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2024年3月の星の行方
或る声
序
これから私が伝えることは、太古の時世から現在に至るまでに何度も何度も人類が直面してきた言葉である。それは雪に似ている。あっという間に地上へと降り注ぐ雨とは違い、雪は呑気に空気中を浮遊する。その間に空気中に漂う不純物(土にとっては栄養とも言える)を吸着しながら雪はようやく地上へと辿り着く。
地上に積もった雪は層を形成し、太陽光を乱反射させる。それは太陽の恩恵を何倍にも増幅させる効果がある。晴天の日では行き届かない光が、地上からも反射して隅々にまで行き届くのである。雪は空気中の浄化だけでなく、地上に降りてからもなお浄化の作用を及ぼす。その点もまた雨とは異なる。
雪は太陽光を拡散するように反射しつつ、時間をかけて水へと形を変えて地中へ浸透していく。地中に存在する微生物からすると、ご馳走の時間だ。しかし、ある程度の時間経過を伴わないと、栄養過多で地中での消化(浄化)が追いつかなくなってしまう。そのため、雪の溶ける速度は地中を構成する微生物によって異なる。できる限り負担をかけないような配慮があると言っていい。雪はその後、雨水と同じような経路で海へ向かう。
そのように雪が溶けて水になった瞬間に、人類はその水が雪であったことを認識することができなくなる。そうやって、人は雪を忘れていく。
だから、私の言葉は雪に似ているのだ。ある程度の時間経過とともに、姿かたちを変えるため、どうしても私の言葉は忘れられてしまう。しかし、それでも構わない。私は何度でも、同じことを人類に伝え続ける。
あたたかいサポートのおかげで、のびのびと執筆できております。 よりよい作品を通して、御礼をさせていただきますね。 心からの感謝と愛をぎゅうぎゅう詰めにこめて。