書籍『オーデュボンの鳥』「アメリカの鳥類」セレクション ジョン・ジェームズ・オーデュポン
ジョン・ジェームズ・オーデュポン著
発行年月日 2020年 4月 13日
定価 2,200円
判型 A5判並製
頁数 212ページ
目次(「BOOK」データベースより)
はじめに p2
「消える種」(27点) p5
「養」(15点) p37
「狩」(13点) p55
「野」(8点) p73
「空」(16点) p83
「水」(30点) p101
「森」(41点) p139
各鳥解説 p182
人と作品 p208
著者情報
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内容
レビュー
欲を言えばもっと大振りな判にて全435点を記載したものを出版して欲しかったが(学術的な観点からも)、日本にてオーデュポンの作品が出版されたことは、とても嬉しい出来事であった。
本書巻末の実物写真&簡易解説「各鳥解説」は、鳥の写真は小さいものの、オーデュポンの画と比較しながら学び、楽しめるため、素敵な仕様である。
オーデュポンは生粋の「貴族」であり(ここでいう「貴族」とはただの金持ちのことではない)、芸術家であった。
古来より現在に至るまで、お金を真面目に稼ごうとしない者達は、世間から冷たい視線を浴びせられ蔑すまれることが多かったようであるが、博物学や芸術等の分野にて多大な功績を残した人物達の中には、お金を稼ぐための仕事に全くと言って良いほど興味を示さず、必要に迫られた場合に限り「仕方なく」生活費を稼ぐために仕事をしたような人が、かなりの確率で存在するが、どうやらオーデュポンもその手のタイプだったようである。
天才や大秀才達の多くは感受性と知覚能力を頭抜けて発達させたがために、「美しいもの」「未知なるもの」そして「全体の構成と細部とその流れ」に果てしない興味と執着を示すに至り、まるで何かに憑かれたように邁進し、その探求に生涯を費やす。
彼らは「何かを(特に自然と美とを)探求するのであれば、一度きりの、そう長くはない人生において、金策の類にかまけている時間などあろうはずも無い」ということを、比較的早い段階にて理解するため、必然的に常人とは異なる行動を選択することが可能となり、それにより濃密な人生を送ることとなる。
というわけで、卓越した技術のみならず、鳥たちへの愛と深い眼差しを合わせ持つオーデュポンの鳥類画は、当然のように、どれもとびきりに美しい。
それは金のため(パトロンのため)に描いたものではなく、権力者のために描いたものでもなく、本人が描きたいと感じたものを、描きたいままに、心を込めて描いた「世にも稀なる芸術」であるからに違いない。
であるからこそ、オーデュポンの画には「永遠の命の輝きが宿り続ける」のである。
最後に
逸話によるとオーデュポンは「『アメリカの鳥類』執筆中、仕事で家を数か月留守にしている間に、既に完成していた200枚ほどのスケッチをネズミに食いちぎられ、研究を諦めかけたことがある」そうで、彼自身の告白によると「しばらく茫然自失の状態に陥り、ベッドに伏せたままであったが、次第に力が湧きあがり、再び猛烈な勢いでスケッチを始めた」とのこと。
めげない奴であるところが可愛いし(鳥と、鳥を描くのが本当に大好きだったらしい)、そのネズミにやられた200枚のスケッチが練習となったからこそ、現在残る傑作が生まれたのかもしれないと思うと、なんだかクスッとしてしまう。
あと、この ↓ 流れに滅茶苦茶笑うし、
その後のこの ↓ 一行
に、涙を禁じ得なかったことを明記しておく。
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