見出し画像

書籍『依存症ビジネス 「廃人」製造社会の真実』

 デイミアン・トンプソン (著)  中里 京子 (翻訳)
出版社  ダイヤモンド社‏
発売日 2014/10/10
単行本 352ページ‎



目次

第1章 社会は私たちを「廃人」にしたがっている―iPhoneいじりと甘すぎるスイーツに見る病みつきビジネス
・カップケーキ、iPhone、鎮痛剤ー21世紀を蝕む「3種の欲望」
・依存症の私と、健全な彼らのあいだに差はあるのか?
・脳の「ストップ&ゴー」システムを狂わせるテクノロジー
・見直される依存症、拡大する依存症
・砂糖まみれのカップケーキと過食症
・iPhone依存症ー「病みつき」になるデザインとその被害者たち
・なぜ新製品がでるたびにアップルストアに並ぶのか?
・2億人がハマるよう仕組まれたゲーム「アングリーバード」
・セレブの娯楽となった鎮痛剤「バイコディン」
・ハイになるために医者に通うー「乱用者」たちのあきれた実態
・「感情のコントロール」というニーズと、それを過剰に満たす社会

第2章 依存症は本当に“病気”なのか?―環境次第でだれもが「依存者」になりうる社会
・依存者の集会で感じた2つの疑問
・アルコール依存を救うAAが編み出した「依存症=病」という公式
・2人の友人、その運命を分けたもの
・依存症は本当に「疾患」なのか?
・自力で立ちなおったら依存症ではない?ー医者たちの傲慢ごうまんな言い分
・ベトナム戦争の怪ーなぜ兵士のヘロイン依存は突如として治ったのか?
・病ではなく習慣ー依存に至る4つの「入手しやすさ」とは?

第3章 なぜ自分を破滅に導く習慣をやめられないのか?―病みつきビジネスが利用している脳の仕組み
・突然ギャンブルとポルノにハマった70歳
・快楽物質ドーパミンは「欲望物質」だった?
・パーキンソン病が内向的な人ばかりを襲うワケ
・ヘロイン、MDMA、アルコールー薬物に対する脳の反応カタログ
・私たちを欲望のとりこにする合図はあらゆるところに
・ただし、脳を見てもだれが依存症かはわからない
・自分のためにならないとわかっていて、なぜわざわざやってしまうのか?
・レジ横のクッキーから始まる依存症ビジネス

第4章 お買い物とヘロインとお酒の共通点とは?―自由市場と依存の関係は18世紀ロンドンで始まった
・ショッピングモールは人を「ゾンビ」にする?
・「カードを決済端末に入れたくてたまらない」ー買い物依存症の実態
・SNSもドラッグであるーテクノロジーと依存症の共犯関係
・世界一人気のある向精神薬「アルコール」の歴史
・18世紀ロンドンの「ジン狂い」に見る「入手しやすさ」という隠れた要因
・ティッピングポイントを超えた先ーだれが依存症になるかは予測できない
・清朝200万人がアヘンにハマった本当の理由
・カジノとストリップクラブー依存を巧みに利用する自由市場の力学
・ヘロインが恐ろしいのは成分や習慣性が理由じゃない
・依存症はすぐに「浮気」する
・ある「CD収集狂」の告白

第5章 スイーツはもはやコカインだ!―スタバの「フラペチーノ」に仕込まれた巧妙な戦略
・オフィスを侵す「ごほうびスイーツ」
・「スーパーサイズ・ミー」が糾弾きゅうだんすべきは「バーガー」ではなかった?
・砂糖は脳を支配するーケーキとコカインの類似性
・「コーヒーと一緒なら許される」
・外食の楽しみが「食べる」から「撮る」に変わったのはいつからか?
・スーパーの陳列棚は依存につけこむアイデアで溢れている
・食品業界が悪用する4つの状況「HALT」
・フラペチーノー欲望のスイッチを押す巧妙な製品
・肥満になったナバホ族ー食の「欧米化」は遺伝子をも変える
・「食べ物によって自分をねぎらう」という新しい習慣

