうしても自分と同じようにすべてを会社の業務に捧げることを前提とした要求をしてしまう人がいます。
 そうすると、要求が厳しくなるだけでなく、長時間労働を求めたり、休日や夜間でも業務に対応するように連絡をしてしまったりすることがあります。また、中にはこのような要求がエスカレートしてパワハラと言わざるを得ないような対応をしてしまうことがあります。経営者としては、経営者と従業員の意識のずれを理解する必要があります。

④労務トラブルの多くは人間関係トラブルである

 労務トラブルには様々なものがありますが、その根本的な原因は人間関係のトラブルにあることが少なくありません。例えば、パワハラの原因には様々なものがあり得ますが、その中には「コミュニケーションがうまく取れない」、「価値観が合わない」といったものも含まれています。
 このような人間関係のトラブルは、人数が増えれば増えるほど起こりやすくなります。起業から間もないころで、経営者と従業員を合わせてもわずかという段階では、コミュニケーションも取りやすく、人間関係のトラブルは起こりにくいか、実際のトラブルになる前に解決しやすいでしょう。しかし、会社の規模が拡大し、雇用する従業員が増えてくると様々な人が会社で働くことになります。そうすると、必然的に色々な考えの人、やり方の人が増えますが、その結果として、折り合いが悪い、相性が悪いといった問題が生じ、これがエスカレートすると労務トラブルに発展してしまいます。
 スタートアップは人員増加のスピードが非常に早く、短期間に色々な人が関わるため、人間関係トラブルが生じやすいという特徴があります。そのため、労務トラブルが起こりやすいのです。

 このように、スタートアップは、起業したばかりであるために労務トラブルが起こりやすい原因を内在しており、実際にトラブルが現実化してその対応に追われている例も少なくありません。
 もっとも、上記の①から④の原因を見ても、しっかりと事前対策をすること、経営者が意識を変えることによって、労務トラブルの発生を防いだり、トラブルが大きくなることを防いだりすることができます。
 労務トラブルが頻発する会社では、従業員の離職率が高くなり定着しません。そうすると、会社の成長が頭打ちになり、じり貧になりかねません。従業員が気持ちよく働けることは企業が持続的に発展できるための条件と一つと言えるでしょう。そのため、従業員を雇用する早い段階から労務対応に取り組み、労務トラブルの発生を防ぐことが重要です。

 労務対応についてのアドバイスやご相談は、下記までご連絡ください。

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