X100VI、50日目の徹底レビュー。これは買うべきか?
いまだに品薄になっているFUJIFILM X100VI、5月中旬に奇跡的に手に入って50日ほどが経ちました。オーナーとしていろんな場所に持ち出してそれなりに使い込んだので、現時点の感想をお届けしたいと思います。
この記事では、改めてX100VIとは何か?と振り返りながら、8つの質問に答える感じで徹底レビューし、そのあと25枚の作成をご紹介します。
思いの丈を綴るとめちゃ長くなっちゃいましたが、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
これは何?〈X100VIとは〉
この記事を読んでくださっている方には蛇足な気がしつつも、「X100VIとはどんなカメラなのか?」という点について簡単に振り返ってみます。
X100VIとは、FUJIFILMのコンパクトデジカメ「X100」シリーズの最新型です。X100 → X100S → X100T → X100F → X100Vと来て、命名規則が若干変わってX100VIとなりました。
同シリーズということもあり、X100VIではコンセプトを継承していて、APS-Cセンサーに23mm(換算35mm)の単焦点レンズを組み合わせたカメラとなっています。コンデジなのでレンズは交換できません。
前モデルX100Vからのアップデートは、センサー(4020万画素 X-Trans CMOS 5 HR)や画像処理エンジン(X-Processor 5)の最新化をはじめとして、5軸・最大6.0段のボディ内手ぶれ補正を搭載したところが大きいです。それを521gのコンパクトボディに収めたと。
Xマウントには存在しない23mm F2のパンケーキレンズを搭載していることもあり、上記のアップデートも含めていろんな面から唯一無二なカメラに仕上がっています。
そして、このクラシカルなデザイン。これは好き嫌い分かれると思うけれども、僕はとても好きです。使っていてテンションの上がるカメラを使うと不思議と撮れる写真も変わってくるので、侮れない要素です。
50日後の徹底レビュー
そんなX100VIを50日ほど使ったので、思うところをまとめておきます。以下のような質問に答える流れでご紹介しますね。
結論、買ってよかったか?
他のカメラと比較すると?
GRと比べてどっちがいい?
価格が高いけどどうして買ったの?
単焦点のコンデジって不便?
ファインダー使ってる?
不満はある?
これは買うべきか?
それでは参りましょう。
結論、買ってよかったか?
うん、もちろん買ってよかったですよ。
X100VIの魅力は、比較的コンパクトなボディにXマウント最新のセンサーとプロセッサーが搭載され、ボディ内手ぶれ補正も内蔵していて、FUJIFILMの色味で撮ることができるところです。そのうえ、実際に使ってみるとクリアで解像度の高い写真を撮影することができるのも魅力でした。
価格や在庫状況などの怪しい要素はあるけれども、それらを排して純粋に製品そのものを評価すると、「スペックも十分で撮影も楽しく、所有欲も満たしてくれる素敵なカメラ」なんですよ。実際に使ってみても期待を裏切らなかったから、買ってよかったと思っています。
では、どういう点で買ってよかったと思っているのか。いくつかのポイントに分けてご紹介します。
写真を撮るのが楽しい
上でも書きましたが、X100VIはクラシカルで美しい見た目をしていて、そんなカメラを使っているのがとても楽しいのです。
楽しいというのは非常に重要で、写真を撮るという行為はそのときの気分に大きく左右されるので、自分自身のご機嫌を取るといい写真がたくさん量産されるんですよ。楽しくないカメラだったら写真を撮ろうという気にもならないし、「電源を入れて被写体にカメラを向けよう」という気分にさせてくれるカメラは貴重な存在なのです。
僕にとってはそれがFUJIFILMのカメラであり、X100VIもまた然り。
コンパクトで機動性が抜群
レンズも含めてボディがコンパクトなので、小さなバッグにも簡単に入ります。よく言われることですが、そもそもカメラを持ち出さないと写真も撮れないから、まずは持っていくことが大事です。そういう意味でもいい写真を量産しやすいカメラです。
そして、コンパクトボディゆえにストラップを付けて首から掛けても全然邪魔になりません。重量級のカメラだったり、レンズが出っ張っていたりすると、カメラを身につけて活動するのが億劫になってしまいますが、このコンパクトなカメラではそれがありません。
撮れる画が素晴らしい
作例については後述していますが、撮れる画も素晴らしい。さすが最新世代のセンサーとプロセッサーを搭載しているだけあります。また、ボディ内手ぶれ補正やNDフィルターの存在も一役買っていると思います。
クラシカルなデザインゆえに撮るのが楽しくて、コンパクトボディゆえに持ち運びも苦にならない。そのうえ撮れる画も素晴らしいとなると、もう他のどんなカメラも敵わないんじゃない?