第6章 どこに行っても安く、大量に酒が手に入る世界で―社会をアルコール漬けにするメーカーと販売網
・ユーチューブに溢れかえる「酔っ払い動画」
・アルコールにおける男女格差は縮まっている!
・私はこうして人生の支配権を失った①ー人付き合いの不安から酒に手を
・私はこうして人生の支配権を失った②ー酒が友人となり、AAの扉を叩く
・酒造メーカーと販売店が狙う夜の世界経済圏
・入手できるならMDMAでも精神安定剤でもー若者の「酒×ドラッグ」文化

第7章 処方箋薬がこれほどいい加減とは!―合法的なおクスリでもじゅうぶントベる
・ADHDの薬「アデロール」のもう1つの顔
・18世紀のライプツィヒにタイム「トリップ」
・9歳の子どもから元ジャンキーまでー600万人がやってる処方箋の不正利用
・私のアルコール依存、その最終段階ー精神安定剤にハマって儀式を執りおこなう
・「眠らずにすむクスリ」を乱用して勉強する大学生
・「向知性薬」頼みの生活の副作用やいかに?

第8章 ゲームという新時代のギャンブル―合言葉は「ユーザーを永遠のキャッシュマシンに!」
・「ネトゲ廃人」デニスと9つの人格
・「インターネット依存症」は存在するのか?
・「ゲーム化」するテクノロジーが僕らをハメる
・オンラインゲームの第一命題は「脳のハイジャック」
・アプリ内課金という悪魔ーデザインの力で気づかずに金を使わせる
・人は偶然ゲームに病みつきになりはしないーすべては開発者の戦略
・「アングリーバード依存」は治療できるか?
・「友達リクエスト」と「ブロック」でゲーム化される人間関係
・ゲームへの依存が引き起こす2つの弊害とは
・「絆」がドラッグになるとき

第9章 「無料ポルノ革命」の衝撃―最新テクノロジーを最大限に活かす無秩序な業界とその餌食たち
・ユーチューブとその兄弟が引き起こしたポルノの大洪水
・インターネット・テクノロジーは子どもも老人も区別しない
・とんでもない量のポルノが世界を駆け巡る
・もはやヘンタイと後ろ指さされることなく「ハードコア」を見られる時代に
・テクノロジーの進化とポルノの巧妙化・ハード化
・無秩序な市場で行われるユーザーの目と財布の奪いあい
・「エロトトキシン」説 vs ポルノ学習説。勝者は
・ポルノとドラッグの類似点
・「コカイン×ポルノ」の二重依存者ポールの破滅
・児童ポルノで逮捕された司祭①ー脅迫的なコレクター
・ポルノサイトはスロットマシンと同じ設計!?
・児童ポルノで逮捕された司祭②ー孤独感からうっかりダウンロード
・ヘンタイ性ですら「自分らしさ」に
・リアルな女性に興奮できない若者たち
・「供給主導型」の依存ビジネスがもたらす悪循環

第10章 われらを誘惑から救いたまえ―依存の「解毒」ですら商売になる時代で
・元売人で、依存症専門の心理学者ジャフィ
・ドラッグの合法化で問題は解決できるのか?
・依存を理解するための3つのカテゴリー
・いかに病みつきにさせられるか?ー競い合う企業と無防備な消費者
・危険ドラッグは氷山の一角ーグローバル化がもたらした貧困より重い「病」
・マフィアと若者の思想が一致して、マーケットが生まれる
・依存の治療でさえビジネスにー膨れ上がるリハビリ産業
・はびこる無力感と21世紀の「免罪符」
・キリスト教もペルーのカルトもー「依存から救う」をネタに勢力を伸ばす宗教家たち
・われらを食い物にするビジネスとテクノロジーに対抗するすべはあるか?
・「廃人」リスクが高まる社会で、己の欲望と向き合うために

謝辞
注記

本書より



内容紹介

もはや病気ではない。最強最悪のビジネスモデルである。iPhone、フラペチーノ、危険ドラッグ、お酒、フェイスブック、アングリーバード、オンラインポルノ…私たちは、なぜこうも簡単に「病みつき」になるのか?元アルコール依存症のライターが、人間の意志の弱さにつけ込むテクノロジーとビジネスの共犯関係に迫る!

