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サビアンシンボルと二十四節気ー夏至

鳥の鳴き声が夜明けから聞こえてきます。
芒種あたりから太陽がグングン高く昇っていくのを肌で感じますが、
夏至で頂点に達します。
梅雨が明けないので、まだ夏という実感は湧かないのですが、晴れた日の日射しから夏の兆しを感じる人も多いでしょう。
晩唐の詩人、高駢(こうべん)の次の漢詩は五感で夏をとらえていますが、同時にかすかな涼も感じる漢詩を詠じています。

山亭夏日          高駢  
緑樹陰濃夏日長   りょくじゅかげこまやかにしてなつびながし
楼台倒影入池塘   ろうだいかげをさかしまにしてちとうにいる
水晶簾動微風起   すいしょうのすだれうごいてびふうおき
一架薔薇満院香   いっかのしょうびまんいんかぐわし

 樹々の木陰は影が深く、夏の昼間は長い。
 池の畔にたたずむ建物は、影を逆さにして池に映っている。
 水晶の簾が動いて 微かな風が起こり
 棚いっぱいの薔薇の香りが、あたり一面にたちこめて芳しい。

西洋占星術では夏至はちょうど蟹座の始まりの1度です。
サビアン占星術の研究家ルディアによれば、蟹座前半は決心のシーン。最初の1度は「船員が船の古い旗を降ろし、新しい旗を掲げる」というシンボルです。サイン全体の特徴は母性や家庭性、集団などが挙げられています。前サインの双子座は情報や知性、コミュニケーションを特徴としていますが、蟹座に入った途端「ここからは蟹座です!」と旗を掲げて宣言しているかのよう。こうして始まった蟹座は5度「踏切で自動車が列車に衝突して大破する」というシンボルで、個人(自動車)より集団(列車)の力強さを印象づけます。そして10度「完全にカットされていないダイアモンド」で公的な価値を獲得すべく鍛錬し、頂点の15度で「食べ放題の料理を楽しむ人々」、物質的な豊かさの満喫へと昇りつめます。
牡羊座や牡牛座が、個人がどうあるのか、何を持つのか、そして双子座で周囲とのコミュニケーションで知性や情報を得る流れがあるとすると、蟹座ではそれが切り替わり個人が集団へと回収されていき、個人では得られない豊かさを獲得するドラマがうかがえます。ここに触れた時に私はとても触発され、サビアンシンボルを読み解くことに、ますます興味を持ちました。

北欧などヨーロッパの緯度の高い地方には、夏至の祭が伝承されています。
スエーデンのミッドソンマルがよく知られており、フィンランドではユハンヌスという名のお祭りだと聞いています。
スコットランドを旅したときに、夏至が近づくと朝が午前2時過ぎには明け、夜は午後10時を過ぎてやっと暗くなり始める体験をしました。そして夏至には、イギリスのストーンサークルの一つでは日の出とともにケルトの祭りらしきものが執り行われていました。ボケボケで申し訳ありませんが、タイトルの写真はその時のものです。
シェークスピアの『夏の夜の夢』は夏至の一夜の出来事で、妖精によって混乱する男女の恋模様を描いた物語。アメリカとスエーデン合作のホラー映画『ミッドサマー』は、夏至独特の人の心を乱すようなマジカルな雰囲気をベースに、凍り付くような恐怖のドラマが展開します。冬期が長く太陽の日射しに恵まれないヨーロッパ北部では、夏至前後の光の強さを太陽神からの生命力として取り込むと同時に、光によって必然的に生まれる濃い影も、深く意識し受け入れていたのではないでしょうか。

アジアの夏至の祭りについては寡聞にして知りません。多分この時期は、日本をふくむ東アジアの温帯モンスーン気候地帯では、田植えが忙しいので祭りをしているゆとりはないのではないかと思われます。とはいえフランス・ベトナム合作映画『夏至』は、祭りではありませんが夏至の前後の男女や親子、姉妹の微妙な心の揺らぎが湿気の多い風土とともに描かれて秀逸な映画です。

半夏生(はんげしょう)は夏至から数えて11日目。日本の農家にとっては大事な節目で、この日までに田植えを済ませる目安にしていたと聞きます。この日は労いの意味のご馳走が、地方によっていろいろ伝えられています。タコ、サバ、うどんなどの小麦料理などなど....。半夏生にそういう食べ物を味わってみると、とかくメリハリを失いがちの日常生活が豊かになることでしょう。

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