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Kendrick Lamarの Super Bowl Halftime Showがカッコ良過ぎた件について

 まずカッコ良過ぎた、ハーフタイムショーへのリンクをペタリンコ ⇩
 YouTubeのNFL公式チャンネルにて視聴可能となっております(無料)

次にスマートな解説をペタリンコ ⇩


 以下、私の妄想を他の方の素晴らしい記事をペタリンコしつつ展開します。

 長く語り継がれるであろう、そして世界のアーティスト達に多大な影響を与えるであろう、Kendrick Lamarケンドリック・ラマ―(以下:ケンドリック・ラマー)の圧倒的なパフォーマンスでした。
 最初に記しておくと、私はHip-hopに詳しくもなく特によく聴くわけでもなく、その歴史もアーティストについてもほぼ知りません(BEEFビーフも一度も追ったことは無いです)。

 で、「BEEF」って何?って話なのですけれども、基本的にはこういうもの ⇩ です。

 今回のケンドリック・ラマ―のパフォーマンスはDrakeドレイクとのBEEFに完全決着をつけたとも言われておりますけれども(経緯については沢山記事がありますゆえ興味のある方は検索してみてください)、グラミー賞にて5冠を達成した直後のスーパーボール・ハーフ・タイム・ショーでのあのパフォーマンスですから、そこに異論の余地は無いと思います。
 でも「スーパーボウルのハーフタイムでそんな私的な喧嘩の決着とか言われてもさ……」という声も複数見聞きしました。しかしケンドリック・ラマーの表現は、そのようなスケールの小さいものではありませんでした。
 BEEFに決着をつけつつ、アメリカの歴史と現状の政治問題を絡め、更には音楽的にも映像的にも超一流のパフォーマンスを展開し、オマケに個人史や行われた地域、スーパーボールの試合やその観客に対するリスペクト等までをも含めた表現をやってのけたわけです(しかもTV中継用に過激な表現を自己検閲し穏やかなものに修正した上で!)
 カッコ良過ぎる……

 曲をダンスパフォーマンスやSamuel L. Jacksonサミュエル・リロイ・ジャクソン演じるアンクル・サムの発言と演技までを繋げてどう物語ったのかというのが面白いところなのですけれども、残念ながらそれを私が説明するのは知識不足により不可能です(1つの表現が2つ以上の事柄のメタファーとなっている場合も多々あるため、まず複雑過ぎてド素人の私には理解出来ません)。
 ゆえに今、世界中で行われているであろう今回のliveパフォーマンスの解析を楽しみに待つことといたします。

曲目リスト
1."GNX" teaser (snippet)
2."Squabble Up"
3."Humble"
4."DNA"
5."Euphoria"
6."Man at the Garden"
7."Peekaboo"
8."Luther" feat. SZA
9."All the Stars" feat. SZA
10."Not Like Us"
11."TV Off"


「アンクル・サム」について


黒い車や楽曲等について

 黒い車からパフォーマンスは始まりますけれども、一体何なんだと思いますよね?
 こちらの記事が素晴らしいのでおすすめです⇩ 


ケンドリック・ラマーの1曲が内包する奥深い表現について
 
こちら ⇩ の素敵な記事がおすすめです


政治的な表現について(個人的に感じたことのほんの一部)

「星条旗」を用いた表現

 色による表現としましては、

:valor and bravery 勇猛と勇気
: purity and innocence 純粋さと純真
:vigilance, perseverance, and justice 屈しない、忍耐、正義

 ということで、それを衣装では「男女」に青と赤として配しつつ、白は「LGBTQ+」に当てているように感じました。
 またケンドリック・ラマー自身は男性なので青が基調でしたけれども、「黒」も用いていましたよね。キャップや手袋(←手袋は特に重要なのではないかと思います)、そしてシャツ。

1968年メキシコオリンピック、男子200メートルの表彰台。拳を突き上げるトミー・スミス(中央)と、ジョン・カーロス(右)

 これはもちろんビュイックGNXとのシナジーや「黒人」アーティストとしてのアイデンティティー的な表現を含んでいると考えられるわけですけれども、同時にこういった⇩ 表現や、

Drakeドレイクをディスって葬る「神(死神)」としての存在も想起させて見事でした(「Peekaboo」の場面良かったなぁ。あれって仲間の仇討ち的な意味も含んでるのかなぁ)。
 ※戦火の後に立ち昇る「黒い煙」等も脳裏に浮かびました

 また「青」は「民主党」、「赤」は「共和党」、「白」は「無党派」のメタファーとして見ることも可能ですし、パフォーマー達で星条旗を形作り、それを真ん中で分断しその中心に彼が立って、どのような歌詞を歌っていたのかという……。あとスーパーボウルはハーフラインを境に2つのチームがコートの自陣と敵陣とに分かれて戦いますよね。人気のスポーツにはそのような構図が多いと思うのですけれども、アメリカの大統領選挙はどうでしょう。同じ構図で争いますよね。そしてスポーツと同じく勝った、負けたで喜ぶという。そういった部分への揶揄も含んでいるように感じました。
 ケンドリック・ラマーは過去のアルバムを聴けばわかるように、政治や歴史、黒人音楽史にとても詳しいので、あながち的外れではないように思うのですけれどもいかがでしょう。