うまくいかない仕事、ギクシャクする人間関係、進化しすぎて使いこなせない大量の新製品……。
21世紀になったからといって、輝かしい未来は訪れなかった。
私たちの毎日は、相変わらずストレスにまみれているし、社会は不確かさを増しつづけている。

そんな不安と戦い、何とか自らの感情をコントロールしようともがく私たちの耳元で、ささやく声がある。
「こっちに来て、これを使ってごらん。すぐに気分がよくなるよ」

それは、いまお手持ちのiPhoneに届いた、
フェイスブックやゲームアプリ「アングリーバード」からの新着通知かもしれない。

または、魅力的な写真で誘惑する、
スタバの「フラペチーノ」や次々ブームが生まれるスイーツの看板かもしれない。

さらには、いつでもどこでも安く手に入るお酒のテレビCMや、
安全なハーブだよ、と「危険ドラッグ」に誘うネットの書き込みかもしれない。

そう、いつの間にか、私たちの毎日は「すぐに気分をよくしてくれるモノ」であふれかえり、ますますそうしたモノに依存するよう促されているのだ。
そうしたモノが快感をもたらすメカニズムは、MDMAやヘロインなどのいわゆる依存物質がもたらすものと同質だと気づかずに。

企業も、もはやつくりすぎたモノを売るには、より早く、大量に消費させるしかなく、テクノロジーを駆使して「期待感」をあおり、いかに他社より強い快感をもたらせるかを競いあっている。
一方、無防備な消費者である私たちは、そうした「自滅的な誘惑」に日々さらされ、「依存症」という習慣を身につけつつあるのだ――。

自らもアルコール依存に陥っていた著者が、綿密な取材、そして実体験をもとに「テクノロジーとビジネスの共犯関係」、そして依存症を生み出す社会の真実を暴く。


レビュー

 強引にまとめると【依存行動とは本質的に自発的な行為であり、「物質依存」と「過程への依存(非物質依存)」の両方に、脳の報酬回路におけるドーパミンの障害が関与している】というのが著者の見解であり、ドーパミンは「好き(嗜好しこう)」という衝動よりも「欲しい(希求)」という衝動のほうに深く関わっている。とのこと。
 また殆どの企業が人々を依存させるべく商品開発を「合法的」に行っており、その依存性のある物の「入手しやすさ」や、「習慣」としてしまうかどうかによって、人々の運命が決まってゆく。という感じです。
 ※それを、元アル中の著者が多岐に渡りネチっこく調べてゆくため、本書は探偵小説に似たおもむきがあり、エンターテイメント性はかなり高い

 でもって所々に「ハッ」とする鋭い見解も複数用意されており

 薬物を使ったり状況を上手く操作したりして自分の気持ちを高めようとするのは、今に始まったことではない。しかし、この気分向上を可能にするペース、強烈さ、手段の多さとそのスケールは、今や前代未聞のレベルに達している。しかも、そういった手段に、薬物やアルコールや食物やセックスが関係しているとは限らない。
 つまるところ、自分の感情を操作したいと願う私たちの「ニーズ」とその「能力」が、ともに増大しているのである。私たちは、いつでも自分の感じ方を変える新たな手段を探している。当たり前のことを恐れずに言えば、その理由は、自分自身と上手く折りあえていないからだ。

 (中略)

 現代に住む私たちは、些細なことではあるが、容赦なく降りかかり、しかも累積されるプレッシャーに日々さらされている。この状況は漠然とした不安感を引き起こす。そして、こうした不安感は、一時的なフィックスによくなじむのだ。

 そうそうそう! それそれそれ!
 みたいな感じで、個人的には深く納得させられる、学びとなる一冊でした。

 ちなみに本レビューには全て「手打ち」にこだわった「目次」を記載しておりますゆえ(めちゃ項目多くて時間がかかり途中で挫けそうになったのは秘密(笑))、そちらを御覧いただけましたら、本書の面白さをバッチリ感じていただけるように思います。
 ※てか今回は「目次」手打ちの段階で、ほぼ逝きかけました(笑)

 10年も前の書籍ですけけれども、笑いながら楽しく読める一冊です。
 





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?