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【2/5】VCファンド設立3選

ベンチャーキャピタル(VC)市場では、新たな資金調達の動きが活発化している。特に、オペレーター主導型ファンドや企業系VC(CVC)の台頭が注目されている。本記事では、最新のVCファンドの動向を解説し、それぞれの特徴を分析する。


1. GTMfund:オペレーター主導型VCの成功例


1-1. GTMfundの成り立ちと成功

GTMfundは、元Udemyの社員であり、Sales Hackerの創業者であるマックス・アルトシュラーによって設立された。もともとエンジェル投資家として活動していた彼は、ネットワーク内の投資家からの要望を受け、GTMfundを立ち上げた。

最初のファンド(Fund I)は2021年に設立され、約250人のオペレーター投資家(LP)と数名の機関投資家からなる。このファンドは、AI作曲ツールのWriter(評価額19億ドル)、AIデータセンター技術のAtlan(評価額7.5億ドル)、セキュリティコンプライアンス企業のVanta(評価額24.5億ドル)など、急成長中の企業を支援した。

1-2. Fund IIの拡大と成功要因

2024年に設立されたFund IIは、300人のオペレーターLPに加え、Bain Capital VenturesやHarbourVestなど6つの機関投資家を迎え入れ、総額5,400万ドルを調達した。

GTMfundの最大の特徴は、LPが単なる資金提供者ではなく、営業戦略の支援や営業チームの採用サポート、投資対象企業の発掘と評価にも関与する点にある。このような体制によって、投資先企業は、財務面のみならず、経営戦略の強化も実現している。

2. 日立ベンチャーズ:企業系VCの進化


2-1. 4億ドルの新ファンドの立ち上げ

日立ベンチャーズは、日立製作所が単独出資するVCであり、今回4億ドル規模の新ファンドを設立した。この規模の調達は、ディープテック分野への投資拡大を示すものである。

2-2. 投資対象と戦略

日立ベンチャーズは、エネルギー、製造業、バイオテクノロジー、AIなどの分野に重点を置いており、特に量子技術、核融合、ライフサイエンス、宇宙技術などの革新的領域に注目している。

ファンドの特徴として、シリーズA投資を主軸とし、初回投資額を500万ドルと設定しながら、全体の55%をフォローオン投資に充てる戦略を採用している。

また、投資後も日立のネットワークを活用し、投資先企業が日立の顧客基盤を活かす機会を提供することが強みである。日立ベンチャーズのパートナーであるラダクリシュナン氏は、「日立のネットワークを活かし、投資先企業が潜在顧客とつながる機会を提供する」と述べており、CVCとしての独自性を発揮している。

3. Cherry Ventures:欧州VCの挑戦


3-1. 5億ドル規模の新ファンド

欧州のVCであるCherry Venturesは、最新のファンドで5億ドルを調達し、シード投資からシリーズB以降のフォローオン投資まで幅広く展開する計画を発表した。

3-2. 欧州VC市場の課題と展望

欧州のVC市場は、米国に比べて投資規模が小さいと言われており、AI分野の投資においても、2023年には米国が、970億ドルを調達したのに対し、欧州は、80億ドルにとどまった。

Cherry Venturesは、「欧州初の1兆ドル企業を創出する」という野心的な目標を掲げているが、現在の市場環境では、その実現が容易ではない。特に、英国のVC投資が2023年第4四半期に50%減少するなど、資金調達環境は厳しさを増している。

一方で、Cherry Venturesの過去の投資先には、宇宙技術のThe Exploration Company、食料配送のFlink、神経外科マイクロボットのRobeaute、グレイハウンドバスのFlix SE、物流ユニコーンのFortoなどがあり、多様な分野での支援を行っている。

オペレーター主導型VCであるGTMfund、企業系VCの日立ベンチャーズ、欧州VCのCherry Venturesと、それぞれ異なるアプローチでの資金調達と投資戦略が展開されている。

  • GTMfund:LPが直接スタートアップを支援するモデルを確立し、ファンド規模を拡大。

  • 日立ベンチャーズ:CVCとしての独立性を持ちつつ、日立のネットワークを活用した支援を提供。

  • Cherry Ventures:欧州VCの資金規模の課題に直面しながらも、成長を目指す。

これらの動きは、今後のVC市場の方向性を示唆しており、新たな投資機会と成長戦略のヒントを提供している。

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