パフォーマーを黒人に限定した理由
 
これに関しては完全に人種差別主義者等を「釣り」にきている気がします。絶対に「黒人だけだなんてオカシイ」的な声が上がるのを見越しての表現。そしてそういった指摘がネットに上がると、必然的にその言葉はブーメランとなって「白人至上主義者」や「白人(が経済を牛耳っている)アメリカ社会(のオカシナ現状)」を自動攻撃する武器となるわけです(人を殺傷することのない「知性(言葉)」という武器です)。
 というか今回のスーパーボウルにはトランプ大統領や、彼との選挙で敗れたハリスも観戦に訪れていたわけで、トランプ大統領の発言やメインの支持層について考えてみれば、ケンドリック・ラマーの表現が如何に有効、且つ「星条旗」を背景に用いた価値あるパフォーマンスであったのかということがわかります。
 Samuel L. Jacksonサミュエル・リロイ・ジャクソンのアンクル・サムも、ハリスやオバマタイプの黒人を揶揄して見事でした。ちなみにSamuel L. Jacksonサミュエル・リロイ・ジャクソンが参加した映画『私はあなたのニグロではない』や『ジャンゴ 繋がれざる者』等を鑑賞していると、ケンドリック・ラマーが彼を起用した意図がより明確に浮かび上がると共に、その表現の深みを知ることが出来ます

 ⇩ 有色人種のほぼいないトランプ大統領就任演説
 ※個人的にケンドリック・ラマーの表現は、こういった現実への鋭い指摘であるように感じます


アメリカの「宣誓」 

“I pledge allegiance to the Flag of the United States of America, and to the Republic for which it stands, one Nation under God, indivisible, with liberty and justice for all.
(私はアメリカ合衆国の国旗に対し、国旗が象徴するすべての人に自由と正義が約束されたこの神の元の国に、忠誠を誓います。)


ショーのラスト

 パフォーマンスの舞台は、プレイステーション(SONYの家庭用ゲーム機)のコントローラーのボタンよろしく「▢△〇✕」が配されていて、ラストにはスタジアムに薄っすらゲーム・オーバーの文字が浮かび上がり、この演出が意味するものはDrakeドレイクへの「このBEEFビーフは俺の完勝でお前はゲーム・オーバーだぜ!」という意味合いと、ハーフ・タイム・ショーの終わりを告げる意味合いと、他にもまだあるような気がしますし、なによりも「俺はTVゲームを遊ぶような軽いお遊び感覚でDrakeドレイクとのBEEFビーフを楽しんだよ」というような圧倒的な余裕感が漂っているんですよね(もちろんハーフ・タイム・ショーに関しても「このくらいの表現は遊び感覚で出来ちゃうぜ!」という雰囲気を醸しております)。
 最後の曲は『TV Off』。


 あとカメラには映らなかったものの「GNXの車体にパレスチナの旗と、内戦が続くスーダンの旗が登ったのも話題になった。結局、参加したダンサー個人のゲリラ行動だったと判明した」とのことですけれども、そういうことにして、アメリカ政府や無関心な国民に対してそういった行為をねじ込んだ可能性もありますよね

一番カッコ良かった画
 ショーの6分25秒~34秒の画
最高過ぎます…… 
 Liveですよ……これ……


最後に
 今回のケンドリック・ラマーのパフォーマンスは本国でも賛否両論なのだそうですけれども、それはある意味、彼の行ったパフォーマンスに威力があったという証拠ですし、何よりもアメリカの人々に良くも悪くも「考えさせた」「問題に目を向けさせた」と言う事なわけですから、流石だなぁと思います。それは要するに「アメリカ最大の祭りにも関わらず空気を読まずに、政治的問題と自分と仲間(亡くなった仲間含む)の主張を(オブラートとリスペクトに包んで)全米にブチかました」ということなのですけれども、これはもう間違いなくメインであったはずのアメフトの試合よりも人々の記憶に残ることでしょう。
 ※しかも放送後に多くの人々を「考察」や「解析」に駆り立て、追加で楽しませているのがまた凄い

 話は飛びますけれども、こういった書籍 ⇩ を読んでいると、Hip-hop文化や黒人音楽の歴史への理解がより深まるかもしれません。
 ※Hip-hop文化に関しては沢山の良書があります

ニグロ、ダンス、抵抗: 17~19世紀カリブ海地域奴隷制史
ガブリエル アンチオープ (著) 石塚 道子 (翻訳)

 
 北米大陸で年単位の生活をした経験の無い方にはいまいちピンとこないかもしれませんけれども、かの地の人種差別や(人種間の)経済格差って本当に物凄く根深いものがあるんですよ。
 というわけで個人的には上記情報やこういった情報等も踏まえて、今後もケンドリック・ラマーのLiveパフォーマンス動画を楽しんでゆきたいと思っております。

 

余談
 notoにて、自分とは見解の大きく異なる記事を楽しく拝見させていただきました。
 そして確かに純粋にSuper Bowlの試合と楽しい祭りの雰囲気を楽しみたかった方にとっては、「勘弁してほしい」時間だったに違いない……と感じました。

 多くの人を満足させるエンターテイメントを構築するのって、本当に難しいですよね。


追記(2025/02/19)
だいぶ解析が進んだようです ⇩


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