他のカメラと比較すると?
僕はFUJIFILMのカメラとしてX-T4を使っているからそこからの差分を考えちゃうんだけど、AFの速さ・賢さ、描写のクリアさ、解像度の高さはX100VIに軍配が上がります。
高解像度化は賛否両論あると思うけれども、実際に使ってみた上で賛成。ファイルサイズは大きくなるけれど、クロップ耐性があるのは便利です。高解像度は正義。
とはいえ、他のメーカーにも目を向けてみると、特にAFに関しては2018年発売のα7 IIIにやっと追いついたかなという感じ。動物を含めた被写体検出AFに対応したのはX100VIが属する第5世代からで、犬を撮ることが多い僕にとっては結構大事なポイントだったり。
だからFUJIFILM第5世代のAFが周回遅れなのは否定できないけれど、逆に言うとα7 IIIくらいの性能はあるので、実用上問題になる場面は少ないです。犬の瞳にもしっかり合焦して、X-T4と比べると雲泥の差ですよ。
GRと比べてどっちがいい?
難しい問題だ。どっちもAPS-Cサイズのセンサーを積んでるから比較されがちな、X100VIとGR。でも本体サイズが違いすぎるから比較対象じゃない気もする。
X100VIとGR IIIxどっちも持っている僕としては、好きなのはX100VIかな。
GR IIIxよりもX100VIの方が写真を撮ってる感があるというか、自ずと被写体に向き合って腰を据えて撮るように心がけてしまう。たぶんファインダーの有無とかサイズの差とか持ったときの感触から生まれる感覚の違いだと思います。
そして、この話題について書き出したらそれだけで記事1本になりそうなので、また別の機会に。両機の立ち位置の違いとか使い分けとか、しっかり言語化したいので。
価格が高いけどどうして買ったの?
そこだよね。前世代から大きく値上げされて、X100VIは正規ルートで税込28万円くらいにもなります。
確かに発表されたときは高すぎると思いましたが、スペックを見て「これはコンパクトなX-T5だ」と気づいてからは妙に腑に落ちたんですよ。X-T5はボディだけで28万くらいするわけで(それが高いんだという話はあるけど)、同じようなスペックでレンズも付いてると思うと決して変な値段じゃない。
もちろん転売価格で買うのは論外だけど、正規ルートで買う分には適正価格かなと。むしろそう思えないと買わないですよ。
僕の場合は、マップカメラのLINEに登録しておいて、再販の通知が来たときにすぐさまカートに入れて注文画面まで進み、無事注文できたという感じです。そのため(SDカードの抱き合わせで若干高かったけど)正規ルートで買うことができました。
単焦点のコンデジって不便?
GRにも通じる話ですが、もう割り切って使うしかないですよね。
それでも先日の旅行のときは不安だったので、X-T4(+ズームレンズ)も持って行きました。X100VIにはデジタルテレコンもあるけど、なぜか僕は使うっていう発想にあまりならなくて、ほとんど23mm(換算35mm)で撮ってます。
これが不便かと問われると、割り切ってしまえば全然大丈夫です。だってミラーレスに単焦点レンズを付けて出かけるのと同じ状況ですから。
換算35mmという画角は好きなので、35mm縛りでいい写真を撮ればいいだけだし、必要に応じてデジタルテレコンを使えばいいし、Lightroomで編集するときにクロップしてもいい。高解像度化バンザイ。
固定レンズのメリットもあって、最新のスペックがこのサイズに収まっている点と、本体にNDフィルターを内蔵している点はいいところですね。NDフィルターは4段分(ND16)の1枚だけですが、ボディ内手ぶれ補正と組み合わせて、手持ちでシャッタースピードを延ばすのも簡単です。
ファインダー使ってる?
もちろん使ってます。集中して写真を撮りたいときはファインダーは必須だね。
X100VIには「アドバンスト・ハイブリッドビューファインダー」なるものが搭載されていて、EVF(電子ビューファインダー)とOVF(光学ファインダー)を切り替えて使うことができます。
しかし、正直に言ってOVFはまだ使いこなせていません。
OVFなんて小学生のときの写ルンです以来だし、すっかりEVFに慣れきってしまっているから、慣れるのにもう少し時間がかかるかも。ただ、なんとなくOVFに魅力がありそうなことは体感として分かったような気がするので、あとは場数を踏んで慣れるだけかなと。
不満はある?
シャッター音ですね。
一応メカシャッターだけど、シャッター切ったときの気持ちよさはなくて、「パシッ…」と弱々しい音が聞こえる程度。これは撮影体験を損なっていると思う。
他には特になくて、総じて完成度の高いカメラだと思います。
これは買うべきか?
