三題噺「おひとり様」「たぬき」「雪」
雪の降る中、人の流れに溶け込むように繁華街を散策している貴方。路地に入った時、貴方の目にはベージュのダウンジャケットに身を包むあどけない少女の姿が映った。
「どうしたの、何か用事でもあるの?」
優しく問いかける少女はどこか儚げな表情で貴方を見つめてくる。貴方は隠れ家グルメを探していることを伝えると、少女は
「わたしも一緒に行っていいかな……?」
とついて行きたそうに貴方の手を引っ張っている。内心、貴方はおひとり様を満喫したいと思っている。貴方について行こうとする少女を置いて行けないと相反する感情が入り交じって、難しい表情をする。
悩むこと二分。ひとり食べ歩きを満喫する予定だった貴方は、少女を親が見つかるまで家で保護することにした。
貴方は家に帰る途中で少女の口に合う料理は何か考えた。が、隣の少女は路地から出たことと都会の空を舞う雪に興味を示しており、考えを推察することができないでいた。
お昼ご飯をオムライスに決めた貴方は卵を溶いていると、隣にいる少女の後ろにシッポが見え隠れしていることに気がついた。
この子、何か変わっているなあ。
そう感じた貴方は、念の為にみじん切りの玉ねぎを避けておく。小さなボウルの中にある玉ねぎをつまもうとした少女を何とかソファーに誘導して、お昼ご飯を作る。
しばらくすると、少女は駄々をこね始めた。
「お昼ご飯、まだできないのかな? お腹空いたよー!」
待ってて、もう少ししたらオムライスできるから。
貴方は、駄々をこねる少女をなだめながらチキンライスに卵の上着を着せた。
少女とお昼ご飯を摂っている貴方は、彼女に親がどこにいるかを聞こうとした。
「おとーさん、おかーさんがどこにいるかって? んー……覚えてない」
少女の返事に落胆する貴方。
「元気出して! ご飯食べたら、探しに行こうよ」
貴方は少女に引っ張られて、寒空の中で親を探しに行く。
少女の行く先は冬化粧の済んだ山。貴方は少しずつ不安を感じ始める。すると、
「ここで大丈夫だよ! ありがと!」
と満面の笑顔で少女は言った。茂みに姿を隠した彼女の後を追おうとした貴方だったが、茂みから出てきたたぬきの口元には点々とケチャップが付いていた。
貴方は路地で少女と会ったことを思い出して、家路を辿っていった。