難しいけど、X100VIのコンセプトに賛同し価格に納得できるのなら、めちゃめちゃおすすめです。
気になってるなら買う価値あるし、もし買った後で自分に合わなくても買取相場が高いから問題なし。正規ルートで買える機会があるなら買う決断をしていいと思います。
もちろんX100VIじゃないといけない理由が見つからない人は買わない方がいいですよ。安くていいカメラは他にもあります。
作例をいくつか
ここまでいろいろ書いてきたけれど、「じゃあ実際どんな写真撮れるのよ?」が一番気になる部分だと思うので、作例を準備しておきました。
作例と言うには拙い写真ばかりで恐れ入りますが、5つのシーンで合計25枚を用意したので、ぜひ参考にしてみてください。
全てRAWで撮影してLightroom Classicで現像しています。現像時にLightroom上でフィルムシミュレーションを当てていて、ここに掲載したのは [Reala Ace] [Classic Chrome] [Nostalgic Neg.] [Provia] のいずれかです。それぞれキャプションに入れています。
また、一部クロップした写真もありますが、ほとんど23mm(換算35mm)そのままです。
▶ FUJIFILMのフィルムシミュレーションをLightroomで使う方法(ブログに飛びます)
シーン1:快晴の東京蚤の市
屋外を歩いてお店を覗いたり食べ歩いたりする東京蚤の市では、コンパクトなX100VIがまさにぴったりです。
このときはストラップでたすき掛けしていて、撮りたい瞬間に遭遇したときにさっと構えて撮影することができました。素敵なカメラじゃないですか。
シーン2:雨の軽井沢プリンスショッピングプラザ
6月は軽井沢に行く機会が2回もあり、どちらもX100VIを持っていきました。手持ちのバッグに忍ばせておいて、撮りたくなったときにさっと取り出してシャッターを切る。
6月らしく2回とも雨が降っているシチュエーションだったのですが、現地のどんよりとした雰囲気を生々しく表現することができました。いいカメラだな。
シーン3:夕暮れ時のお散歩
コンパクトなカメラだから、お散歩のときにだって持ち出すことができます。特に夕暮れ時は光が傾きあらゆるものがドラマチックに照らされる時間帯なので、いい写真がたくさん撮れます。
そんな期待にもX100VIはしっかりと応えてくれて、心が動く瞬間を素晴らしい画質で切り取ることができました。本当に撮ってて楽しいカメラです。
シーン4:室内で
もちろん室内でもきれいに撮れますよ。特に飲食店で大きなカメラを出して写真を撮るのは気が引けるから、コンパクトできれいに撮れるカメラは貴重な存在です。
また、家の中ではいつも僕のデスクの上に置いているので、さっと手に取って撮ることができる。コンパクトであることのアドバンテージはこんなところにもありました。
シーン5:新緑の軽井沢
新緑が美しい軽井沢も、より印象的な色で切り取ることができます。新しく搭載されたフィルムシミュレーション「Reala Ace」は重苦しくならず、軽やかで印象的な色を作ってくれます。とても好きな色味です。
もちろん落ち着いた重厚感が欲しいときはClassic Chromeで。FUJIFILMのカメラは、そのシーンに応じたいろんな表現を楽しめるのです。X100VIも例外ではありません。
最後に
さて、X100VIを50日ほど使った感想と作例をお届けしてきました。
改めて振り返ってみると、僕はやっぱりこのX100VIというカメラが想定しているユーザーにぴったりとはまっているのだと思います。だから撮るのが楽しくて、出てくる画にも満足できるし、使い続けたくなる。
とはいえ、もちろん合わない人もいると思います。
僕はX100VIのコンセプトと同じ方向を向いているから楽しいのです。けれども、異なる趣味趣向の方にはもちろん合わないし、価格に見合わないと思う人もいるだろうし、コスパを求めるとどうしてもX100VIを選ぶという結論には至らないのも事実。
それくらいユーザーを選ぶカメラであって、万人におすすめできるカメラではないと思うので、ここで「めっちゃいいからおすすめ!」と声高らかに言うつもりはありません。
しかしながら、
換算35mm単焦点、レンズを交換できないコンデジで
FUJIFILMの色味で写真を撮ることができることに魅力を覚えて
最新世代+ボディ内手ぶれ補正といったスペック面に価値があると思えて
それに28万円を出すことに納得できる人
であれば全力でおすすめできます。
もしそういう方がいて、正規ルートで買えるタイミングがあれば、迷わず購入することをおすすめします。もし自分に合わなければ売却して手出しをほぼゼロにできるにもかかわらず、このカメラを使ってみるという経験には十分な価値があると思うからです。
それくらい使っていて楽しいカメラなんですよ。ぜひオーナーとして使い倒していただきたい。